監督、見里朝希に聞く
制作の裏側

キャラクターの魅力にとことん向き合う
見里:マイメロディとクロミという世界的に有名なキャラクターの作品を制作できることは光栄でした。同時にかなりファンが多いキャラクターなのでプレッシャーも感じ、ファンの方がちゃんと納得してくれる作品を作ろうということを常に目指しながら進めていきました。
また、物語作りにおいては、新事実や成長を描くといったキャラクターの設定が変わってしまうような内容は描かず、いかにキャラクター本来の魅力を引き立てられるかということを意識しました。クロミはマイメロディをライバル視していますが、それと同時に慕っているように感じます。そういったところが魅力だなと思い、お互いに尊敬し合う姿を描きたいと思いました。
世界観を細部まで表現
見里:マイメロディの細部までデフォルメされた世界観に魅力を感じ、サンリオの月刊紙『いちご新聞』などあらゆる資料をもとに、葉っぱやお花、スイーツなどの形や質感、パステル調を主とした淡い色彩などをストップモーションの世界でしっかり描くことにこだわりました。
主な素材として選んだのは顔の表情を表現できる伸縮性のある羊毛フェルト。頭巾は、初めてシリコンの素材に挑戦しました。また、着せ替えできるところが人形アニメの魅力でもあるので、各話で色々なマイメロディとクロミの衣装をデザインして、アーティストの方に作っていただいたのも見どころになっていると思います。




(上、左下) マイメロディの部屋での撮影。一番初めに撮影された、マイメロディがベッドに飛び込むシーン。マイメロディを支える金属の棒、コマ撮りタンク(リグとも呼ばれる)が出ている状態。後に編集でコマ撮りタンクを消して完成に仕上げていく。
(右下)ジャンプしているクロミ。コマ撮りタンクがクロミを支えている。
ストップモーションならではの魅力
見里:12話合わせて2時間超えの作品なので、もはや映画を作ろうという気持ちで挑みました。ただ可愛いだけの物語にならないよう、アクションなど色々とやりたいことを詰め込み、かなり大きな規模の作品になりました。
1日で撮れるのはわずか2秒程度のことも。企画が始まった当初は、本当に完成するのかと思うほど不安があったので、終わった時はやりきった感じがしました。ストップモーションのよさは、物の質感や手触り感がダイレクトに観客に伝わるというところ。ストップモーション特有の小さな可愛い世界観を意識して、キャラクターのサイズを小さめに制作したり、手作り感満載なマリーランドを目指して制作しました。
何回も見てもらえる作品を目指して
見里:作品の中では特にキャラクターの動きに注目していただきたいですね。クロミの頭巾に描かれているドクロとクロミの表情がシンクロして一緒に変わっていたり、マリーランドの住人一人一人の表情、舞台セットまで、画面の隅々まで心血を注いでいます。
1回見て物語を追うだけだと気づかない部分もあると思いますので、何回も見て楽しんでもらえると嬉しいです。また、躍動感ある映像やハリウッド映画にも負けないような作りを目指した演出など、どこまでも挑戦した作品なので、年齢・性別を問わず、世界中の大勢の人たちに受け入れてもらえる作品になるといいなと思います。

Netflixシリーズ 『My Melody & Kuromi』
マイメロディ50周年&クロミ20周年のアニバーサリーイヤーに贈るストップモーションアニメ作品。マリーランドで巻き起こるマイメロディとクロミの新たなアドベンチャーストーリー。2025年7月24日(木)、Netflixにて世界独占配信。
©’25 SANRIO 著作(株)サンリオ
装苑2025年7月号掲載