
手仕事が生む不完全な美しさ
クラシカルな雰囲気を放つ
クチュールライクな和製デニム

『装苑』2025年5月号 掲載
ヴィンテージアイテムを源に、シックで洗練されたカジュアルウエアを展開するTOM WORKS。古着好きのシマジリサトシさんと、文化服装学院服飾専攻科オートクチュール専攻を卒業した小松美優さんが手がけている。

「1800年代や1950年代など、様々な年代のデニムアイテムのパターンやディテールを織り交ぜてデザインしています。カジュアルなテイストに、ラグジュアリーなニュアンスをプラスしたいと思っていて、例えば、アンティーク調のリーフモチーフのステッチを取り入れるなど、クラシカルに仕上げ、素材選びにもこだわっています」

TOM WORKS × YAMAHA
すっきりしたシルエットを生かし、肩にアクションプリーツを施し、肩の可動域を広く仕上げたジャンプスーツ。エルボーパッチとニーパッチをつけ、さらにライダーズジャケットに用いられるDポケットを採用するなど、バイカーの要素を取り入れた。¥110,000

シルエットにこだわるからこその完全受注
TOM WORKSはシーズンごとの展開はなく、定番の型を継続的に受注で販売し、1年に1度新作を発表。手作業にこだわるブランドらしい取り組みだ。左上 1800年代から1950年代のディテールを詰め込んだリーバイス507をベースとしたデニムジャケット¥42,900、デニムパンツ¥40,700
ブランドの特徴でもある「メイド・イン・ジャパン」。生地には、岡山県井原市、児島市で生産される上質なデニムを採用している。中でも二人は、あえてダメージのある生地を選ぶことがあるという。そこにはグランジミュージックとファッションの精神論がある。
「古い織り機で作られたデニムの、ダメージや目の粗さを生かすことで、綺麗すぎない温かみや、唯一無二の質感を追求しています。それは手仕事の魅力にも通じていて、微妙なステッチの違いや、縫い目の変化が、アイテムに特別な価値を与えてくれると感じています」
セミオーダーで制作に時間をかけて、一人一人に寄り添ったシルエットに魅了されるファンは多い。
「不完全だからこそ生まれる美しさを、これからも二人で届けていきたいです」

ビジュアルモデルには、衣装提供でも交流のあるミュージシャン、カネコアヤノさんを起用。ヴィンテージの雰囲気も兼ね備えた、珍しいアイボリーセルビッジでほんのり青みやグレーみのある生地を使用したデニムジャケット¥42,900、デニムパンツ¥40,700

刺繍作家shishukoさんが刺繍を手がけた、ハピネスベトナムジャケット。マップモチーフはTOM WORKSの歴代のアトリエの場所が記されている。¥69,300

彫刻のフックや羽のようなアミナスカンを使用。ヒッピーカルチャーをイメージしたウォレットチェーン¥14,300

ヤマハ発動機とコラボレーション。ポップアップを開催
人の心を「動かす」ことを目指すアートプロジェクト「Dynamic Art Project」by YAMAHA MOTOR の第1弾として、TOM WORKSとコラボレーション。洋服とバイクという二つの領域の異なるプロダクトを再解釈し、オブジェ、アパレルアイテム、映像作品を発表した。
「デニムとバイクの経年変化の魅力に着目し、コンセプトを『AICHAKU -愛着』にしました。人と服の間に生まれる『愛着』、デニム(藍)をまとうという意味を持つ『藍着』、さらに偶然の出会いを表す『逢着』を掛け合わせています。オブジェのバイクはあえてサビついた加工に仕上げ、コラボレーションのジャンプスーツもダメージ加工を施しています。今年1月に文化学園リソースセンターで行ったエキシビションでは、コラボレーションしたデニムとバイクを一体化させたアートオブジェや、歴代のアーカイブも一緒に展示しました」
ブランドプロフィール

左 小松美優 Miyu Komatsu、右 シマジリサトシ Satoshi Shimajiri●文化服装学院卒業後、2020年にTOM WORKSを設立。ワークウエアやミリタリーウエアをベースに、ヴィンテージ、音楽的要素を加え、身につける中で汚れたり穴があいて初めて完成する服を制作する。@tomworks_official
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EUCHRONIA/ ユークロニア デザイナー



文化服装学院卒業の宮崎さんと佐藤さんによって立ち上げられたブランド。おのおのアパレル企業のデザイナーとして勤務した後、共にイギリスへ留学。2023年4月にユークロニアをスタートさせた。 Instagram:@euchronia_official