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「マリメッコ」2023年春夏コレクションと、
クリエイティブディレクター、レベッカ・ベイのインタビュー

2023.03.16

クリエイティブディレクター、レベッカ・ベイが思う、この先のクリエーション

レベッカ・ベイさん。ランドン・メッツさんとのコラボレーションのドレスの前で。

昨年ブランド設立70周年を迎えたフィンランド発のブランド「マリメッコ」。2020年秋からクリエイティブディレクターを務め、2022年スプリングコレクションから本格的にディレクションに携わるレベッカ・ベイさんに、「マリメッコ」のクリエイティビティについて伺った。

―今回の来日は何回目ですか?

多分40回目ぐらいになるでしょうか。

―では日本では多くの場所を訪れているのですね。

日本の素敵な場所はまだまだあって、行きたい所はたくさんあります。

―レベッカさんは2022年から「マリメッコ」のクリエイティブディレクターですが、それまではどのようなことをなさっていたのですか? 

父が美術関係のディレクターということもあって、その影響で学生時代は美術史を学んでいました。最初は私も展覧会のキュレーターなどを目指しましたが、そのうちに彫刻やドローイング、写真などにも興味が出てきたのです。ファッションスクールの入学の面接のときに、デザインをしたいわけではなくデザインのプロセス、トレンドやカラーの予測に興味があることを伝えました。実際ファッションの世界で働くようになった時もそのような分析をやっていました。2005年「H&M」から新しいブランドがスタートすることでそこに携わり、その後GAPのグローバルクリエイティブディレクター。そしてニューヨークのユニクロのイノベーションセンターに。それぞれ違うブランドでしたが、素晴らしい服を作り多くの人に届けるということが共通点でしたね。今、関心を持っているのは、人々はなぜ特定の物に惹きつけられるのかということと、それぞれの人にふさわしいものがきちんと提供できるのかということです。

―2017年から「マリメッコ」の取締役ですが、その後役職を降りて現職に就いたのはどのような理由からですか?

もちろん兼務が難しかったということなのですが、取締役でいたことで、「マリメッコ」のチームのことをよく知ることができたのは、今の私にとってはとてもプラスになりました。

―クリエイティブディレクターについて3年になりますが、目に見えて変わってきたことは何ですか?

「マリメッコ」は70年以上の歴史があり、プリントのアーカイブは3500以上もの種類があります。ヘリテージに積み重ねていくことは大事なのですが、きちんとレディ・トゥ・ウェアを強化しなければいけないということも思っています。ドレスをアートワークのキャンバスと見立てて服を作ることや、人に注目されるシルエット作り、そして着る人にとってふさわしいと思えるものを作らなければなりません。
クリエーションの中に統一性や一貫性をもたらすこと。サイズやフィット感でマリメッコらしさを出すこと。今それらを提供することに注力していますが、実際に手ごたえを感じています。重要なことは、シーズンごとに提案する服を分類して提案することです。その中の一つには、アーティストとのコラボレーションがあります。アーカイブとは別に、将来的にアイコンになるようなものを生み出すことを目標としています。

―アーカイブコレクションが好きな人や新しいデザインが好きな人など、消費者の方はそれぞれだと思いますが、実際にどのようにアプローチしていますか?また、消費者とのコミュネーションはどのようにとっていますか

アーカイブのものと新しいものは良いバランスで発表しています。アーカイブのものはアップデートすることで新鮮な柄が見えてきます。例えばブランドを象徴するケシの花柄の“ウニッコ”はスケール感を変えたりすることで、違う消費者にも手に取ってもらえると思います。コンサバティブな昔からのファンにも、そして「マリメッコ」を知らない若い人々にもアプローチできるのです。
消費者とのコミュニケーションは、各店舗やポップアップなどのイベントで生の声を聞いています。インスタグラムでのアンケートも参考になりますね。クリエイティブディレクターとして、消費者の方が求めているものだけを提供するのではなくて、新しいものや見たことのないものを提案することが大事。そのためにトレンドをきちんと調べるのが必要です。昨日も東京でのリサーチを1日中していました。「マリメッコ」の将来のお客様のために、いろんなショップやギャラリー、美術館などに足を運び、現在のマーケットをリサーチしました。

―今回東京ではどこの街を訪れたのですか?

