
ショーの様子
3月3日、文化服装学院 ファッション高度専門士科による卒業ファッションショーが開催された。会場には学生の集大成であるショーを見届けるため多くの観客が訪れた。学生が主体となるこのショーは、世界年間売上1位を誇る一大ビューティー企業であるロレアルグループの中核を担うヘアブランド L’OREAL PROFESSIONALのサポートを得ている。


厳しい学内選考を勝ち抜いた12名の学生デザイナーは各自のブランドコンセプトをもとに8体以上のプライベートコレクションを1年間かけて制作。また、ポートフォリオ用のファッションシューティングを含め、第一線で活躍しているサロンのヘアクリエイターの方々と組み、共に作品を作り上げた。




装苑ONLINEでは今後の活躍に期待したい12名の学生デザイナーにそれぞれの作品についてと卒業後の未来についてうかがった。
photographs : Jun tsuchiya(B.P.B.)
12名の学生デザイナー紹介
平井望愛×ZEST
コレクション名:I愛DOLL


幼い頃から憧れてきた“可愛いアイドル”をテーマに、自分が思う理想像を全力で詰め込んだコレクションです。各ルック、メンバーカラーに合わせてオリジナルの惑星をイメージし、素材やデジタルプリントでデザインに反映しています。水色の“アワアワした惑星”は泡のような質感になるようスカートをもこもこに仕立て、オレンジの“トゲトゲの惑星”はコンピューターニットで質感から作り込んでいます。テーマに合わせて、ヘアメイク・音響・照明も“可愛い”に全振りしたカラフルで盛りだくさんな演出にしています。映像は友人に依頼し、私が制作した惑星を3Dに落とし込み、回転していく映像に仕上げました。また、インターン先でのご縁から、アイドルグループ「NEFRALISE」にウォーキングと音源のご協力をいただきました。卒業後は会社で働きながら衣装制作を続け、いずれは独立して、アイドル衣装制作一本で活動していくことを目指しています。【Instagram:@25chan_noa】
担当サロン ZEST
WEB:https://www.web-zest.co.jp/sp/
南光葉×レセゾン
コレクション名:K.E.R. -Kinetic Exo Relics-


「K.E.R. -Kinetic Exo Relics-」をテーマに、変化する未来都市を旅するための“身体拡張型の遺物装備”を表現しました。ミリタリー×機能性×昆虫という自分の好きな要素を掛け合わせ、素材の伸縮性や撥水性といった機能面に加え、肌触りや光沢で昆虫らしさを取り入れています。さらに機能服のパターンを応用することで運動性を確保し、ディテールやステッチでミリタリーの要素を加えました。ショーの音楽は自分で制作し、ヘアメイクもサロンと綿密に打ち合わせを行い、各ルックにキャラクター性を持たせています。ショーでは映像や照明も重要な要素だと感じていたので、信頼している友人とともに空間演出を作り上げました。今後は修行期間として、さらに成長していきたいと考えています。【Instagram:@koyo.minami】
担当サロン レセゾン
WEB:https://les-saisons.jp/roppongi-hills/
添田恵愛×1001mille
コレクション名:Boo Bitch


—胸の内、腹の中 隠していたホントの想いが突き破ってくる💢子供のころに感じたキラメキは自分のままで居させてくれる✩.˚
我がままに、やりたい放題♬.゚—
好きなものを素直に表現、感情も隠さないというテーマで制作をしました。シルエットやディテールにトゲトゲした質感を取り入れて、感情や思いが内面から外に飛び出ている雰囲気を表現しています。また、“肌”のようなテキスタイルにこだわり、シリコンなどを用いて素材から制作しました。また、幼い頃はロリータファッションが大好きで、ツインテールばかりしていたのでシルエットはロリータファッションを参考にしています。レディース全7体はツインテールかツインアレンジにしているのもポイントです。メイクは幼い頃から影響を受けてきた海外のビューティー表現や、特殊メイクの要素を反映し、ロレアルさんの協力によって理想のビジュアルになりました。音効では、2年生の頃から絶対に弟にギターを生演奏してもらおうと思っていたので、実現出来てとっても嬉しかったです!これからも物作りを続けて、好きなアーティストにいっぱい着てもらいたいですし、海外でも何か経験を積みたいなと考えています。【Instagram:@a.iiiirrr___】
担当サロン 1001mille
WEB:https://www.1001mille.com/
大西千晴×ZENKO
コレクション名:LOCO


