「プルミエール・ヴィジョン・パリ」2024-’25年秋冬シーズンより。
世界最大規模を誇る服飾素材の見本市「プルミエール・ヴィジョン・パリ(以下PV)」の2024-’25秋冬シーズンが2023年7月4日から6日まで開催されました。
年2回、パリ・ノール・ヴィルパント見本市会場で開催されるPVは、生地を中心に、繊維、付属品、レザー、テキスタイルデザインなど、ファッションを取り巻く様々なものを取り扱う見本市です。国際色が豊かなのもこの見本市の特徴で、今回の7月展ではフランス国外からの来場者が70%を占め、減少していたアジア勢の復帰により、95か国から25,117人の来場、1,315社の出展を記録しました。
トレンドブックを扱うコーナも人気。
変容するファッッション界の課題に応えるべく、これまでもエコレスポンシブル(環境への責任)をテーマに掲げてきたPVは、新たな取り組みとしてデッドストックを扱う専門業者を導入。アパレルブランドは資源の再利用、サプライヤーは過去の在庫品の販売という双方のニーズに合う解決策を促しています。
また、より透明性の高い資源利用のための新たなサステナブル・プログラム「ベターウェイ(a better way)」をローンチ。出展社の価値を高めることを目的に、社会的な取り組み、トレーサビリティ、製造プロセスなどの評価基準を示すピクトグラム(絵文字)を290社のブースに掲示しました。
高級ブランドの未使用素材を販売するオンラインプラットフォーム「ノナ・ソース(Nona Source)」のスタンド。2021年にLVMHによって開設され、高品質素材を低価格で提供していることから、利用する若手デザイナーも多い。
毎回PVが発信するシーズントレンドは、ファッション界の動向に影響を与えているといわれていますが、プルミエール・ヴィジョン・モード委員長のデゾリナ・シュテール氏は「エコレスポンシビリティは、ファッションにおける新たな挑戦である」と述べ、今季トレンドを『ソーラーヴィジョン』『増大するエレガンス』『自然のインスピレーションとデジタルな媒体』の3つのキーワードで解説。再生可能で普遍的な太陽のエネルギーから発想されたイエローやオレンジがキーカラーとなり、消費の削減を促す高品質なテキスタイルの重要性、自然からのインスピレーションや自然界との共生などが挙げられました。
太陽を思わせる展示があちらこちらに。
ラグジュアリー産業においては、2019年にシャネルが「アトリエ デ マチエール(Atelier des Matières)」を立ち上げ、高級ブランドのデッドストック素材や売れ残った製品を再生・活用するなど、サーキュラーエコノミー(循環経済)とアップサイクルへの関心が高まっています。贅沢に無駄はつきものですが、今後ますます「いかに無駄をなくすか」が焦点となりそうです。
Photographs:濱 千恵子 Chieko Hama
Text:B.P.B. Paris