No.14 /学校で服が買えるなんて、聞いてない。——装苑エディターの編集日記

学校で服が買えるなんて、聞いてない。

文化学園の館内では、定期的にファッション系アイテムのポップアップストアが立ち並んでいます。入社前、編集部見学のときにご好意でキャンパス内を案内していただき、「ここでお弁当買えますよ」「このパン屋さんは焼きたてです」と紹介されながら、私は正直、そっちよりもずっと気になっていました。(まだパン屋は行けてません。すみません!)

だって、学校で服が売ってるなんて、聞いたことあります?

文化学園の屋内、購買部と食堂の間の通路沿いにある出店スペース。いわば通学路の一部のようなその場所に、ある日ふいに服や小物の販売ブースが現れて。まるで“ガラス越しのマーケット”みたいな光景に、最初に通りかかったときからずっと消費者マインドを奪われていました。

お昼休憩から編集部へ戻る途中に横目で通りかかっては、「今日は何やってるんだろう?」「学生向けだろうし、さすがに大人には厳しいか…?」と勝手に自己完結しながら、でもずっと気になっていたんです……!

そんなある日、急遽「黒くて」「丈が長くて」「前開きで」「肩まわりが広くて」「お値打ちな」服が必要になる場面が訪れました。——そんな場面、人生で何回あるんだよ、と自分でも突っ込み済みです。

買いに出る時間もない。探すにも条件が限定的すぎて難しそう。詰んだか?と思った瞬間、「あっ、文化学園で買えるかも」が頭に浮かびました。まるで天啓。

翌日のお昼休み、ついにあの“気になっていたスペース”へ足を踏み入れました。並ぶのは学生作品から古着まで幅広く、まるでセレクトショップというよりバザール。さっそく黒い服をひたすら探し、一枚ずつ丁寧に検分していきました。

そして、すべての条件を満たす運命の一着と出会えました。着丈、前開き、シルエット、素材感、値段……完璧すぎる。もちろん即買いです。

まさか職場で、奇跡的に必要な服と出会えるなんて。

ありがとう文化学園。ありがとうございます、案内してくれた人事厚生課のIさん。ありがとう優しいお店のおじさん。

後日その服を着ていたら、友人たちに「それ、かっこいい……!」と褒められて、心の中でにんまりと笑みを浮かべたことは余談です。


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編集者K

ファッションや衣装に宿る「語らない物語」に惹かれます。よさこいや舞台など、日常の外にある衣装の文化を深掘りしていきたい。

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