「スティーブン・ジョーンズ、アーティストの帽子たち」より。ベレー帽とシガレットのアクセントがパリっぽい(2016-’17年秋冬)。
イギリスを代表する世界最高峰の帽子デザイナー、スティーブン・ジョーン(Stephen Jones)。その彼にスポットライトを当てた展覧会「スティーブン・ジョーンズ、アーティストの帽子たち(Stephen Jones, chapeaux d’artiste)」が、パリのモード博物館「パレ・ガリエラ(Palais Galliera)」で開催されている。
パレ・ガリエラで、ひとつのジャンルのアクセサリーに特化した展覧会を開くのは40年以上ぶり。
スティーブンのキャリアにおいて重要な作品となったトップハット(1996-’97年秋冬)。マスキュリンなフォルムの帽子でありながら、ローズをイメージしたサテンの曲線がフェミニンでもある。
1957年、リヴァプール近郊で生まれたスティーブン・ジョーンズは、セントラル・セント・マーチンズの学生時代に帽子作りに目覚め、卒業後の1980年、ロンドンで初のブティックを開店。カルチャー・クラブのボーイ・ジョージをはじめ、当時の音楽シーンを席巻したニューロマンティック系ミュージシャンたちとの出会いが、彼のキャリアに大きな影響を与えた。
セントラル・セント・マーチンズの卒業制作のドレスと帽子(1979年)。
1976年ごろのポートフォリオ。
スティーブン・ジョーンズのポートレート。
その後、ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)、ディオール(DIOR)、ジバンシィ(GIVENCHY)など、パリのオートクチュールメゾンとの仕事も始まり、ティエリー・ミュグレー(Thierry Mugler)、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)、トム・ブラウン(Thom Browne)、コム デ ギャルソン(COMME DES GARÇONS)の川久保 玲など、第一線で活躍するデザイナーたちと密接な関係を築いていく。
左はバレエで二人のステップを意味する『パ・ド・ドゥ』(1982年)。右はブロードウェイのコメディエンヌの名前を冠した帽子『キャロル・チャニング』(1995-’96年秋冬)。
左はバービー人形の脚でモヒカンを表現(2003-’04年秋冬)したヘッドピース。右は手編みのベレー帽『朝食』(2005年春夏)。
2018年春夏コレクションより。左は『ソーイング(縫製)』、右は『ピニング(ピン留め)』。
展示品は約400点。学生時代の作品を含む170点以上の帽子に加え、アーカイブのデッサン、写真、リサーチブックの紹介も。突き抜けた存在感のクリエイションはエキセントリックだが、同時にエレガントなムードをまとい、クライマックスに登場する気鋭デザイナーたちとのコラボ作品は、まさに圧巻。
ジャンポール・ゴルチエ 1984年春夏コレクションより。帽子はスティーブン作。右はトニー・ヴィラモンテス(Tony Viramontes)のイラスト。
ジョン・ガリアーノによるジバンシィ 1996-’97年秋冬オートクチュールでは、カメラがサンバイザーに変身。
左はコム デ ギャルソンとのコラボ作品。上から2007-’08秋冬、2006-’07秋冬、2006年春夏。右はジョン・ガリアーノによるメゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)2015年春夏オートクチュール。
もちろんこの展覧会は、スティーブンが手がけた唯一無二の帽子が見どころだが、彼が抱くフランス・パリへの愛着、そしてクチュールへの特別な思いまでを掘り下げるものでもある。最も“フランス的”なイギリス人帽子デザイナーの創造の世界をぜひ覗いてみて。
ジョン・ガリアーノによるディオールのオートクチュール。左は2003年春夏、右は2005-’06年秋冬。
左はトム ブラウン(THOM BROWNE)2014-’15年秋冬と2018年春夏のプレタポルテ。右はA.F.ヴァンデヴォースト(A.F. VENDEVORST)2015年春夏の作品。
●Stephen Jones, chapeaux d’artiste
2025年3月16日まで
Palais Galliera
10 avenue Pierre 1er de Serbie, 75116 Paris
https://www.palaisgalliera.paris.fr/
トム ブラウンのクチュール2024年のショー会場にて。ベレー帽とトム ブラウンの白衣がお似合いのスティーブン。
Photographs&Text:B.P.B. Paris