渋谷、表参道、原宿。ポップアップもたくさん見て、新しく出来た施設にも行きました。今何が流行っているかではなく、次に何が流行るのかを調べるためです。

―今シーズンもコラボレーションをしていますが、日本人のアーティストやクリエーターで気になっている人はいますか?

日本人で注目している方はいます。言えませんが・・・。
常にコラボレーションの相手は探しています。ポイントになるのは、価値観を共有できたり、共通する美意識を持っているということでしょうか。
春からはIKEAともコラボレーションをします。バスアイテムでサウナに特化したものです。IKEAとは今回のコンセプトを作るにあたって、日本の温泉の文化に注目しました。フィンランドのサウナと日本の温泉。そこに共通項を見つけたのです。そして今回のコラボレーションでは新しいプリントも開発しました。

サステナブルについて

サステナブルの取り組みについてお伺いします。マリメッコだからできること。マリメッコがやらなくてはならないことを教えてください。

マリメッコだからできることは、プリントの作業をヘルシンキですることです。フィンランドの工房では年間100万メートルのプリントをしているのですが、藍の原料などのノンケミカルな染料を使うなど、サスティナビリティに直結したようなことに取り組んでいます。
この先、やらなければならないことは、革新的な素材作りです。それと、新しいビジネスモデルを市場に提供することです。例えば残布をもう一度使って商品を作るというもの。長期的には、お客様が使ったものをもう一度引き取って、新しい製品を作るということも視野に入れています。

―中古品やヴィンテージアイテムを扱うマーケットプレイスを開設したということですね?

はい。それが私たちの新しいビジネスモデルです。

―今回日本の市場を見て、日本ならではのアイディアは思いついたでしょうか?

「マリメッコ」の日本での展開は17年前からなので、確立した地位を得ていると思います。ですが、レディ・トゥ・ウェアよりホームコレクションのほうが印象に強いのではないでしょうか。服のイメージがまた浸透していないのです。逆に言えば、そこに可能性があると思います。百貨店とのコラボレーションやポップアップ。新しい消費者にアピールしたいですね。そして2024年には“ウニッコ”のプリントが60周年を迎えるので、そのためのアイディアもいっぱいあります。

―日本人は北欧のデザインが大好きで、生活に取り入れている人が多いのですが、北欧の方々は日本のデザインは好きですか?

日本の方々が北欧のデザインが好きなように、デンマークやフィンランドの人々も日本のデザインは好きです。自然を取り込む、卓越したクラフツマンシップ、素材を大切にする、物に対する美意識、合理的でありながらそこに美を添える・・・。共通点が色々ありますから。

―2023年春夏のコラボレーションについて、柄や色などに込めた思いを教えてください。

どのコレクションも次への関連性を持たせながら続けていくのが理想です。今回はランドン・メッツさんとコラボレーションをしています。ドレスをキャンバスに見立てるというクリエーションがきちんと出来ていると思います。プリントの施し方に特徴があって、フロントからサイドへと横断していくアートワーク。シームで分断されずにあしらっているので、ドレスが並ぶと一枚の絵のような、一連の作品のように見えます。
それ以外のコレクションも、大胆でハッピーなもの。それらをシンプルなフォルムのドレスに描いています。過去を見据えながら未来を見ていくコレクション。馴染みのあるプリントをモダンに昇華して洗練されたイメージにしています。

Rebekka Bay
デンマーク出身。大手アパレル企業でクリエイティブディレクターやブランディングなどを務め、2017年に「マリメッコ」の取締役に就任。その後2020年より同ブランドのクリエイティブディレクターに。

photographs : Josui Yasuda (B.P.B.)

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