「舞台『刀剣乱舞』心伝 つけたり奇譚の走馬灯」で加州清光を演じる松田凌にインタビュー。3年の月日を経て、いよいよ座長の任に就く彼の覚悟。

マンガやゲームを原作としたいわゆる“2.5次元” 舞台は、次々と新作が生み出されている盛況な界隈だ。そのジャンルの中心かつ先頭を走り続ける、舞台『刀剣乱舞』。本シリーズに2021年の「舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-」で刀剣男士・加州清光役として初参戦した松田凌は、新作「舞台『刀剣乱舞』心伝 つけたり奇譚の走馬灯」でついに座長となる。演じる刀のように切れ味鋭い演技で多くの観客を魅了する彼が今、胸に秘めるものは——。

photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.) / styling : TAKURO / hair & make up : Kanako Furuhashi(LaRME) / interview & text : Mio Shinozaki

加州清光という存在は、返り血さえも自分の装飾にできる刀剣男士だと思っています。

松田凌(以下・松田):一つは、安心でした。刀剣男士は歴史を守る戦いをしていますが、我々役者は刀剣男士のごとく舞台『刀剣乱舞』の歴史を守らなければいけない。その舞台において加州清光という役を演じるにあたり、責任など大きなものを背負わなければいけないと感じていたんです。結果的に、集中力を一度も切らさず3ヵ月の公演を終えられてよかった。その余韻を味わう間もなく、大きな反響を様々な方からいただけたのはとても嬉しかったです。

松田:自分が俳優として活動させていただいている中で、一番大きな支えとなっているものがお手紙なんです。当時の公演は僕自身が役者活動10周年を迎えていた時期でもあり、新型コロナウイルスという目に見えないものと戦わなければいけない中、「少しでも多くの人に何かを与えられたら」と思いながら演じていました。そうして臨んだ公演の反響として、お手紙をたくさんいただいたんです。自分のことを知らなかった方々に、自分という存在を初めて知っていただけた機会でもありました。

加州清光に関しては、ミュージカル『刀剣乱舞』で彼を演じる佐藤流司くんという大きな輝きがありますが、僕の加州清光をまた違った輝きとして受け入れていただけたのかなと思えるお手紙をすごくいただいて。それは、とてもありがたかったです。僕自身はマンガやゲームが原作となっている舞台からしばらく離れていましたが、改めてそのど真ん中にある作品に出演させていただいたことにより、自分にとって二つ目の節目に入ったんだなと実感しました。

松田:加州清光含め、刀剣男士全体に対する印象が変わりましたね。それまでは刀剣男士に柔らかさやキラキラとした輝きを感じていましたが、目に見えるものだけが全てじゃないんだなと。地味で泥臭い積み重ねがあるからこそ、輝きが見えてくる。加州清光を演じるために、稽古の時からメイクチームの皆様と相談して、ウィッグの毛の1本やネイルの色味も細かく決めていきました。例えばネイルなら、同じ赤色でもビビッドなものより、ちょっとボルドーがかった色味がいいだろうと話していたんです。人を斬った時の血は鮮やかな赤より、少し黒みがかっている気がするんですよね。ネイルも、そういう色にしたかった。なぜなら加州清光という存在は、返り血さえも自分の装飾にできる刀剣男士だと思っているので。

衣裳一つとっても裏地や襟の立ち方など、見え方にはかなりこだわりました。そういう重なりがあるからこそやりがいを感じましたし、「刀剣男士たるには、ここまでちゃんとしなければいけないんだ」と思いましたね。危うくて儚くて美しい存在だと思いきや、とても強い存在なんです。加州清光は新選組の……諸説ありますけれど『刀剣乱舞』においては沖田総司の刀と言われていて、壬生狼(※新選組の異名)の血が存在に染み付いている気がします。僕はとてつもなく深い世界に飛び込んだんだな、という印象でした。

稽古中は、実際に巻きものを身につけて、仕草としてなじませるようにしていたんです。

松田:衣裳さんと相談させていただいて、どういうはためき方になるのかを大事にしていました。あまりにも布の動きが大き過ぎると殺陣がしづらくなるので、ボタンで留めてみたり。かといって全て固定してしまうと、衣裳に対して怠惰だなと思ってしまうんです。演劇のいいところは、“なまもの”を皆様に体感していただくこと。どうしたら美しく布が動くかを衣裳さんに相談しましたし、あとは、さばき方ですよね。仮に巻きものが手や刀に引っかかったとしても、それを舞台上で美しくさばくことが大事。そこをしっかり自分の所作にできていないと、加州清光は演じられないと思っていました。だから稽古中は、実際に巻きものを身につけて、稽古の段階から仕草としてなじませるようにしていたんです。そういう所作が本番でとっさに出るのは、大事なことなので。耳飾りのゆらめき一つも、機械感のあるゆらめきじゃダメなんです。少しの照明が反射するだけで、どこから見ていてもキラッと輝くようにしたかった。

自分は服飾が好きなんですけど、今回『装苑』で役を通して衣裳についていっぱいアピールさせていただけて、ありがたいですね。加州清光だけじゃなく刀剣男士自体それぞれが衣裳やメイクにこだわりがあるので、そういった部分でも楽しんでいただける作品だと思います。衣裳チームもメイクチームも、素晴らしい方々が揃っていますから。

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