LOCOは、ゲームに登場するような“異世界”を設定し、そこで生きる人々、つまり“プレイヤー”を想像することから制作を始めました。狂気を孕んだ異世界に生きる彼らの服を素材や加工で表現に落とし込んでいます。例えば、羊毛フェルトで生命体のように見えるファーを一本一本手作業で制作したり、皮革の端材をランダムに取り入れています。ヘアメイクでは、各ワールドのキャラクターに合わせた個性的な表現をお願いしました。砂漠の民族をイメージしたルックでは、太陽を感じさせるそばかすや日差しで赤くなった頬、民族的なフェイスペイントに、ラフに束ねたような力強いヘアスタイルにするなど、私のコレクションの世界観を理解し全力で向き合ってくださった美容室のZENKOさんには本当に感謝しています。これまでの制作では自分のやりたいことに蓋をしていた部分もありましたが、今回が最初で最後のショーかもしれないと思い、本当に好きなものをすべて詰め込み、妥協せず向き合いました。多くの方の支えによって完成したコレクションであり、見てくれた誰か一人でも「いいな」と思ってもらえたら嬉しいです。【Instagram:@oocc2.5】
担当サロン ZENKO
WEB:https://www.zenko-hair.com/
水澤涼介×grace
テーマ:Nauseatingly romantic


学生生活の集大成として「自分ってどんな奴なんだろう?」を見つめ直し、工業地帯で育った記憶や思い出を、刺激を受けた文学や音楽と織り交ぜて服として提案しました。テキスタイルやシルエットも工業的な素材や当時の景色から着想を得ています。また、アニメや漫画への興味から、“キャラクター”として立つよう、ヘアメイクは二次元的なシルエットや装飾で構成しました。今年は思うようにいかないことも多く、自分の限界を感じていましたが、インターン先で、デザイナーさんに『まず自分自身を理解しなさい』というお言葉とデザインの発想方法を親身になって教えていただきショーとして形にできました。僕は泥臭く迷いながらも”戦って戦って戦ってやる!”と進む過程に感じる美しさやエネルギーが好きです。今回はそれを表現できてよかったです。今後は服だけに留まらず僕らしいコンテンツを生み出したいです。【Instagram:@ryousuke.mizusawa】
担当サロン grace
WEB: http://www.salon-de-beaute-grace.com/
森川日捺×EIGHT
コレクション名:Niah


テーマは「dessert」。幼い頃のパティシエールになりたかった夢を重ね、デザートをモチーフにしたコレクションです。実際にモチーフにするデザートを食べながら制作を行い、デザインに落とし込んでいます。ランウェイではコンセプトをダイレクトに伝えるため、大きなフォークを自作し演出に取り入れました。また、素材にもこだわり、プリントの上にストーンで柄を重ねたり、発泡プリントと箔プリントを組み合わせるなど、実験を重ねて質感を作り込みました。細部ではフリルも巻きロックを使わず、すべて三つ折り端ミシンで仕上げています。パティシエールはただ作るだけでなく人に振る舞う存在だと考え、ショーを通して見た人が幸せな気持ちになれるよう意識しています。制作自体もとても楽しく、自分のやりたいことを素直に表現できたと感じています。今後も衣装制作は続けていく予定なので、ぜひInstagramをみていただけたら嬉しいです!【Instagram:@morico_8】
担当サロン EIGHT
WEB:https://eights8.co.jp/
小川愛莉×CRAFT
テーマ:Visualize your Aura


目に見えない“オーラ”を、洋服という見える形で表現することから本コレクションは始まりました。そこから、太陽の光によって輝く月に着目し、“月光”をテーマに展開しています。オーラは人を引き寄せ、周囲にも影響を与えるもの——そんな力を、服に重ねました。服を纏うことで自分自身が輝くという考えを軸に、音響・映像・照明・ビジュアルまで一貫して構成しました。各アイテムは“着るオーラ”として、内面や存在感を引き出すことを意図しています。ヘアメイクはシルバーラメや銀箔を基調に、黒で引き締めることで光と影のコントラストを強調。これまで7年間、洋服について学ぶ中で、服には心を高揚させ、自信を与える力があると実感してきました。今後はその魅力を作り手として多くの人に届けるため、まずはアパレル企業で経験を積み、最終的には自身のブランドを立ち上げることを目標としています。【Instagram:@airi______.2 】
担当サロン CRAFT
WEB:https://www.total-beauty-craft.com/
柴田隼摩×ASCH
コレクション名:Light blur


