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自分の目で見たものを信じたい――吉川康雄の考える美の価値観

2021.10.01

――『UNMIX』は、今年=2021年3月に吉川さんの発表されたメークアップブランドで、“赤”をテーマにされたとお聞きし、色についてどのように向き合っていらっしゃるのか知りたくなりました

吉川 色は光。それは、光によって色は変わってくるから。でも、生きていることが人間だとしたら、そこには体温があり、温かい血が流れているのです。その血によって表現される色=赤は特別と思うのです、人に色を塗るお化粧を語る上では。生きている証を表現する時に、赤みを抑えることや強調することでいろんなムードに仕上がる。たとえ無くしたとしても、それが血を意識させる。ベージュなどの血を感じさせない色に関しても、どれだけ血の色を抜いていくかを考えながら色を生み出します。それは、化粧品作りだけでなく、メイクする時も血を0%から100%まで意識して計算しながら作ります。肌には、血色が肝要と考えているからです。

2021年4月1日に発表したファースト プロダクト。2種の赤が鮮やかに色付ける。

UNMIX モイスチャーリップスティック グロウ 01レッドローズ ¥3,960(税込)

UNMIX モイスチャーリップスティック ステイン 01 レッドローズ  ¥3,960(税込)

――血色に拘った末の赤の色だったのですね

吉川 国によって文化や宗教が異なりますし、死への向き合い方も違います。たとえば“人が死んだら”という言葉を聞くと、多くの日本人がドキっとするでしょう。人が生きているか死んでいるかは精神論や宗教論によって捉え方が異なるものの、生きているか死んでいるかで大きく違ってくるのは確かです。carcassかthingsか。その事実が生そのものの印象にもまた、いろいろなバリエーションを感じさせてくれます。それと一緒に美しさもね。

――吉川さんは艶やかさも大切にされていますね

吉川 それは、人間のリアルな肌の質感だから。人はもともと美しい生きものという考えが僕のメイクのスタート地点だから、人肌の質感は美しいという考えがベースにあり、その中で皮脂が作り出すようなイメージの艶はキーポイントなのです。もちろん艶の中でも0%の魅力もあるけれどね。しかし粉は人間の肌にはない要素で、その粉で作られた化粧品はペインティングとも呼ぶのが相応しいのかも知れません。それでも、化粧の歴史はペインティングから始まっているだろうし、顔に色を乗せる儀式であったりもしたでしょう。顔に泥を塗る文化があるように、白の色を乗せた時代は一切の艶やかさのないマットな色だったはずです。そこから始まった化粧が1000年ほどの、もしかすると何千年の年月を経てもなおベースにしていることに対して、僕自身は違和感のようなものも感じなくはないのです。人の美しさは主観的なものですが、美容の研究やテクノロジーなどはもっと生き物としての人の本質的な美しさに沿っていくようになったら良いなと思います。

――色と質感を大事に、これからもプロダクトや作品などの仕事を通して美しさを提案されたいとお考えでしょう?

吉川 色や質感の好みは主観的なものだから色々あって良いと思いますが、人の質感と存在には拘っていきたいと思っています。生きて、変化していく自然な状態は重んじたいと考えています。どんな世代の人もみんな悩みを持ちながら生きているように思います。自分にYESと言えない、肯定できない、好きになれない自身に対して悩み続けるのは、人の本能なのでしょう。でも人生は苦しむためにあるのではなく、楽しむためにあると思うから、その楽しみのためのメッセージを送り続けたい、僕は僕自身の肉眼の捉えるものを信じながら。

Yasuo Yoshikawa

メークアップアーティスト。「UNMIX」ビューティークリエイター。
1959年生れ。’83年より日本でメークアップアーティストとして活動を開始。ファッション誌や広告媒体の制作に携わった後、95年に渡米。世界各国のモード誌のカバーを含むファッション誌の撮影、広告、コレクション、セレブリティのポートレートなどを手がけるなど、その活躍は多岐に亘る。現在は、美容情報サイト「unmixlove(https://unmixlove.com/)」を立ち上げ、取材や執筆も精力的に行う。著書に「生まれつき美人に見せる」(ダイヤモンド社 刊)、「褒められて嬉しくなるキレイの引き出し方」(宝島社 刊)、「いくつになってもキレイ!になれる」(世界文化社 刊)など。
Twitter:@yasuo_yoshikawa
Instagram:@yasuoyoshikawa

UNMIX
WEB:https://unmixbeauty.com/

interview & text : Akira Watanabe

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