
CELINE, JUNYA WATANABE MAN, DRIES VAN NOTEN (Ph. GORUNWAY), LOUIS VUITTON
メンズウィークから見えてきたもの
6月23日から6日間にわたって開催された2027年春夏パリ・メンズファッションウィーク。約70ブランドが公式参加した今シーズンは、異例の猛暑のなかで幕を開け、ショーの開始時間の変更やスタイリングの見直しを余儀なくされるなど、一部の現場では混乱も見られた。


日中の暑さを避けるため、午前に変更となったリック・オウエンス(RICK OWENS)のショー。幾分か暑さは抑えられたものの、屋外会場には容赦ない日差しが照りつけていた。© B.P.B. Paris(左)/ ©︎ OWENSCORP(右)
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カレンダー全体を見渡すと、参加ブランド数に大きな変化はないもののショーは減少し、プレゼンテーションが初めて過半数を占めた。もっとも、かつては明確だった両者の境界は次第に曖昧になり、プレゼンテーション枠でショーをするブランドも少なくない。また、メンズウィークでありながら、ウィメンズとの合同発表は今や珍しくなく、さらにユニセックスブランドも増加。「メンズファッションウィーク」という枠組みそのものの意味を改めて考えさせられる。


ケンゾー(KENZO)のプレゼンテーション。今シーズンは、ブランドゆかりの地であるヴィクトワール広場が舞台となった。© B.P.B. Paris
曖昧になる境界
こうした境界の曖昧さは、コレクションそのものにも表れていた。特徴的だったのは、ジェンダー、ジャンル、オケージョンにおける流動性の加速だ。「こうであるべき」という固定観念を問い直し、異なるスタイルを自由にミックスすることで、衣服は個々の価値観を映し出す手段となっていた。

さらに、普遍的なアイテムや伝統的なコードを新たな視点で読み替える試みも相次いだ。テーラリングはリラックス感を帯び、生地や仕立て、手仕事によって、実用性とエレガンスを両立。オフィスウェアのカジュアル化も進み、アーカイブを現代の感性で再構築し、新たな価値を見出そうとする姿勢が多くのブランドに共通していた。


シルエットでは、オーバーサイズのブームが去り、全体的にボリュームは抑えられている。ボトムはスリムが復活し、同時に目立っていたのはショートパンツだった。夏の定番ではあるが、部屋着のようなラフなミニ丈が豊富に展開され、テーラードジャケットやトレンチコートなど、クラシックなアイテムと組み合わせることで、新鮮なコントラストを生んでいる。


広がるワードローブ
ワードローブの多様化も顕著だった。なかでも目を引いたのは、ランジェリーを思わせるルックである。デリケートなシルクやレース、デコルテを大胆に見せるカッティングやリボン装飾など、ロマンティックな素材やディテールがメンズファッションに新たな表情をもたらしていた。


DRIES VAN NOTEN (Ph. GORUNWAY), EGONLAB.
夏に欠かせないシースルーも、繊細さを際立たせる要素のひとつとなった。オーガンジーやモスリンなどのシアー素材が、Tシャツやタンクトップはもちろん、タキシードやアウトドアのアイテムにも用いられ、清涼感とともにセンシュアルな男性像を印象づけている。


ソフトな男性像はアクセサリーにも表れ、よりパーソナルなアプローチがうかがえた。極シンプルなルックが提案される一方で、彩りを添えたのは、華やかなコサージュやノスタルジックなジュエリー、アクセントカラーのベルトやスカーフなど。足元には、バレエシューズをはじめ、バリエーション豊かなフラットシューズが合わせられ、軽やかなシルエットを引き立てていた。


CELINE, GIVENCHY (Ph. Allan Hamitouche)
「ハレ」と「ケ」の境界を越えて
戦争や社会不安が続く時代だからこそ、多くのブランドはファッションを希望や連帯の象徴として位置づけ、その喜びや美しさを特別な「晴れ(ハレ)」の日だけでなく、「褻(ケ)」である日常へと解き放とうとしていた。
その意味で、コム デ ギャルソン オム プリュスは象徴的だった。「If The War Were To End..(もし戦争が終わったら..)」のテーマのもとで描かれたのは、戦争が終わった未来の祝祭である。しかし、その祝祭はフォーマルな式典ではなく、人々が自由に走り回り、色彩豊かな服を身にまとう日常として表現された。

あるデザイナーは「服とは心地よさと自信、そして自由をもたらす存在である」と語り、また別のデザイナーは「服は人を守り、安心感を与えるものである」という。これらの言葉は、服を特別な日のための装飾品としてではなく、不安な日常を生き抜くための希望や拠り所として捉えたものだ。
こうしたステートメントは、今シーズンを特徴づけた境界の曖昧化とも重なって見える。混沌とした時代だからこそ、諦めずに抗い、前を向く気持ちを後押しする。そんなファッションの力を信じたい。
Text : B.P.B. Paris