6月21日から6日間の日程で開催された2023年春夏パリ・メンズ・ファッションウィーク。今期はコロナが収束する中、リアルなショーとプレゼンテーションが大幅に復帰し、公式カレンダーの84ブランドのうち、デジタル発表にとどまったのは6ブランドのみ。特に日本勢の活躍が目覚ましく、パリがファッションの国際都市として活気を取り戻したシーズンになった。
KIDILL
偏愛を込めたキディルのホラーなプレゼン
昨年1月にパリコレ公式参加となったキディルだが、コロナ禍で渡仏を断念。今回は満を持しての初のオフィシャル・プレゼンテーションとなった。
「ようやく世界的にコロナが収束して、このタイミングを逃したくありませんでした。今回はプレゼンでしたが、後々はランウェイに切りかえてやっていくと思います。挑戦したいですね。続けていくしかないです」とデザイナーの末安弘明。
SS2023のキディルのプレゼンテーションより。©B.P.B. Paris
コレクションに込めたのは、10代から20代にかけての最も多感な時期に惹かれたもの。その中にはパンクミュージックやアンダーグラウンドなカルチャーに加え、『吸血鬼ノスフェラトゥ』『カリガリ博士』『サスペリア』などの昔のホラームービーもあった。
「自分は何が好きだったのかを一度振り返ってみようと思いました。パンクミュージックが大好きで、オールドのホラームービーも好きだったんですよね。それを掘り起こして今の自分なりの方法で服を作ってみたい、とうのがあって。でもパンクは昔から脈々と受け継がれているので、その道から外れることはしたくなかった。ファスナーやタータンチェックなどのコードを押さえつつ新しさを与えたい、というのがありましたね。ヘアメークだったりキャスティングだったり、全体のムードで今のパンクを作っていきたいというのが、一番やりたいことかもしれないです」
デザイナーの末安さん。プレゼンの会場にて。©B.P.B. Paris
スケボーをする少年たちのプライベートビデオからもインスピレーションを得て、シューズにはフィレオ(PHILEO)とのコラボ・スニーカーを使用。アーティストたちが手がけたサイケ調モチーフや花のプリントもあり、古いシャンデリアの素材で作った血塗られたイメージのネックレスなど、強いインパクトを放つアクセサリーも。デザイナーの究極の偏愛が詰まったコレクションである。
Text : B.P.B. Paris