
服の固定観念を覆す
再構築で自由に楽しめる
価値観をデザイン

『装苑』2025年5月号 掲載
クラシックなメンズ服をジェンダーレスに再構築し、独自の感性でスタイリッシュに仕上げるmemeci。デザイナーの山田悠暉さんは、サステイナブルな服作りに興味を持ち、26歳の時、ロンドンへ留学した。

ビル群からインスパイアされたExclusiveデザインシャツは、前シーズンで出た残布を分解し、かんぬきでとめられたデザイン。¥93,500

アートをたしなみ、普段から絵を描くことも好きだという山田さん。ブランドを設立した際に描いたのは映画『リトル・ダンサー』のお気に入りのシーン。ボクシングの格好でバレエ教室で踊る主人公が、ブランドの世界観に共鳴している。
「ロンドンで最も衝撃を受けたのは、タトゥースタジオの隣にヴィーガン飲食店があったことです。一見、対照的なイメージのカルチャーが共存している地域の光景に、強いギャップを感じながらも、多様性の進んだ街だと思いました。そんな異なる価値観を内包する表現を、自分の服でも目指したいと考えるきっかけになりました」

ビッグシルエットながらウエストダーツを内側にとり、シェイプさせたフォルムは体にもなじみやすい。製造工程で塩素加工をせず、オゾン加工を施し、環境に優しいトレーサビリティウールを使用した半袖のテーラードジャケット¥85,800

オーガニックコットンのTシャツに、メンズとレディスを融合したシャツをドッキング。衿もとにパール装飾することで上品に仕上げた。¥29,700
2025年春夏コレクションのテーマは「the middle」。日々、都会で生活をする中で、変わりやすい天候やビル群、コンクリートの風景に着目。同時に、白黒はっきりさせようとする世の動きが加速することに疑問を持ち、中間の領域を残しながら、歩み寄って共存してほしいという願いも込められている。グレーを基調に、MA-1、レインコート、シャツの仕様を様々な角度から融合したトレンチコートなどは、その象徴的アイテムだ。また、デザイナー自身がストックしていた生地を使用するなど、環境に配慮したものづくりもアイデンティティを感じる。
「memeciの服は、体型や肌の色、性別を超えて着られるデザインを考え、なるべく環境に配慮したものづくりを心がけています。よりポジティブに次の世代に向けた新しい服を提案したいです」

ブランドのシグネチャーアイテムのビッグシルエットシャツ¥42,900。前合わせを途中から左右切り替え、メンズとレディスの融合を表現。高密度のコットンブロードで着心地にもこだわった。

デザイナーが最も魅力的だと感じ、ブランドのキーカラーでもある赤を使用。MA-1で使われるリサイクルナイロンツイル(撥水加工)を採用し、環境にも配慮したトレンチコート¥110、000、シャツ¥30、800
ブランドプロフィール

山田悠暉 Yuki Yamada●1992年生まれ、富山県出身。金沢文化服装学院およびバンタンデザイン研究所ファッションデザイン卒業。コム デ ギャルソンの営業部にて勤務後、渡英。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションにてファッションデザインを学ぶ。帰国後、企業デザイナーを経て、2021年にmemeciを立ち上げた。@memeci _yukiymd
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EUCHRONIA/ ユークロニア デザイナー



文化服装学院卒業の宮崎さんと佐藤さんによって立ち上げられたブランド。おのおのアパレル企業のデザイナーとして勤務した後、共にイギリスへ留学。2023年4月にユークロニアをスタートさせた。 Instagram:@euchronia_official