スローシャッターで撮影した時に写る“光のブレ”をテーマにしたコレクションです。光のブレの流動感や鮮やかさをデジタルプリントと曲線的なパターンで表現しました。ショーで歩く姿をイメージし、風でなびく軽やかな素材や色の見せ方にもこだわっています。CADでスキャンしたパターンに合わせて柄を一つひとつ作ったのも初めてで、ワクワクしながら制作しました。移動中に、急いで撮った写真はブレてしまい「失敗しちゃった」と、ネガティブな感情を持っていましたが、ある日、景色が混ざる瞬間や夜景の光が伸びている写真の美しさに気づきました。そんなネガティブな出来事をポジティブに捉える大切さを伝えたくてこのコレクションを制作しました。たくさんの方に支えていただき完成したショーで、本当に感謝しています。卒業しても個人制作は続けて、自分のコレクションをショーで発表するのが今後の目標です。【Instagram:@_hayuma_】
担当サロン ASCH
WEB:https://www.asch.jp/index.html
宮﨑奏羽×フローレン
コレクション名:KaNaU


ライブイベント「Coachella」から着想を得たコレクションです。心の底から歌を叫ぶアーティストがくれる“羽”をイメージしていて、これまで自分を支えてくれた全てのパフォーマーへの敬意と、その羽で羽ばたいていきたいという想いを込めました。
今回はDIVAとDANCER、2つのルックを制作。DIVAでは羽を多様な形で表現し、マントやグラフィティ、ラインストーンなどで圧倒的な存在感を形にしています。DANCERでは音が羽になる瞬間をイメージし、揺れやドレープで動きを可視化。実際に踊る機能性も重視しました。ショーの演出では、SNSでダンサーを集めてステージ上で踊ってもらいました。私にはダンスの経験はないのですが、MOEちゃんに、DIVAのこの部分を見せたいと言ってショーの流れを話し、振りを考えてもらいました。すごく大変だったと思いますが、DIVAとDANCERが溶け合って想像を遥かに超えるショーができ、ダンサーのみんなには感謝の気持ちでいっぱいです。今回のショーは本当に多くの方に支えていただきました。これからも学び続けながら、自分のクリエイションを発信していきたいです。【Instagram:@canau_canau @kanau_feather】
担当サロン フローレン
WEB:http://www.lagoon-hair.com/
ユ ホンジュ×ティ・ケー・エス
テーマ:WONeRLAND


テーマは「異質の共存」。相反するものが混ざり合う、現実と理想の交差点を着想源にしています。学校での生活と個人的な生活、その境目を軸にしてデザインに落とし込みました。最後のコレクションということで“やりたい放題”でいこうと思い、自分が好きなブランドを片っ端から調べて、コレクションを分析・再現する“モードコピー”をするところからスタートしました。そこから仮縫いを重ねて、一つずつルックの形やデザインを決めていきました。普段も着用できるカジュアルさをベースにしつつ、違和感のない派手さを加えています。好きなものや、やってきたことを全部詰め込みました。好きなブランドの研究や、自分のやりたいことをとことんやりきって、1年間で27アイテム制作。振り返ると、本当に楽しくて有意義な一年だったと感じています。【Instagram :@jujujujujy_】
担当サロン ティ・ケー・エス
WEB:https://tks-beauty.tokyo/salon/claude-monet/
ジョン ソヨン×VISAGE
コレクション名:傷の治療


欠乏から生まれる中毒性や自虐への依存、その中で生きながらも、やがて傷を癒していく。そんな過程をテーマにしたコレクションです。ここでいう傷は、外側のものと内面に抱えるもの、その両方を指しています。ガーゼや安全ピンを用い、縫製に頼らずニードルパンチで素材を叩きつけるなど、実験的な手法を取り入れました。紐やハーネスで血管や内臓を想起させる表現も加えています。ヘアメイクでは、傷跡や血管が浮き出るような青白い肌、無彩色のグラデーション、裂けた口元や涙の痕跡など、どこか憂いを帯びた印象に仕上げました。2024年から向き合い続けてきたテーマであり、「卒業」としてふさわしい完成度を目指しました。社会の中で経験を積みながら、将来的には日本で自身のブランドを展開することを目標にしています。今年中には個展も予定していますので見に来ていただけたら嬉しいです。【Instagram:@hidahomu_official】
担当サロン VISAGE
WEB:https://visage.co.jp/
桂日向映×総美
コレクション名:HINAE KATSURA


