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2026年も注目したい!
ファッション界のコラム

text : Shigeaki Arai(AFFECTUS)

目まぐるしく進化し続ける日本のファッションとそれらにまつわる出来事のなかから、3つコラムを展開。ファッションスタイル、アイテム、クリエイションなど、2025年からの話題を振り返りつつ、さらにアップデ-トされるであろう2026年の動きにも注目したい!

K-FASHIONが日本で見せる、ポストファッションの兆し

日本における韓国ブランドの人気は、もはや特別な現象ではなくなった。ポップアップの開催や日本展開の拡大は、すでに日常の風景として受け止められている。なぜ、韓国ブランドはここまで日本で受け入れられているのだろうか。そのスタイルを前にしたとき、ひとつの可能性が浮かび上がる。日本の市場と感性が、K-FASHIONを迎え入れる準備を整えていた、という見方である。

現在の韓国ブランドには、ときに1990年代の日本を思わせる空気が漂う。ただし、それは懐かしさを刺激するノスタルジーとは異なる。安室奈美恵やMAX、浜崎あゆみといったスターが象徴していたのは、内なる創造性を外に放出する圧倒的なエネルギーだった。音楽、ファッション、ドラマはエッジが効き、作品の個が明快だった。それを、みんながひとつのカルチャーとして共有していた時代である。

当時のファッションは、個人の趣味というよりも、カルチャー単位で身にまとうものだった。ルーズソックスやミニスカート、ギャルといったスタイルは、細かな個性表現ではなく、外に向かう欲望を視覚化する記号だったと言える。そこでは、目立つことや前に出ること、「個性の主張」が肯定されていた。

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一方で、現在の日本のファッションはどうだろう。ジェンダーレスが浸透し、ベーシックで質の良い服が評価される時代が長く続いてきた。装いは日常に溶け込み、過度な主張を避ける方向へと向かっている。これは成熟でもあるが、同時に、カルチャーとしての強度が弱まった状態であり、抑制されていた個性が、再び外へ向かおうとする前触れとも読める。

そうしたタイミングで、個を際立たせる韓国ブランドが浮上してきた。ウェルダン(WE11DONE)、ジチョイ(jichoi)、コイセイオ(COYSEIO)。それぞれ表現は異なるが、共通しているのは、服より先にカルチャーが立ち上がっている点だ。黒に色気を帯びさせたストリート、ミニマルでスポーティなガーリー、アニメ的な距離感をもつ少女像。どのブランドも、「どう着るか」より「どんな世界に属しているか」を明確に示している。

その感覚を、ウェルダンとアキコアオキ(AKIKOAOKI)によるコラボレーションシューズ(上写真)が象徴している。ローファーという日本的な制服記号に、白いソックスを合わせながら、足元には現実離れしたボリュームのソールを組み合わせている。懐かしさをなぞるのではなく、日本の記号をフィクションとして変形するような、その編集感覚に韓国ブランドの強さが表れている。

今の日本でK-FASHIONが魅力的に映る理由は、カルチャーを押し出した装いが機能しているからではないか。かつて90年代の日本が自然に行っていたその感覚を、韓国ブランドは現代の距離感で再構築している。ベーシックの次に見えてきたのは、2026年にファッションが再び外へ向かうための、ひとつの兆しなのかもしれない。

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才能を編集するキュレーター、アシックス

※掲載のスニーカーは2025年に展開されたアーカイブになりますので、現在販売しておりません。

スポーツとファッションのコラボレーションは、今や珍しいものではない。とりわけコラボスニーカーの熱狂は特別だ。発表される否や、話題はSNSを駆け巡り、ファンはオンラインストアの前で発売開始の時刻を待つ。コラボレーションといえば、互いのブランドの象徴を重ね合わせる、あるいは一方のブランドのアイコンを尊重したものが多い。それがコラボデザインの伝統とも言えた。

しかし、その伝統から外れるのがアシックス(ASICS)だ。

アシックスのコラボスニーカーには「違和感」がある。それはネガティブな意味ではない。確立された美意識が、揺さぶられる感覚と似ている。2025年もアシックスは様々なコラボレーションを発表したが、ある共通点が見られた。それは秩序への干渉だった。

セシリー バンセン(CECILIE BAHNSEN)はフェミニンな花柄を甘く見せない。GEL-KAYANO 20ではブラックとシルバーに塗り替えられた花が、モチーフというより部品に近い。有機的な形から、生命の匂いが後退している。

ヒドゥン ニューヨーク(HIDDEN NY)とトーガ(TOGA)は、アシックスの象徴「アシックストライプ」に手を加える。前者はヒールにたどり着くという寸前で、流線型のラインが途切れる。後者はグラデーションによってロゴマークの色を薄め、存在感が強いはずのアイコンに、存在感を弱める逆転現象を生み出す。

