
ドラマ「下剋上球児」(2023年、TBS)での好演が話題となり、その後、NHK連続テレビ小説「あんぱん」(’25年)の演技で注目を集めるなど、’22年のデビュー以来順調にキャリアを重ねている俳優の中沢元紀さん。先ごろ、NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」への出演も発表されたばかり。勢いに乗る中沢さんが初の単独主演を務めるドラマが、「ゲームチェンジ」(BS-TBSにて1月8日放送開始)だ。
演じるのは、ゲーム会社を辞め、人生の目的を見失った29歳の青年・草道蒼太。ひょんなことから、ドローンやAIなどのテクノロジーを用いた「スマート農業」での稲作の世界に足を踏み入れ、次第に生きる意味を見出していく。
実は、中沢さん自身にも、蒼太のように「自分は何をしたいのか」と悩んだ時期があったそう。
役柄と自身を重ね合わせながら、何を考え、何を感じたのか?俳優業への情熱、本作が問いかけるもの、そして未来への大きな野望。まっすぐな瞳の奥に宿る想いを語っていただきました。
photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.) / interview & text : SO-EN
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蒼太のように虚無を感じたり、何をしたいんだろうと悩む期間があった
――初の単独主演ドラマご出演、おめでとうございます。最初にお話を聞いた時の心境はいかがでしたか?
中沢元紀(以下、中沢):とても嬉しかったです。初めてのことにプレッシャーも感じていましたが、「真ん中を目指していきたい」という自分自身の目標の第一歩を踏み出せたようで、本当に嬉しかったですね。
――撮影はすべて終わられたそうですが、座長として現場に立つ経験はどのようなものでしたか?
中沢:「あんぱん」でご一緒した北村匠海さんの現場での佇まいを素敵だなと思っていたので、北村さんのあり方を意識する部分がありました。北村さんは自分が前に出るのではなく、視野を広く持った縁の下の力持ちという居ずまいだったんです。
僕自身、先頭に立って引っ張っていくよりも「みんなで頑張っていきましょう!」と手を繋いでいくほうが合っている気がして、そのようにしていたと思います。

――本作は、近年話題の「スマート農業」と、29歳の人生の岐路が組み合わさったユニークな作品です。台本を読まれた時の印象はいかがでしたか?
中沢:確かに他にはない作品だと思いましたし、ベースはヒューマン(ドラマ)でありつつ、コメディ要素もファンタジー要素もあって、この作品にしかない色があるなと感じました。あとは心的なハードルを感じることなく、気負わず見られる作品で、それもいいなって。
――蒼太というキャラクターには、すんなり入ることができましたか?
中沢:蒼太は25歳の僕にとって少し年上ですが、彼が感じていたことはこれまでの経験から理解できました。自分自身にも、虚無感があったり、何がしたいんだろう?と思い悩むような期間があったので。
――そうなんですね。いつ頃のことですか?
中沢:役者という職業に興味を持つ前のことです。役者になりたいと思ったのが17歳くらいの頃だったのですが、それまでは特に将来の夢がなくて。だけど家族や兄弟、友達にはみんな何かしらやりたいことがあった。僕もいずれ(夢が)見つかるのかなと思いつつ、焦りや負い目のようなものを感じていました。そこが演じた蒼太に重なっています。
――役作りにおいて、脚本以外に何か手がかりにされたことはありましたか?
中沢:現場に入って茨城の田んぼを見たら雰囲気をとらえることができて、それだけで充分でした!風を感じる描写も多いのですが、その場面は、CGとかではない本物の田んぼのある土地が助けてくれたなと思います。
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短い撮影期間でも感じられた、農業の大切さと大変さ
――作品に入られる前、「スマート農業」はご存知でしたか?
中沢:全く知らなかったので、蒼太と同じ感覚でした。実際体感すると本当にすごかったですね。肥料をドローンで散布できたり、稲の生育状況もスマホで確認できて。
――最先端の技術を目の当たりにされたんですね。
中沢:撮影していた9月の茨城がめちゃくちゃ暑くて、農業は体力勝負だとわかりました。手作業の良さはもちろんありますが、肉体的に大変な仕事だからこそ、技術を用いて体力を温存できるなら、それも必要なことだなと感じる部分が大きかったです。

――作中では、手作業の伝統的な農業と、蒼太が体験するスマート農業が対比的に描かれます。どの分野にも、今は伝統と技術革新の相克があると思いますが、その部分をどのようにご覧になっていましたか?
中沢:僕は比較的、代々受け継がれてきたような伝統的なものが好きなほうで、一つひとつ時間と手間をかける温かさを大切にしたいと考えがちです。でも、劇中に伝統的な農業をされている方が腰を痛めてしまうような描写があって。そのこともあり、体調面などの手助けになる技術は積極的に使ってもよいのではと思うようになりました。どちらか一つ(伝統か技術か)ではなく、混合させて新しいものができるのが理想的ですよね。
――確かにそうですよね。農業や食材に対して意識が変わられた部分もありましたか?
中沢:農業は体を使う仕事である上に、稲をダメにしてしまう虫に神経を使い、常に生育状況を見ていないといけません。そういう大変さを知ると、ただただお米が高いなどと言っていられないなと思いました。これだけ手をかけて作っているんだから……と。
――実際の農家さんのご苦労を体感されたんですね。
中沢:撮影の限られた期間ではありましたが、感じたり、想像できる部分はたくさんありました。「美味しいお米はこうやって作られているんだ」ということを目の当たりにして、お米が高騰している時期に農家さんへの感謝の気持ちが大きくなりました。
――今回の撮影地である茨城県は、ご出身地でもありますね。これまでも、田んぼや農業との関わりはあったのでしょうか?
中沢:家から数分歩けば田んぼ道、みたいな場所に住んでいたので、見慣れた風景で、親しみがありました。小学校の頃に行った田植え体験もよく覚えています。
――そうした素地が、テーマへの理解の深度にさらに役立たれているのかもしれませんね。料理がお上手な様子もSNSで拝見していますが、食材を選ぶ際に産地は意識されるほうですか?
中沢:これまで産地を強く意識したことはなかったのですが、やっぱり、レンコンみたいな地元の野菜だとつい手に取ってしまいます!
――ロケ地の農家の方々との交流もあったそうですね。
中沢:はい。もう本当にたくさんお世話になりました。田んぼやロケ地、器具などを撮影のために夜遅くまでお借りしているのに、嫌な顔一つせず、それどころかたくさん助けていただきました。米粉のパンやコーヒーの差し入れをいただいたり……関わっていただいた農家さんには、感謝の気持ちでいっぱいです。

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“生きる”に触れるテーマから、「どう」生きるか。
演じる人生、そのきっかけと目標へ。
次ページは、2話目のネタバレを含む内容があります。