心臓の病気のため、医師から余命を1週間と告げられた高校2年生の由茉と、残された由茉の時間を幸せなものにしようと奮闘する恋人の同級生、雪夫の7日間を映し出した映画『ハピネス』(全国公開中)。『下妻物語』を著した嶽本野ばらさんの同名の恋愛小説を原作に、映画『月とキャベツ』『花戦さ』などで知られる篠原哲雄監督がメガホンを取り、若手俳優の注目株二人、窪塚愛流さんと蒔田彩珠さんを主演に迎えて完成した。
憧れのロリータファッションを身にまとい、好きなカレーを食べて、大好きな人と過ごす。自分の意思で幸福な日々を選び取った由茉と、そこに寄り添い気持ちを受け止め続ける雪夫を演じたお二人に、本作で過ごした特別な時間について、尋ねました。
photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B. ) / styling : Kentaro Ueno (Airu Kubozuka), Masako Ogura (Aju Makita) / hair & make up : Katsuyoshi Kojima (TRON,Airu Kubozuka),Eriko Yamaguchi (Aju Makita) / interview & text : SO-EN
映画『ハピネス』より
ロリータファッションでいるから、セリフもしっくりきました。
——お二人には、それぞれ直近の『装苑』本誌にご登場いただいていますね。窪塚さんには発売中の5月号と5月28日に発売する7月号に、蒔田さんには、2023年5月号で蜷川実花さんの連載ページにご出演いただきました。
蒔田:あの撮影の日が、ちょうど『ハピネス』のクランクインの日だったんです。
——そうだったんですね!どのシーンを撮影されていたのでしょうか?
蒔田:学校の美術室で、雪夫と二人で絵を描いているシーンです。回想シーンは最初に撮影していました。
映画『ハピネス』より
——その時から、作品が完成して取材でこうしてお話を伺えるのはとても嬉しいです。『ハピネス』は、蒔田さん演じる由茉がめいっぱい生き抜く姿が観客の心に残る映画ですが、お二人にとって表現上チャレンジとなったことはなんでしょうか?
蒔田:役柄自体、今まで演じたことがないキャラクターだったのですが、一番チャレンジだったのは、言葉遣いです。セリフの言葉が原作に忠実だったので、そこは挑戦になりました。
——品のある文語でのセリフでしたね。
蒔田:セリフとして言うのは難しかったよね。
窪塚:ロリータファッションのブランド名も難しいのに、それを流暢に、一度も間違えずに言ってお芝居している蒔田さんを見て、すごいな!さすがだなと思っていました。
蒔田:あの場面は、あまりのカタカナの多さに、どうしよう!って内心焦っていました(笑)。
——普段の話し言葉とは違う言葉遣いで、どのようにあれほど自然にお話されていたのでしょうか?
蒔田:それは、衣装の力が大きかったです。普通の衣装でああいうしゃべり方をしたらギャップが生まれて、違和感が出てしまうと思うのですが、ロリータファッションをしているからこそ、「〜なのです」というような話し方もしっくりきました。
窪塚:雪夫も、由茉って名前で呼ぶのではなく「君」と言っていたり、「〜じゃないか」という語尾を使ったり、普段自分が使わないような言葉が多くありました。そこに、違和感が出ないように何回も何回もセリフを言うことで慣れさせていきました。
僕にとって挑戦だったのは、心情を理解すること。雪夫は考えることが多い役だったので、自分の中でそのどれもをわからないままにはせず、一つ一つの心情にはっきりした気持ちを持って演じたいと思ったんです。そこは結構、難しかったポイントです。
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