FETICO(フェティコ)
女性の身体の造形美を追求し、
時に強く、そして時に優しい服を提案。
フェティッシュから派生する
モダンなスタイルが魅力に
〈東京発のブランドストーリー Vol. 5〉

2024.12.24

デザイナー舟山瑛美さんがデザインした、2025年春夏の「フェティコ」には新しい風が吹き込まれていた。いつになく優雅に身体にまとわる布。激しさよりもふんわりとしたイメージが印象に残るアイテム。メンズライクなテーラードとの融合。そしてフラットでスポーティな足もと。毎シーズン重ねてきたコレクションに、自身の中にある女性像を反映させそして進化させる。常に自身の視点で追求する美がそこに存在していた。

デザインをしてパターン出しというタイミングです。本当にやることがない時ってないですね。

どこかに出向くこともありますし、記憶の中から引き出してみたり。“そういえばあれ気になっていたな”みたいなことからリサーチを始めることもあります。

わりとビジネス思考が強いので、売らなきゃいけないっていう責任みたいなところは常にあります。逆にそこを外した物作りをもっとやっていいよっていう方が今は難しいんですが、あえてそこをやりたいというのもあります。

そうですね。でも、やっぱり衣装はすでに役が出来上がっている人に対してデザインしますよね。ブランドだと、自分がやりたいものを優先するので、優先するものが変わってくるから結構難しいです。でもそこが面白いところでもあるんですけどね。

5歳上の姉がいて、小さい頃はなんでも姉の真似をしていました。姉が高校生ぐらいの時には一緒に原宿とかに行っていたんです。

すでにミシンを使ってエプロンワンピースみたいなものを見様見真似で作ったりしていました。あと絵を描くことも子供の頃から好きで、それぞれの延長線でぶつかったんだろうなっていうのはあります。

思い込みが激しかったんです。(笑)それに嫌なことしたくない子供だったんです。好きなことしかしないという。それもあって。

「ヴィヴィアン・ウエストウッド」や「アレキサンダー・マックイーン」が大好きで、ちょうどその頃ロンドンブランドの勢いがすごかった!「クリストファー ケイン」のデビューも確かその頃。なので興味を持ったのは必然でした。

パンキッシュでしたね。1960年代の古着とか。

「ドッグ」とか「ヌードトランプ」。あと「シカゴ」も行きましたね。リサイクルショップとかも行ったし。ちょうどファストファッションが流行り始めた頃で、そこに行けば安くてトレンドのものはあったんですが、大量生産されている服を着て人とかぶるのがすごく嫌で。

はい。莫大な量の服を見て、その中から自分が好きなものを選んで、それが積み重なってきている気がします。自分が好きなものを広げて、そしてしぼめるみたいな作業。

でもうちは定番アイテムが全然ないんです。ほとんどが新型で。同じテクニックを使うのは結構あるんですけど。もともと最初は型数が少なかったというのもあるんですが、型数増えた今でも、まだそのやり方をやっていて。新しいものを作りたくなっちゃうんですよね。でも、セールスチームからはもう定番品をもっと作ってほしいと言われていて・・・。

体にフィットしてるものとか肌を露出するものが多い分、そこの見せ方はかなり気を使います。

それもありますが、学生時代のニックネームでもありました。

そうですね。ヴィヴィ子が流行ってた頃、私がフェティ子って言われていて。フェティッシュっぽいファッションが好きだったんですよね。エナメルとかレザーとか。

昔からずっと好きな人がたくさんいるのですが、その中から今期はヴェロニカをイメージしながら描きました。他には荒木経惟さんのミューズだった舞踊家で元モデルのKaoRiさんや、ウォン・カーウァイの映画にいつも出てくるフェイ・ウォン。ビジュアル的には湿度を感じる少しアンニュイな女性が好きですね。

今回は全員スニーカーでした。今までのイメージを少し外したかったんです。’80Sのスタイルをいろいろとリサーチしている時に、ヒールを合わせて決めちゃうよりもフラットシューズとかで抜け感ある方が可愛いなって思って、思い切ってスニーカーにしてみました。

好きですね。10代の頃ちょっと’80Sブームみたいなのがありました。ワンショルダーとかオフショルダーが流行って、髪の毛をサイドに結んだり。

もうすこしだけ遡ります。若い人には新鮮に見えて、ちょっとお姉さんには着やすい感じになるかな。

本も見ますし、映画とかに答えを求めることもあります。あと古着も重要。ありとあらゆるものからインプットします。音楽とかも影響されたりしますね。それをまとめ上げるのが大変です。

以前、企業でデザイナーをしてたんですが、その時に人のためにではなく自分のためだけにウェディングドレスを作ったんです。自分が好きな形を突き詰めて自由にデザインして。学生の時以来でした。それがすごく楽しくて、自分のブランドやろうというきっかけになりました。ブランドを始めてからはターニングポイントがありすぎて。セールスと契約したこともそうでした。自分たち以外がブランドを広めてくれて、パートナーができた感じでした。それからランウェイでコレクションを発表できたのも。

スタートが遅かった分でしょうか、勢いがついてきました。まわりに同年代のデザイナーも多く、とてもいい刺激になります。青木明子さん(アキコアオキ)、ヴィヴィアーノ・スーさん(ヴィヴィアーノ)、大野陽平さん(ヨウヘイ オオノ)、小髙真理さん(オダカ)、砂川卓也さん(ミスターイット)。その年なんかあったのかな?みたいな感じですよね。みんな「TOKYO FASHION AWARD」を受賞していて繋がっているんです。それぞれクリエーションが違ってて面白いですよね。だから仲良くできるのかもしれないです。

私もとても憧れます。こういうプレタポルテのブランドでは到達できない部分もあると思うんですが、そのエッセンスは取り入れたいです。人の手によって生み出されるもの、時間をかけて作られるものの素晴らしさ。図りきれない力をそこに感じます。ビンテージの服を見ていても、手の込んだ刺繍とか、手縫いのタックとか素晴らしいですよね。なかなか量産では難しいけれど、少しでもエッセンスとして取り入れられたらいいと思います。

意外と色決めです。素材ごとに色を決めていくんですが、素材をほとんど別注で作ってるので、この生地の色は何色にしようかといつも苦戦しています。別注だと自分が好きな色を作れるし、風合いまでこだわることもできます。生地作りは結構時間かかります。デザインも時間がかかるけれど、そこはずっと今までやってきたことだからできるんですが、素材作りはそこまで自分が主軸になってやってきたことがなかったので。

目下の課題はよりブランドを強くしたいということです。納得できるいい服を作って、そしてそれをどう見せていくかということ。あとやはり旗艦店を作りたいです。最近、伊勢丹新宿店でポップアップストアがあって設営に行きました。クリスマスシーズンだったので、すごく大きな黒いリボンをツリーに見立ててディスプレイしました。最初可愛すぎるかなと思っていたんですが、ホリデームードの中で、逆にインパクトがあって良かったです。ディスプレイとか作り込んでいくのは楽しいこと。すごく大変だけど、お店があったらこれがゼロからできるんですね。

もし気になって着たいと思ってくれたなら、すべての人に着てほしいです。簡単な服が多いわけではないけれど、是非挑戦してほしいです。

photographs: Josui Yasuda(B.P.B.)


Emi Funayama
高校卒業後に渡英、帰国後にエスモードジャポン東京校入学、2010年卒業。コレクションブランド等でデザイナーの経験を積み、2020年にフェティコを立ち上げる。2022年に「JFW NEXT BRAND AWARD 2023」「TOKYO FASHION AWARD 2023」を受賞。

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