
──飲食店然り、コロナが演劇に与えた影響も甚大でした。丸山さんはコロナ禍で『パラダイス』の上演が延期になってしまいましたね(※2020年上演予定が中止となり、2022年に上演)。
丸山:そうでした。あと『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(’22年)の時も、見どころの一つであるお客さんとの掛け合いができなくて。
荒川:声出しがダメになったり、一席空けて座ったりね。当たり前のことから当たり前じゃなくなった時期があって、それで演劇の間口が狭くなり、離れていってしまった人もいると思います。
あと、街の時間帯が変わりましたよね。今回は違いますけど、前は演劇といえば13時と18時の2回が多かった。でも、最近だと12時と17時というのもあるでしょう。17時って、会社で働いている人なら早引き……?みたいな。19時だったら仕事終わりに来られたのにという人がいるんですよね。
丸山:その特殊な時期にだけ流れていた風潮はあって、当時は言えなかったけど、確かに違和感を覚えることもありました。そういう違和感を赤堀さんが書くから、痒い所に手が届くような感覚があるんです。舞台上では何かわかりやすいハッキリした出来事が起きているわけではないけど、同じ憤りみたいなものを持っている人だったら、観て少しはスッキリするかもしれない。本当に、演劇に人が戻ってきてほしいですね。
上白石:本当ですね。私もコロナの第一波の時、ゲネまでしていた倉持裕さん作・演出の『お勢、断行』(※2020年に上演予定が中止、’22年にキャスト変更して上演)がすべてなくなってしまったことがありました。その時、稽古をして本番を迎えるということが、本当に当たり前ではないんだなということを実感しました。
生き様が違う人々が同じ目的を持って同じ場所に集まる、神聖な演劇やライブという場が、ある時期に丸々封鎖されてしまったことの悔しさはすごくあります。だからこそ余計に、幕が上がる尊さを噛み締めています。
荒川:前は、よく言う「千穐楽まで駆け抜ける」って結構当たり前だったじゃないですか。それがもう当たり前ではなくなってしまったんだもんね。
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──最後に、『装苑』「装苑ONLINE」を見ている若い世代に向けて『震度3』のおすすめや、観劇の楽しさをご共有いただけたら嬉しいです。
丸山:「ヴィレヴァン」ついでに来ればいいんじゃないかな。うまいカレー屋もあの辺にありますよ。肩肘張って来るようなものではないよと言いたいです。
ふっと映画館に入って映画を見たりする、あの感覚でいいんだと思います。今、サブスクのドラマとか映像作品にハマっている人には、役者が生で、目の前で演じて生まれるものを体感することには、また別の楽しみがあることを知っていただけたらいいな。演劇は観客の方も共演者みたいなもので、一緒に空気を作っています。映像からもらえる刺激に、そろそろ皆さん飽きてきた頃じゃないですか? それは冗談だとしても、演劇に「参加」してもらえたら、きっと普段と違う刺激をもらえると思います。そこでしか体感できないものがあります。
上白石:赤堀さんが書く物語は私たちの生活の一直線上にあるものだと思うので、自分を投影して見ることができます。私たち役者も、普段の温度感のまま出られる作品だと思っているので、あまり演劇に親しみがない方でも是非足を運んでいただきたいです。裏には太いテーマがあるけれど、決して難解なものではない。そして「わからせないのがいい」というタイプの演劇ではないので、ある種、映像的でもあります。難しく考えすぎずに来ていただきたいです。
荒川:色んな演劇があっていいと思うけど、たまに演劇って、「この役者、頑張ってるなぁ。観ていて少し恥ずかしいかも……」とか、「うわ、こんなことしないだろ」みたいなのがあるでしょ。一瞬冷めちゃう時とか。そういう感覚は、赤堀さんの作品にはないと思います。
あっ、でもまだどんな作品になるかわからないから、台本があがったら思いっきりそうなってる可能性もあるか……。蓋を開けてみたら、わ、赤堀さんすごい新しい挑戦だ〜!みたいなことになってる可能性もゼロではありませんが(笑)。でも多分、今回も特別じゃない人々が主役で、作業着姿の人やガードマンなど、街の中で見る人が出てくるような話だと思います。だから恥ずかしくない。気が向いたら普通に来てほしいです。
Yoshiyoshi Arakawa
佐賀県出身。1998年から「大人計画」に所属し、多数の映画・舞台に出演。2008年の映画『全然大丈夫』で初主演。近年の出演作に、映画『首』、『Cloud クラウド』、テレビドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」、「Dr.アシュラ」など。2025年11月6日〜30日に「パルコ劇場」で上演される、大パルコ人⑤オカタイロックオペラ『雨の傍聴席、おんなは裸足・・・』にも出演する。
Ryuhei Maruyama
1983年生まれ、京都府出身。SUPER EIGHTのメンバーとしても活躍。バンドではベースを担当し、その演奏力にも定評がある。2004年、シングル「浪花いろは節」でCDデビュー。’11年、『ギルバート・グレイプ』で舞台初主演。同年、『ワイルド7』で映画初出演。’12年、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」で連続ドラマ初主演。’17年、『泥棒役者』で映画単独初主演を果たす。近年の出演作に、映画『金子差入店』、ドラマ「FOGDOG」(7月21日より、読売テレビ系ドラマDiVE枠 毎週月曜深夜1:29〜放送)。待機作に『アズワン/AS ONE』(声の出演、2025年8月22日公開)。7月16日(水)にSUPER EIGHT LIVE Blu-ray&DVD「超DOME TOUR 二十祭」 が発売。7月よりスタートした、FM COCOLO「Groove-Method」では、レギュラーDJを努める。
Moka Kamishiraishi
2000年生まれ、鹿児島県出身。2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディションにて、当時史上最年少の10歳でグランプリ受賞。‘12年にドラマ「分身」で俳優デビュー以降、数々の映画、舞台、ドラマで活躍。‘19年に、映画『羊と鋼の森』で第42回 日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。またadieu名義で音楽活動にも精力的に取り組む。近年の出演作に、ドラマ「イグナイト-法の無法者-」、映画『366日』『パリピ孔明THE MOVIE』など。待機作に『ロマンティック・キラー』(2025年12月12日公開)。
Instagram @moka___k
上白石さん着用:ポロワンピース ¥69,300、ラップスカート ¥41,800、パンツ ¥49,500 ニアーニッポン(ニアー TEL 0422-72-2279)/ サンダル ¥10,900 チャールズ&キース(チャールズ&キース ジャパン https://charleskeith.jp/) / イヤリング ¥25,300 エテ(TEL 0120-10-6616)
赤堀雅秋プロデュース『震度3』
作・演出:赤堀雅秋
出演:荒川良々 丸山隆平 上白石萌歌 水澤紳吾 山下リオ 西本竜樹 松浦祐也 赤堀雅秋 あめくみちこ
「本多劇場」2025年8月21日(木)~9月7日(日)
全席指定 ¥ 8,800、U-25 ¥4,000(税込)
チケット一般発売:2025年7月18日(金)10:00
「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」2025年9月10日(水)~16日(火)
「J:COM 北九州芸術劇場 中劇場」2025月9月19日(金)〜21日(日)
特設サイト:https://www.comrade.jpn.com/shindosan/
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