映画『サマーフィルムにのって』 私たちとサマーフィルムにのって。 伊藤万理華 × 河合優実 × 祷キララ 2

―『サマーフィルムにのって』を鑑賞後、ラストシーンから新たに物語が始まるような感覚がありました。物語が自分自身に関係し、現実と地続きになるというのは三浦直之さんによる脚本の素晴らしさだと感じましたが、脚本を読んだ時、皆さんはどんな風にこの物語を受け止めましたか?

祷キララ(以下、祷):まさに私も、「ロロ」(三浦直之主宰の劇団。作・演出を三浦が務める)の舞台を見て感じていたのは、三浦さんは、物語として書かれている部分の先や裏を感じさせる言葉を紡ぐ方だなということでした。『サマーフィルムにのって』は、台本を読んだ段階で、すでにキャラクター全員が愛おしかったんです。言葉だけでも、これほど人物が生きていると思えるんだ!って。だからこそ物語の”先”が見えたんだと思います。本を読んで、ここにさらに役者達の色や温度が入ったら一体どうなるんだろう?と、怖くもあり、楽しみでもありました。

河合優実(以下、河合):台本をいただく前の企画書を読んだら「女子高生、時代劇、未来から来た男の子と映画を撮る」と要素が盛りだくさんで、これはどんな風にまとまるんだろうと思っていました。そこに少し不安もあったのですが、実際に皆で演じてみると、本の印象が何倍にも膨らんで立体化するような感覚があったんです。三浦さんは役者を想定して当て書きしたわけではないのに(注:河合さん、祷さんはオーディションで出演が決定)、どこまで人物像を思い浮かべてこの物語を書いたのか。脚本を書く人ってすごいと思いました。

伊藤万理華(以下、伊藤):私も、最初にキララちゃんと優実ちゃんに会った時「私が想像していたまんまのブルーハワイとビート板だ!」と思いました。撮影の間中、その予感通りにずっと楽しくて、もちろんお仕事ではあるけれど、ただただ夢中で映画作りをしている学生の感覚になったんです。私が高校時代にあまりできなかったことが、三浦さんの脚本で経験できたような気持ちになりました。

河合:衣装あわせ、キャストの顔合わせ、本読みと段階が進んでいく中で、「現実では絶対にないことが起こるから、映画って楽しいんだ」って、私も思うようになりました。子供の頃に見たファンタジー映画のように、純粋にわくわくできて観た人に夢を与えられる映画。これはすごく楽しいなって。

伊藤:そうだよね。普通ならちょっと恥ずかしいと思うような台詞でも、このキャラクターが言うなら分かる、と受け入れられて、それが余韻として心に残っていくーーそんな三浦さんの言葉の力は「ロロ」の演劇からも感じていたので、その部分をちゃんと映像にできるのかは、すごく考えました。あとは高校生達が映画作りをするという物語が自分自身に近いと思いましたし、それをやり遂げて未来につなげるという部分も、私は大好きです。

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