
俳優として、そして近年は文筆家としても注目を集める坂口涼太郎さん。昨年8月に出版された初のエッセイ集は、発売から重版が続き、話題の一冊となっている。独自の感性で紡がれる言葉と、ユーモアに溢れた視点は、どのようにして生まれたのか。本書のキーワードにもなっている“らめ活”に込められた思いから、書くことを通して見えている世界について、お話をうかがいました。
photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B)
styring : takashi sekiya
hair & makeup : Yukari Kozono
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言葉もファッションみたいにコーディネート
――初のエッセイ集、発売から大きな反響を呼んでいますね。
坂口:ありがとうございます。普段、あまり本を読まないという方からも「すごく面白かった!」と言っていただけたりして、とても嬉しいです。僕自身、どんな本でも読めるタイプではないので、自分の感性と響くような読書体験をしてもらえたのかなと感じています。
――本書の核となる考え方でもある「らめ活」という言葉が非常に印象的です。改めて、この言葉に込められた意味を教えていただけますか?
坂口:僕が貯金もないのに理想の部屋に引っ越そうとして、結局うまくいかなかった経験から生まれました。他人と自分を比べることを「諦めて」、今の自分の現状を「明らかにする」ことによって、日常や生活がラメみたいにキラキラと光って見える感覚があったんです。その「諦める」の「らめ」と、キラキラした「ラメ」をかけて、「らめ活」と名付けました。自分の生活に輝きのある活動をしていこう、という思いを込めています。
――「諦める」という言葉を、ポジティブな意味合いで再定義されているのですね。そういったユニークな言葉の使い方がたくさん散らばっているところも楽しく読める理由なのだと感じます。
坂口:僕はファッションが大好きなんですが、言葉の使い方は、ファッションと少し似ているかもしれません。どうコーディネートするか、という感覚で使っています。例えば「諦める」という言葉は昔からありますが、今の自分に似合うようにコーディネートするならどうなるかな?と考えた時に「らめ活」という、ちょっと可愛くてお気に入りの感じにしようと。言葉もファッションのように、自分らしくコーディネートしていくと、ネガティブな印象の言葉もポジティブにとらえられますよね。


自分の失敗を全部詰め込んで、「私なんてまだまだ大丈夫」って思ってほしかった
――本書はもともと週1回のウェブ連載だったそうですね。かなりのハイペースだったのでは。
坂口:はい。本を出版してから「週1連載はすごいですね」とよく言われるようになって、自分が結構なことをやっていたんだなと気づきました(笑)。あまりにも長くなったエピソードは前編・後編に分けて、少しだけ猶予をもらったりしながら続けていました。
――文章の構成やデザインも独特で、工夫が凝らされていますね。坂口さんの提案だったのですか。
坂口:ありがとうございます。例えば、急に箇条書きにしてみたり、週刊誌のコメントのようにしてみたり。本という体験の中に、映画や演劇のような映像的な面白さ、驚きを入れられたらいいなと思いました。読んでいる人が飽きないように、視覚的にも面白いものにしたくて。僕が頭の中でイメージしているビジョンを担当の方に相談して、具現化してもらった構成になります。
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――幼少期から現在に至るまで、かなり赤裸々なエピソードが綴られています。ご自身の失敗や恥部をさらけ出すこともポジティブに表現されているのもこの作品の魅力なのだと思います。
坂口:この本には、自分の秘密とか失敗を全部詰め込もうと思って書いていました。「こんないい加減な人もいるんだから、私なんてまだまだ全然大丈夫!」って読んだ人に思ってもらえたらなと思って。「らめ活」には、「でたらめ」の「らめ」という意味も、実は少しあるんですよ(笑)。
――多くの読者の心を掴んでいる理由をご自身ではどう分析されていますか?
坂口:今の時代が、この本の表紙を手に取りたくなるような空気感なんじゃないかな、と思います。世の中に様々な啓発本が溢れている中で、この本は「こうすればうまくいく」と教えられるようなものではなく、自分の人生を「経営する」ための本だと思っているんです。生まれ持って与えられたこの顔と体、環境によって育まれたこの性格をどうやってうまく活かしていくか。単語だけ変えたらビジネスと一緒かもですね。
――笑いあり、共感ありに加え、そっと隣に寄り添ってくれるような、優しい読後感がありました。
坂口:時代的に頑張りすぎずに生きていきたいと思っている人々も多いと思うんです。そのためには、自分を無理に変えるのではなく、本来の自分を認識して、受け入れること。そういう、いい意味での「諦め」を、みんな無意識に求めているのかもしれないなと感じます。


日常でも旅ができるツール。書くことで人生に飽きなくなる
――短歌も日常的に書かれていて、今作品にも掲載されていますが、坂口さんにとって、「書く」という行為はどのような意味を持っていますか?
坂口:自身を見つめ直したり、今回のテーマにもなっている“ポジティブに受け入れる”ということにつながるのではないかと思うんです。本書の連載のような長い文章は、日常的に書いているものではないですが、短歌はもっと息をするように作っている感覚です。短歌は、どこかへ旅に出なくても、今いるこの部屋や見慣れた景色がものすごく面白く見えてくる、日常でも旅ができるツールだと思っています。例えば部屋の隅にある埃ですらも、自分を訪ねてくれた誰かのかけらかもしれないと思うと愛しく感じる。そういう視点を持ってみると、すべてが詩のように、宇宙のように感じられて、人生や日々に飽きなくなるんですよね。心に少し余裕ができる気がします。
僕の中では、コスパやタイパ(タイムパフォーマンス)より、「無駄パ(無駄のパフォーマンス)」が大事だと思っています。今日の夕日を15分間、ただ眺める時間は、一見無駄かもしれないけれど、その無駄にこそ意味がある。生きていくことは、必要なことばかりじゃないですから。二度と見られない今日の景色を自分は見られた、という無駄な時間を慈しむ。そうやって少し立ち止まることが、心を豊かにもしてくれると思うのです。

――そんな坂口さんのファッションコラム連載が装苑3月号よりスタートしますが、どのような内容を考えていますか?
坂口:このエッセイ本が刊行されるまでは、自分の好きなファッションについてのコラム連載を持てる日がくるなんて思っていませんでした。どんなことを書こうか今からワクワクしています。コラムのタイトルは「あきらメゾンお涼」です。お涼っていうのは僕の愛称なんですが、そのお涼のブティックにお招きするようなイメージで、毎回、思い入れの深いファッションアイテムについてのお話を書きたいと思っています。どうぞ寄って行ってくださいな!
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『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』 坂口涼太郎著
定価 1,870円 講談社刊
坂口さん着用:
ジャケット¥120,000 / シャツ ¥48,000 / パンツ ¥90,000 / ベルト ¥38,000 /ネックレス ¥80,000 / 全てYES BECAUSE YES その他スタイリスト私物
問い合わせ先:
YES BECAUSE YES
080-7276-7614