シュシュ/トング(SHUSHU/TONG)はクールな色展開のスニーカーに、チュール製のフリルを大胆にドッキングした。スポーツの疾走感は、少女性によって崩され、歩くためのアイテムという目的すら曖昧になる。

個性と個性を組み合わせて、強烈なインパクトを生む。そんな王道のコラボと、アシックスのコラボは異なる。むしろ、個性の引き算とも言える。ロゴマークの存在感を薄め、スポーツの爽快さを乱し、可愛らしい花から感情を取り除く。

アシックスが発表した2025年のコラボスニーカーを見ると、どれもアイデアはシンプルに感じられた。しかし、目が奪われてしまう。なぜなのか。本来は、整えられるはずの個性を崩し、違和感を作り出していた。だが、それが魅力だった。欠けた陶器に美しさを感じることがある。日本の美意識に通じる感性が、アシックスのコラボスニーカーには流れている。人間は調和だけに惹かれるわけではない。体と密接するファッションに実験や前衛を求めるのは、人間の本能の現れではないか。

アシックスのコラボレーションは本能を刺激する。完成された美意識や秩序に干渉し、違和感を生み、主張へと変えた。スポーツブランドでありながら、才能をキュレーションする存在として、アシックスは世界を編集する。その編集は、きっと2026年も続くだろう。

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AI時代に、ファッションデザイナーは何者になるのか?

AIの進化によって、「人間の仕事は代替される」という言葉を耳にする機会が増えた。だが、ファッションの現場を見渡すと、AIは服づくりの完全な代替にはならない予感がする。AIはすでにコレクションの制作工程に入り込んでおり、2026年もその動きは加速していくはずだ。しかし、デザイナーの仕事が消えたわけではない。むしろ、人工知能はデザイナーの感性と思考を研ぎ澄ましており、日本のデザイナーやブランドのAI活用を見ても、その使われ方は一貫している。

2025年1月、宮前義之が率いるA-POC ABLE ISSEY MIYAKE(エイポック エイブル イッセイ ミヤケ)は、デザインラボラトリーSynfluxとの協業プロジェクトに取り組む。アルゴリズムによるパターン生成で廃棄ロスを抑えようとした結果、ベーシックとは異なる構造を生み出す。

また、遡ること2023年、ダブレット(DOUBLET)の井野将之は、創作過程にAIとのコミュニケーションを取り入れ、2024年春夏コレクションを制作した。AIと会話を重ね、AIが画像を生成する。その中には、バグが生じた画像もあった。しかし、井野はそのバグを愛しいものとしてグラフィックに取り入れる。

ハトラ(HATRA)の長見佳祐は、AIが今ほど注目を浴びる前から、人工知能とのクリエイションに取り組んできた。そのモダンな姿勢は2020-’21年秋冬コレクションで、すでに現れていた。架空の鳥をコンセプトに、ネット上に点在する膨大な鳥の画像をAIに学習させ、存在しない鳥の姿を創り出す。

いずれの事例も、デザイナーはAIに完成形を完全に任せているわけではない。AIを、発想を拡張するための思考サポートとして扱っている。そこにあるのは代替ではなく、編集としてのAIである。

これまでファッションデザイナーは素材を選び、シルエットを設計するなど、制作を主体とするクリエイターとして語られてきた。だが、AIの進化を思うと、いずれクリックすれば、ジャケットのサンプルが瞬時に、幅広いデザインで、大量に作られる未来が訪れるかもしれない。

そうなると、デザイナーの仕事は「どれを選ぶか」「なぜそれを選ぶか」に集約されていく。センスとは、作る能力ではなく選ぶ能力にシフトする。デザイナーのセンスは、ジャッジに発揮される。

AIはトレンド・過去のデータ・構造的な最適解を高速で処理できる。しかし、AIは作るが、判断はできない。「今、社会がどんな空気を抱えているのか」「なぜ、このタイミングでこの服なのか」といった文脈の解釈は、デザイナーに委ねられている。だからこそ、これからのデザイナーには社会・テクノロジー・政治・芸術・文学・音楽といった、服の外側の知識を横断的に読む力が必要になる。

それは、従来のデザイナー像というより、編集者に近い役割かもしれない。編集者が無数のテキストの中から意味を選び取るように、デザイナーは無限の選択肢の中から「今、必要な服」を見出していく。手を動かす時間は減り、思考する時間が増える。服にデザイナーの手触りが残る時代から、服にデザイナーの思考が残る時代へ。その予兆は、少しずつ現れ始めている。

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