金沢21世紀美術館でSIDE COREの大規模個展開催中。「Living road, Living space / 生きている道、生きるための場所」 

2026.01.30

美術館に出現した「新たな道」と「広場」

SIDE COREの活動や作品の中核にあるキーワードは「道」と「移動」。彼らは、「道=異なる場所や価値観を媒介するもの」と再定義し、本展では、「道」や「移動」をテーマに、美術館内外で多様な価値観や生き方が交差する場を作り出した。

美術館に入ってまず目にするのは、美術館に作られた新たな「道」。通常はチケットがいる有料エリアの一部を会期中限定で無料開放し、展覧会ゾーンを東西に貫く通路でつなぎ、自由に行き来できるようにした。そこに、ゲストアーティストを招聘し、スケートボードやグラフィティ、音楽イベントといったストリートカルチャーの表現を持ち込んだ。まるで、美術館の中に道や広場、街が出現したような様相だ。

美術館の新たな「道」の壁面には、ゲストアーティストのスティーブン・ESPO・パワーズ(以下ESPO)の壁画が描かれている。ESPOはニューヨークと東京を拠点に活動しているアメリカ人アーティスト。彼は、美術館の壁面だけでなく、昨年夏、能登半島の珠洲市に滞在し、震災の被害の大きかったエリアに残った建物の壁面にグラフィティを描き、地元民と交流した。

「能登の珠洲で仕事をしたことで、謙虚な気持ちになり、まず、すべてゼロから始めることにした。アートへの向き合い方をリセットできた」とESPOは言う。

ESPOは、美術館の壁に、身近な友人の肖像画を、珠洲では、元文房具店だった建物の壁に10m以上もの大きなグラフィティ壁画を描いた。珠洲の海岸風景を背景に長靴を履いた人の足の部分から草木が伸びていく、生命力溢れる作品だ。制作中、地元の人たちが次々とESPOに声をかけ、対話が生まれていたという。


展示会場を巡っていると、「グオーッ。バタン」というスケートボード特有の音が聞こえてくる。のぞいてみると美術館中央の円形の展示室に、本格的なスケートパークが現れた。 このスペースを手がけたのは、プロスケーターの森田貴宏さん。彼は、1990年代から自身のスケート映像プロダクション「FESN」を運営もしているクリエーターだ。 SIDE COREは森田さんをゲストアーティストとして招き、彼は、スケートパークを作ってしまった。「街でスケボーするとき、通常、僕らは、社会の敵なんです。それを37年間やってきた」と森田さん。スケートボードにひらりと飛び乗り、一気に円周を巡った。「スケボーは、全身全霊を使って遊び、怪我もするけど仲間も助ける。友達と仲良くすることが世界を良くするパワーになる。ここには、いろいろな人たちがやってくると思うし、異なる価値観が共存することが大事。ここは、スケボー専用の空間ではなく、もっと社会性のある空間にしたかった。だから、ストリートをそのまま、ここにもってきたんだ」と森田さん。

「美術館のいろいろな場所を、生き生きとした、生きている場所にしていこうという試みです。金沢21世紀美術館は、もともと公園のように街に開かれている美術館ですが、本展では、ストリートアートで、より街に開かれ、生活と関わっていることを集約してお見せしています」と担当学芸員の髙木遊(タカギユウ)さんはいう。

 当館も、能登震災の折、天井が落下するなど被災し、半年間展覧会を開けなかったこともあり、災害などの非常時にどう立ち向かうか、公立美術館としてのあり方を探った。

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