日本で規模を拡大するPANDORA(パンドラ)の成長戦略とは?ラテンアメリカ・アジア太平洋エリアで29カ国を統括するゼネラルマネージャー、マーティン・ペレイラ(Martin Pereyra)氏にインタビュー。

photographs: Hideaki Nagata

世界100カ国以上で展開する流通量と、自社工場で生産を行う製品づくりによって、手が届きやすい価格と高いクオリティを両立したジュエリーを提供するデンマーク発のジュエリーブランド「PANDORA(パンドラ)」。自分で好きなパーツをカスタムし、世界でたったひとつのアイテムを作り出せることも人気の理由だ。

2024年7月にはK-POPを代表する5人組ガールズグループRed Velvet(レッドベルベット)がグローバルブランドアンバサダーに就任し、同年10月には大阪でRed Velvetを迎えたVIP向けのイベントを開催したことも記憶に新しい。日本では今年だけでも関東圏を中心に26の新規店舗をオープン。今後、さらに全国各地での店舗展開を加速させ規模を拡大する計画だという。

大阪で開催されたイベントにあわせて、パンドラのラテンアメリカ・アジア太平洋エリアのゼネラルマネージャーであるマーティン・ペレイラ(Martin Pereyra)さんが来日。

LVMHやNestleをはじめとしたラグジュアリーブランドや、旅行、消費財の分野で20年以上の豊かな経験をもつマーティンさんに、パンドラ独自の魅力やブランド成長のための考え方、業界をリードするサステナビリティへの取り組み方について尋ねた。

パンドラは手ごろな価格帯かつ高品質な製品が魅力のひとつですね。マーティンさんは「パンドラのクリエイティブが愛される理由」をどのように分析されていますか?

パンドラの最大の魅力は、着用者それぞれがジュエリーによって自分だけのストーリーを表現できるということです。世界中の誰にでも自身のストーリーがあると思いますが、パンドラを象徴する「PANDORA MOMENTS」というシリーズでは、何万通りもの組み合わせから、ブレスレットやネックレスの本体と好きなチャームを選び、カスタマイズすることができます。自分にとって意味のあるパーツで構成する、パーソナライズされたジュエリーを纏うことで自身を表現することができるのです。それは、他のブランドにはない唯一無二の特徴です。

マーティンさんは、20年以上、ラグジュアリー業界の流通、旅行、消費財分野のプロフェッショナルとして活躍してこられました。業界を牽引するブランドにはどのようなことが必要だと考えますか。

当然ながら、買い物をしてくれるお客様やファンがいない限りブランドとして生き残ることはできません。消費者に響くものづくりを行うことは大前提。パンドラではジュエリーをタイの自社工場で生産していて、ペインティングや細かなディテールには人の手を加えています。人のストーリーを伝えるパンドラのジュエリーにとって、クラフトマンシップを大切にすることは欠かせない要素なのです。

そして、企業にとって最も大事なのは人です。従業員が会社から大切にされていると感じられることや、会社をみんなのホームのような居場所にすることは非常に重要です。パンドラで働く従業員は何千人といますが、プロジェクトごとのゴールや会社としてのヴィジョンをしっかり共有し、日々何を実現するために動くのかを明確に提示しています。タイの工場の職人さんや、アルゼンチンの店舗の店員さんは毎日の生活スタイルは違うかもしれませんが、全員「人々が自分をうまく表現できること」や、「自身のストーリーや愛しているものを形にする」ことをミッションに働いています。同じ意識をもつ社員たちが揃うと、想像を超える結果を生むのです。それは、私も驚くほどの力なのです。

また、私が統括する29カ国では、それぞれの国のトップ全員が共通のパンドラのゴールについて理解しています。例えば、今回も大阪で開催した、グローバルブランドアンバサダーのRed Velvetを招いたコンサートイベントには、日本のトップだけでなく、メキシコのトップも来日しました。日本で実現させたいこと、成長させたいことに関して、他の国のトップがアイディアを出したり参加をすることは当たり前の光景で、チーム一丸となってゴールを実現させようという体制があるのです。

認知度が10%上がるだけで、売り上げが約一桁変わると拝見しました。ブランドの認知を高めるためデジタルやSNSには力を入れていると思いますが、刻々と変わりつつあるマーケティングの手法について、パンドラを成長させるためのマーティンさんの考えや、取り組みについて教えてください。

私がこれまで、LVMHやNestleで働いて得た経験から伝えたいことは、認知度より何よりも大切なのは、ブランド定義=その企業からしか得られない価値を定めることです。そして、それをしっかりと言葉にすること。メディアやマーケティングの手法は時代によって変化していくものなので、流行りの特別な施策を行うことよりも、すでにあるプラットフォームでバランスよくブランドの価値を浸透させるように取り組んでいきます。そうすることで、安定的に認知度も上がっていきます。

アジア圏でブランドを成長させるにあたり、これはアジア独自の課題だと感じてることがあれば、どんなことか教えていただけますか?

私の考え方の基本となるのは、異なる点や出来ないことを探すのではなく、共通点を見つけること。パンドラが大切にしているのは、「自分のストーリーを表現できるジュエリーを届けること」なので、どこに行ってもそれを貫くだけです。

日本ではチェーンが細くて控えめなデザインが人気だという意見や、それに比べてパンドラはモチーフが大きくインパクトのあるジュエリーが多いという声も届きますが、日本で一番売れてるのはチャームが象徴的な「PANDORA MOMENTS」シリーズ。日本の皆さんにブランドが表現したいことが伝わっているからこそ、結果が表れていると思うので、パンドラのユニークなところは絶対にキープしてブレないようにしなければなりません。

「PANDORA MOMENTS」シリーズにはたくさんのデザインがあるので、誰でも、絶対に好みのものを作ることが可能です。地域オリジナルのチャームも用意していて、日本では桜や富士山のチャームも人気がありますよ!

