新垣結衣と早瀬憩が感じた映画『違国日記』の衣装と美術の力。他者とのコミュニケーションで大事にすることは?

2024.06.03

アニメ化も発表されたヤマシタトモコによる人気漫画『違国日記』が、新垣結衣×早瀬憩で実写映画化された。過去の確執から疎遠だった姉が交通事故で亡くなったと聞かされた小説家・槙生(新垣結衣)。葬儀に参加した槙生は、行き場を失った姉の娘・朝(早瀬憩)を引き取ると宣言。突然の同居生活が始まり、ふたりは時にぶつかったりすれ違ったりしながらも、お互いを尊重してそれぞれに変化してゆく。

かねてより原作の愛読者だったという新垣と早瀬。本番前に該当シーンの槙生の表情をイメージすることでスイッチを入れていた新垣と、現場に原作を持ち込み、繰り返し読んでいたという早瀬。取材現場でのふたりの空気感は、劇中の槙生と朝がそのまま飛び出してきたかのように柔らかくこちらを包み込む。本インタビューでは、衣装や空間、お互いに勧めたい作品などについて伺った。

photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.) / styling : Yoshiaki Komatsu (Yui Aragaki) , Mizuki Kobayashi (Ikoi Hayase) / hair & make up : Asuka Fujio (Yui Aragaki), Moe Morioka (Ikoi Hayase) / interview & text : SYO

『違国日記』
15歳の朝(早瀬憩)は、突然の事故で両親を失ってしまう。葬式の席で親戚たちの心ない言葉を浴びていた朝を、勢いで少女小説家である叔母の槙生(新垣結衣)が引き取ることに。こうして、ほぼ初対面の、世代も性格も異なる二人のぎこちない同居生活が始まる。戸惑いながら距離を近づけていく二人は、互いの存在によってそれぞれの痛みと向き合うことになる。

あの空間が、槙生ちゃんと朝を優しくリラックスできる空気にしてくれたような気がします。

早瀬憩(以下、早瀬):服装でしょうか。私の普段着のテイストとは違って、朝は古着っぽい格好が多いと感じました。私は元々演じる役によって服装を左右されやすいところがあり、その役が入ると撮影以外でも同じような雰囲気の服装をするところがあります。朝を演じている際はもちろん、実は今でも古着っぽい服をよく着るようになりました。

新垣結衣(以下、新垣):槙生ちゃんの部屋は散らかってはいますが、私はとても安心感をもらったといいますか、落ち着く感じがありました。私自身もそうですが、彼女は一人の時間を大事にしている分、自分の空間を安心できる場所にしているのだと思います。そのため、本人が興味を惹かれないものは置かず、好きなもので空間を満たしているのだと思いますが、私自身はあの空間に身を置くと「柔軟な人だ」と改めて感じました。「受け入れる」という感覚すらないような、フラットに全てを見られる人ではないかと。

その証拠に、自分が好きなものはもちろんのこと、必要だからとりあえず買ったようなものも置いてありそうな空間なんです。そういったところにも槙生ちゃんの人柄が反映されている気がしました。朝と部屋で過ごすシーンは長期間まとめて撮りましたが、その間、ずっと居心地がいいなと感じながら現場にいましたね。あの空間が、槙生ちゃんと朝を優しくリラックスできる空気にしてくれたような気がします。

新垣:原作と映画では、本棚と窓の位置が逆のような配置になっています。原作では槙生ちゃんのデスクの左側は窓ですが、映画では本棚になっていて、彼女が必要としている本の世界がそこに積み重なっています。そして原作では壁に向かってデスクがありますが、映画では窓に面しています。ロケ地がそうだったということもありますが、パンフレットに書かれている美術の安宅紀史さんのインタビューを読ませていただいた際、「閉じた部屋にいながらどこか外と繋がっている、開いた先に向かって書いている人物を表現できたら」というようなことが書かれていて、その意図はすごくよくわかると思いました。実際、小説を書いているシーンの撮影時、デスクの向こう側に窓があることで「デスクを突き抜けて“その先”を見ている」ような感覚になる瞬間がありましたから。

早瀬:とにかくたくさんの衣装を着ました。私が主演で映画に出演させていただくのが初めてだったこともあり、途中から“着疲れ”しちゃうくらいでした(笑)。

新垣:確かに多かったよね。これまでは制服が多かったの?

早瀬:そうですね。大体、制服+私服1〜2着くらいの役どころが多かったです。

新垣:主役となると着る量がものすごく増えるよね。フィッティングは実は体力を使うんです。

早瀬:汗だくになりました(笑)。いつの間にか2時間くらい経っていて「そんなに長い時間私は服を着替え続けているの!?」と驚きました。

新垣:例えば連ドラだと話数も多いため、話が進むにつれて以降の台本が出来上がり、衣装合わせもその都度行う、という感じでたくさんの衣装を着るのですが、映画1本単位としては、今回、多かった気がします。描いている期間自体も長いですし、季節も変わるためそこに合わせて様々な衣装を着ました。

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