
photo:HAMADA Shin
高須咲恵(中)、松下徹(左)、西広太志(右)のアートコレクティブSIDE CORE
「災害をはじめとした非常事態に対してアートは何ができるのか?」
ストリートカルチャーを取り入れた表現で、
人と社会、地域と地域、をつなぐ
Photographs,text : Sachiko Tamashige
●SIDE CORE結成のきっかけ

能登地震の爪痕 珠洲市
2024年元旦に起きた震度7の能登半島地震。あの時、震災は、時を選ばずやってくることを痛感した。正月を迎えるたび、あの日の衝撃を思い出す。
能登の地震から2年が過ぎ、瓦礫は撤去され、交通インフラも再整備されたが、仮設住宅に住む人々は約18000人(2026年1月現在)ともいわれ、復興はまだまだ道半ばだ。
そんな中、金沢21世紀美術館で、能登半島地震に思いをはせるSIDE COREの個展「Living road, Living space / 生きている道、生きるための場所」が開かれている。
SIDE COREは、高須咲恵、松下徹、西広太志の3人と映像ディレクター播本和宜からなるアートコレクティブの名前で、「中心から離れた場所のコア」という意味を持つ。
「災害をはじめとした非常事態に対してアートは何ができるのか?」を問い、ストリートカルチャーを作品表現に取り入れ、社会システムや構造を読み解き、人々の意識を地域や社会へと繋げる作品を発表してきた。
ユニット結成のきっかけには東日本大震災があった。
東日本大震災が起きた2011年3月は、松下(先端芸術表現科)は東京藝術大学の大学院を修了した翌年、高須(美術教育研究室)の卒業の年だった。
「自分たちも衝撃を受けたけれど、人の価値観が変わり、アート、文化、日本社会の大きなパラダイムシフトが起こった。都市でどう生き、街の中で生活とアートがどうかかわり、震災とどう向き合っていくのかを問われた。アーティストとしてどうあるべきか根本から考えさせられ、インディペンデントな個人としてコミュニティーや政治や社会とつながったことをやりたいと思った」と松下さんは当時を振り返る。
東日本大震災を契機に得た「都市はあらゆる側面で他の地域に依存して成り立っている」という気づきから、グラフィティ、スケートボードといったストリートカルチャーを表現手法に取り込み、それを都市の路上に閉じた表現でなく、地域と地域をつなぎ、移動や文化の連鎖反応に基づく表現運動としてとらえ直し、日本各地で独創的なプロジェクトを展開してきた。
●都市と地域は繋がってる
震災をきっかけにしたインフラの崩壊と復興を目の当たりにしたSIDE COREは、ストリートの視点から、土木や建築のシステム、社会構造を読み解く作品を発表してきた。彼らは、日常生活や旅において、その地域に特徴的な風景のみでなく、道路工事の看板や用具なども丹念に観察する。本展では、東日本大震災から出発した彼らの過去の作品も紹介している。

SIDE CORE《rode work tokyo_spiral junction》2022
サイズ可変 4チャンネルビデオ、工事用照明器具、単管、チェーン ほか
© SIDE CORE photo: KIOKU Keizo
美術館の天井から吊り下げられたインスタレーション作品『rode work』(2017年~)。一見、クリスマスの電飾のように赤や緑に点滅するライト。「道路工事などで使われる夜間用の照明ライトを切り出して、再構成して作った作品です」と松下さん。この照明ライトは、東日本の復旧工事をきっかけに全国に普及した工業用品。点滅するライトには電波時計が内蔵されていて、電波を受信し、日本全国の工事現場のライトが同じタイミングで点滅するように設計されている。
当時、「東日本の復興と東京オリンピックの開発工事が同期していることに気づいた」SIDE COREは、日本中の工事現場がシンクロすることに着目し、災害が多い日本で、工事によって更新され続ける都市のあり方を想起させる作品を提示した。
東日本の電波時計の発信地が福島にあり、東京の工事現場を照らす光は、東北の復興現場の光とつながっている。東京と福島の関係は金沢と能登半島にもあてはまる。工事現場から路上の視点に立つと、東京と福島が地続きで見えてくる。福島や能登といった被災地の問題は、自分たちの暮らしとどこかで繋がっていると、SIDE COREの作品が物語る。