K-POPを代表するRed Velvetがグローバルブランドアンバサダーに就任しました。韓国のアイコン的存在を初めて起用したとのことですが、キャンペーンの効果についても教えてください。

パンドラにとってストーリーが大事だということは何度もお話していますが、音楽は、表現者がストーリーを歌うという点でブランドと親和性があります。2019年にコロンビアのラテンポップシンガーソングライター、シャキーラとキャンペーンを行ったことを皮切りに、今はさまざまな国で現地のアーティストとコラボレーションを行っています。

音楽には文化が反映されると思うので、アーティストと取り組みを行うことで国ごとの特性を感じられます。Red Velvetとのパートナーシップでは、K-POP特有のメッセージ、スタイル、雰囲気を勉強したいと思っていました。実際にRed Velvedとのキャンペーン撮影の際、パンドラの製品から好きなものを選んでいただいて、メンバーの皆さんが選ぶデザインや、「この色はないですか?」というような要望から、アジアで生活する皆さんのファッションやライフスタイルについて新しく学ぶことがありました。カラーひとつをとっても、地域や国により意味が違ったり人気順も違いますし、スタイリングの仕方など、さまざまな面で刺激を受けました。

今年だけでも関東圏を中心に26店舗オープンと店舗数を拡大しています。(2011年の日本上陸からは50店舗オープン)今後も、全国各地で店舗展開を予定していくとのことですが、どういった狙いがありますか?

日本に関してすごく長期的に考えていますし、絶対に日本で成長させようという目標をもっています。10月に京都の店舗がオープンしたばかりですが、来年もロケーションチームがよい場所を見つけたら、すぐにオープンするという流れで引き続き店舗数を拡大していきます。日本は大きなジュエリー市場を持っているので、勢いとスピード感をもって取り組まないともったいないと思っています。

パンドラは、誰でもウェルカムな姿勢でアクセシブルなブランド。手に届きやすい価格だけではなく、欲しいと思った時にすぐアクセスできる場所に店舗を構えていることも大事です。東京では、渋谷のスクランブル交差点から徒歩3分のセンター街にも旗艦店ができました。これまでも渋谷にお店がありましたが、今回は、街の中心的な場所に位置したことでより一層、購入していただきやすくなっています。

先進的なグローバル企業として、ジュエリー業界全体をサスティナビリティでリードするために行っている取り組みや、それを伝えるための取り組みについて教えてください。

パンドラの長期的なビジョンとして、100年後も続くブランドでありたいと思っています。責任のあるビジネスを行うため、サステナブルに関しても信念と誇りをもって取り組んでいます。ブランディングやマーケティング戦略としてではありません。

私たちはサスティナビリティに関連する多様な目標を掲げており、嬉しいことに色々なことが実現できています。例えば、2025年までを期限に金と銀を全てリサイクルゴールドとシルバーにするというミッションは、現時点で達成しています。サステナブルのために設定しているゴールの達成率によって、トップの人たちの報酬が変動する仕組みもあるんです。

個人としても、将来の世界と次世代のためになることを考えて、献身的に取り組む企業で働けているということが嬉しく、誇りを持っています。

『装苑オンライン』を見ている人の多くはアートやファッションを学ぶ学生です。今後ラグジュアリー業界やその流通を担う可能性のある存在にMartinさんが伝えたいメッセージはありますか?

私自身はデザイナーではありませんが、ラグジュアリー業界で長く仕事をしています。私が、30年前の若い自分に戻って言いたいことは、今生きている時代についてわかってほしいということです。

成功にはタイミングが大事です。ですが、今世の中で起こっていることを把握しなければタイミングも分かりません。若い人にはやりたいことや、新しいアイディアがたくさんあると思いますが、自分のアイディアが今の世界にどう関係するのかを考えてください。人の話をよく聞いて、世界のみんながどのようにつながっているのか、時代がどういう風に変化してきたのかをよく見ること。そして、将来何が起こりそうなのかを予測してほしいと思います。

2つ目はラグジュアリーに関して。単純な考えだと、ラグジュアリーとは高価なものというイメージがあるかと思いますが、伝統的で価値が高いものだけを指すのではありません。時間、空間、心配ごとがないクリアな頭、静かな場所など、贅沢の定義とは非常にさまざまです。ラグジュアリーな仕事をしたいと思う人は、もっとオープンマインドでラグジュアリーの本質を学ぶべきです。そういったことを踏まえて行動していけば、新しく、面白いラグジュアリーが開発できると思いますし、後に成功へとつながるのではないでしょうか。

マーティン・ペレイラ(Martin Pereyra)

アルゼンチン出身のマーティンは、IbmecビジネススクールでMBAを取得後、ロンドン・ビジネス・スクールのリーダーシッププログラムへの参加を経て、ラグジュアリーリテール、トラベル、コンシューマー業界で20年以上の経験を有しています。ラテンアメリカ地域をはじめ、米国およびEMEA地域におけるブランドおよび事業開発、ゼネラルマネジメントにおいて豊富な経験を積んおり、これまでに、LVMH Starboard CS Duty Free Retail(米国)、Nestlé Nespresso SA(イタリア含む複数の市場を統括し、ブラジルでの新規事業を立ち上げ)およびLVMH Moët Hennessy(ブラジル、ベネズエラ、ウルグアイ、アルゼンチン)でエグゼクティブの役職を歴任。

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