ラ・セーヌ・ミュージカル ( La Seine Musicale) 2017 Photo: Shun Kambe ©︎ The Japan Art Association
9月9日、第35回高松宮殿下記念世界文化賞の受賞者が、東京、パリ、ロンドン、ローマ、ベルリン、ニューヨークの世界6都市で同時に発表。各部門で卓越した功績を認められた5名が表彰された。
建築部門では、日本を代表する建築家の坂茂(Shigeru Ban)が受賞。坂は「富裕層のためだけに作ることへ疑問を感じた」と語り、それが人道支援への取り組みに繋がったという。ルワンダ難民キャンプではシェルターを紙管で造り、阪神、淡路大震災では仮設住宅を建設。これを機に、ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)を立ち上げ、世界的な難民、災害者の救済活動を行っている。同時にフランスの「ポンピドー・センター メス」、「ラ・セーヌ・ミュージカル」、スイスの「スウォチ・オメガ本社」などの革新的な建築を相次いで設計。平時と非常時の両方で建築家としての使命を果たしていることが評価された。
能登半島地震後の石川県珠洲市の仮設住宅建設現場(2024年5月)
Temporary housing construction site in Suzu, Ishikawa Prefecture, after the Noto Peninsula Earthquake, May 2024.
©︎ The Japan Art Association / The Sankei Shimbun
ポンピドゥ・センター・メッス(Centre Pompidou-Metz )
May 2024 Photo: Shun Kambe ©︎ The Japan Art Association
Centre Pompidou-Metz © Shigeru Ban Architects Europe et Jean de Gastines Architectes, avec Philip Gumuchdjian pour la conception du projet lauréat du concours / Metz Métropole / Centre Pompidou-Metz.
ほか4名の受賞者は、以下のとおり。
美術部門: フランスを代表するコンセプチュアル・アーティスト、ソフィ・カル(Sophie Calle)。他者へのインタビューを通して詩的な要素を含む話を探求し、写真と文字を組み合わせた作品を数多く発表。
Sophie Calle:Photo: Yves Géant (右)「ソフィ カル―限局性激痛』原美術館コレクション展示の様子 Installation view at the Hara Museum of Contemporary Art, Tokyo on the occasion of “Sophie Calle – Exquisite Pain from the Hara Museum Collection” (January 5 – March 28, 2019)Collection: Foundation Arc-en-Ciel / Hara Museum Collection Photo: Keizo Kioku
音楽部門: ポルトガルのピアニスト、マリア・ジョアン・ピレシュ( Maria João Pires)。教育活動や社会活動にも熱心に取り組み、演奏活動の合間に世界各地で若手ピアニストを指導。祖国に「ベルガイシュ芸術センター」を設立し、子供たちのための合唱団やプロ・アマを問わずアーティストのためのワークショップを開催。
Maria João Pires:Photo: Shun Kambe ©︎ The Japan Art Association At the music hall in Belgais Center for Arts, eastern Portugal, May 2024(左)Workshop at Chevel Blanc in Bordeaux, France, June 2024 ©︎ Alain Benoit
演劇・映像部門: 台湾の映画監督、アン・リー( Ang Lee)。米国を中心に活動し、洋の東西を問わず、時代の奔流と向き合う人間を描く芸術性と、多くの観客を魅了する娯楽性を両立させた作品を手がける。代表作は「グリーン・ディニー」、「ブロークバック・マウンテン」、「ライフ・オフ・パイ/トラと漂流した227日」など。
Ang Lee, At his office in New York, May 2024 ©︎The Japan Art Association / The Sankei Shimbun
(左)Brokeback Mountain, 2005 Photo: Kimberly French/Focus Features Courtesy of River Road Entertainment. Courtesy of Universal Studios Licensing, LLC
彫刻部門: コロンビアの彫刻家、ドリス・サルセド(Doris Salcedo)。暴力、喪失、記憶、痛みをテーマとし、椅子などの木製家具、衣類、花びらといった身近な素材を再利用、再構築して創作。半世紀以上続いたコロンビア内戦が創作活動の原点となり、全作品が暴力や差別の被害者をモチーフとした芸術が持つ抵抗する力を表現し続けている。
Doris Salcedo ©︎The Japan Art Association / The Sankei Shimbun(右)Fragmentos, 2018 Space for Art and Memory, Bogotá, Colombia 1296 slabs made from 37 tons of cast weaponry 60cm x 60cm each slab Photo: Juan Fernando Castro Courtesy of Doris Salcedo Studio
高松宮殿下記念世界文化賞:オフィシャルサイト
Text:濱 千恵子(Chieko HAMA)