映画『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』に集った
多彩なクリエイターたちの表現とメッセージ

魔夜峰央による漫画を2019年に実写映画化し、その「愛のある埼玉ディス」と、実写映画独自の世界観の作り込みが大きな話題を呼んだ映画『翔んで埼玉』が、この秋にパワーアップし『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』としてカムバック! 原作の耽美的な世界をみごと実写に落とし込んだ主演のGACKTさん、二階堂ふみさんのお二人と、衣裳デザインを手がけた人物デザイナーの柘植伊佐夫さんが本作で再び集結している。多彩な表現チャネルを持つ3名のクリエイターが語る、本作のことや表現について。

今回は装苑ONLINEだけのお二人のポートレートを特別にお届けします!

photographs: Bungo Tsuchiya (TRON), Jun Tsuchiya (Costume, B.P.B.) / styling: Rockey (GACKT), Eri Takayama (Fumi Nikaido) / hair & makeup: Kouta Tanabe (GACKT), Mariko Adachi (Fumi Nikaido) / models: GACKT, Fumi Nikaido 

『装苑』2024年1月号掲載

『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』
2019年に公開され、大きな話題となった映画『翔んで埼玉』の続編。東京都民からひどい迫害を受けていた埼玉県人は、麻実麗率いる埼玉解放戦線の活躍によって通行手形を撤廃し、自由と平和を手に入れた。日本埼玉化計画を進める麗は、埼玉県人の心を一つにするため越谷に海を作ろうと計画。白浜の砂を求めて和歌山へと向かうが、関西にもなんと地域格差と通行手形制度が存在していた。「日本大阪化計画」を進める大阪府知事の陰謀は、日本全土を巻き込む東西対決へ発展していく──。武内英樹監督、GACKT、二階堂ふみ、杏、片岡愛之助ほか出演。全国公開中。東映配給。©2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会

何か表現したいことがあるなら、それはもうギフト!

──GACKTさんは音楽、演技、ゲームやバラエティ、舞台と、幅広いフィールドで活躍されています。二階堂さんは写真家としても活動し、近年ではアニマルライツへの取り組みから、ファッションブランド、カポックノットとコラボレーションをされました。お二人の多彩な活動の源泉にあるものはなんでしょうか?

GACKT ボクはたぶん、あまのじゃくなんですよ。ミュージシャン“なのに”と言われることが嫌で、そこを“だから”という言葉にどうしても変えたい。常にステージで表現しているボーカリスト“だから”演技もできる、というように。ライブも、こうあるべきという制限に従うのではなく、頭の中のイメージを具現化することで、見た人が味わったことのない感動を覚えてくれるはずだと信じて、ずっとやってきました。総じて一番の原動力は、誰かを驚かせたいという気持ち。予想は裏切る、期待には大きく応えるというのが、ものを作る際の指針になっています。

二階堂ふみ(以下、二階堂) アニマルライツのことで私ができることはごくわずかなのですが、もしも、私の存在を通じて世界の見方が変わる方がいれば、発信する意味があるなという思いです。表現には幅を設けなくていいと思っていて、一つに絞るかっこよさもありますが、どちらかといえば様々なことに触れて柔らかくありたいほうです。

──一歩を踏み出し、考えを具現化して何かを表現するには勇気も必要ですね。

GACKT そうですね。でも、自分の中に確たる表現したいものがあるなら、それは形にすべきだと思います。それがあること自体が、ギフトなのだから。その与えられた贈り物を自分の中だけに閉じ込めておくのは、ギフトを持っていない人に対する冒涜ですらある。行動には労力もお金もかかるけど、大抵のことは、もがけばなんとかなります。誰かと違う考えやアイデアで行動の基盤になるものを持っている人は、それを全うする義務がある。世間に受け入れられるかどうかも関係なく、大切なのは、自分が表現するということです。

二階堂 これは私の実体験なのですが、私がいなくたって地球は回るし世界が変わらないって思えば意外と行動できちゃいます(笑)。それに時間は有限であることも事実。人はいつ、どうなるか分からないですから、好きなだけくすぶったら、ちゃんと自分のタイミングでやってみることも必要です。やりたいけどやれない、みたいなフラストレーションも原動力にできると思いますよ。

──ありがとうございます。お二人が出演する本作『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』は、まさに多くの創造性が爆発しているように見えました。

GACKT そう言ってもらえると嬉しいですね。これは大人の悪ふざけが詰まった映画で、各部署にこだわりの強い変な人が集まっていたから、ボクは撮影現場を「劇場」と呼んでいました。むしろ舞台裏を撮ったほうがいいんじゃないのかと思うほど。

二階堂 だめです(笑)。

GACKT そう?(笑)面白いスタッフばかりだけど、皆、作品をこよなく愛していて、いいものを撮りたい・作りたいという思いが共通しているんですよ。

──衣裳についてはいかがでしょうか?

二階堂 前作でGACKTさんのマントさばきが素敵だったので、今回、私もマントを着させていただきました。柘植伊佐夫さんの衣裳を含めたキャラクターデザインは百美になるためのスイッチです。

GACKT アクションも多い作品なので、ボクは事前に、柘植さんに「腕がもっと上がるようにしたい」や「パンツの可動域は最低限このくらいを確保したい」などの相談をしていました。そして座った時も美しく見えるパンツをお願いしたところ、座るためのパンツと、立つ時のパンツの2種類を作っていただきました。妥協のない強いこだわりを感じました。


ガクト ● 1973年生まれ、沖縄県出身。バンド活動を経て、’99年にソロ活動を開始。シングル48枚、アルバム19枚をリリース。ミュージシャン、俳優、タレント、ポーカープレイヤー、実業家、慈善活動家、YouTuberなどとして幅広く活躍中。自らを〝表現者〟と呼び、枠にとらわれない多才ぶりを発揮する個性派アーティスト。男性ソロアーティストとしては、シングルトップ10獲得数歴代1位記録を保持している。2024年2月より、盟友のKを迎えた全国ツアー「LAST SONGS 2024 feat.K」を開催。

Fumi Nikaido ● 1994年生まれ、沖縄県出身。2009年『ガマの油』で映画デビュー。映画『ヒミズ』(’12年)、『私の男』(’14年)、『リバーズ・エッジ』(’18年)、『翔んで埼玉』(’19年)、『月』(’23年)、ドラマ「エール」(’20年)、「VIVANT」(’23年)など数々の話題作に出演するほか、写真家として『月刊モトーラ世理奈・夏』などを出版し、その多彩さは広く知られている。アニマルライツ×モードを掲げ、’22年と’23年に、カポックノットとのコラボレーションアイテムを発表した。

GACKTさん着用:ジャケット、中に着たTシャツ、パンツ、ベルト、シューズ すべて参考商品 HARAJUKU VILLAGE (TEL:03-3405-8528)

二階堂さん着用:クロップト丈のシャツ¥37,400 ジョン ローレンス サリバン(TEL:03-5428-0068)/レースのパンツ¥48,400、レースグローブ¥13,200 アヤーム(MAIL:info@a-y-a-m-e.com)/ピアス¥8,800 グレイ/その他 スタイリスト私物

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