テーマは「My green glass」。直訳すると「私の青い芝」です。隣の芝が青く見えても、やはり自分の芝が一番だというメッセージを込めています。自分の良いところに目を向け、「好き」と思える非現実の世界に迷い込む心地よさを感じてもらえたらと制作しました。美容室で自分が主人公のように感じられる感覚が好きで、ケープをイメージしたドレスや髪の毛を装飾の一部として用いています。ヘアメイクでは人形が頭から生えているデザインにこだわり、可愛く仕上げていただきました。このコレクションは、等身大の自分を映したものです。人に何かを伝えるときは、本当に思っていることだからこそ、広げても一貫性がでると思っています。とにかく作ることが好きなので、今後はファッションを軸に、絵やアニメーション、ヘッドアクセサリー作りなど、様々なことに挑戦していきたいと思っています。私が作るもので、誰かがファッションに踏み出すきっかけになれたら一番嬉しいですし、服や絵で喜んでもらえることが何よりの生きがいなので、それをずっと続けていくことが目標です。【Instagram:@hinaelien @hinaekatsura_official】
担当サロン 総美
WEB:https://www.banet.jp/
日本ロレアル株式会社
プロフェッショナル プロダクツ事業本部ブランドエクスペリエンスマネージャ
千葉龍太郎さんコメント
今年はとても楽しいショーでした。装飾的なお洋服の表現が豊かで面白く、学生の皆さんがそれぞれ明確なテーマを持ち、それをしっかりクリエイションに落とし込んでいたのが印象的です。全体的にボリュームのある服が多い一方で、実は細部まで丁寧に作り込まれている点も際立っていました。そうしたディテールに対して、サロン側も技術力のあるチームを当てることで、全体の完成度をうまく引き上げていたと感じます。服がデコラティブな分、ヘアはコンパクトにまとめつつ、編み込みや逆毛などクラシカルな技術を織り交ぜることで、衣装と自然にリンクしていました。また昨年はメイクでアクセントを加える傾向が強かったのに対し、今年はヘッドピースやアクセサリーなど、ヘアで表現を広げるチームが多かったのも印象的です。メイクは全体的にマットで、口元を抑えつつ目元にインパクトを持たせるバランスが今年らしさとして感じられました。今回も複数のサロンからクリエイティブな若手が参加していましたが、特に今年は誰か一人が主導するのではなく、それぞれがフラットな立場で関わるチームづくりが見られたのが特徴的でした。若手の美容師が自分のクリエイティブと向き合い、表現する機会として、とても良い場になっていると感じます。物価上昇の中で美容業界も変化が求められていますが、だからこそ、それに見合う技術や提案力を持つ美容師がこうした場から生まれていくのではないかと思います。今年も志の高い学生たちと関わることができ、とても良い刺激をいただきました。
L’OREAL PROFESSIONAL
WEB:https://www.loreal-professionnel.jp/top.html
Instagram:@lorealpro_education_japan
2025年度 ファッション高度専門士科卒業ファッションショー Supported by L’OREAL PROFESSIONNEL
文化服装学院 ファッション高度専門士科
4年間で、クリエーション・生産関連・ファッションビジネスについて幅広い知識と技術を習得。卒業時には大学卒業と同等の高度専門士の称号が与えられます。卒業生の多くはファッション界のスペシャリストとして高い評価を得ています。
WEB:https://www.bunka-fc.ac.jp/course/fashionkoukasenmon-katei/fashion-koudosenmonshi-ka/
Instagram:@bunka_kosen_official
L’OREAL PROFESSIONNEL 卒業ファッションショーバックステージサポート企画
「Future Talent Support PROJECT」とは
世界年間売上1位を誇る一大ビューティー企業であるロレアルグループ。その中核を担うヘアブランド「ロレアル プロフェッショナル」では若きクリエイターの育成を目的として、イギリスのセントラル・セント・マーチンズなど有名ファッションスクールの卒業ファッションショーや若手デザイナーのコレクションのhair&make-up Creationバックステージをサポートしている。日本では例年、スクール支援部門において文化服装学院が選出され、ファッション高度専門士科の卒業ファッションショーが支援の対象となっている。