6月2日に行われたLVMHプライズ 2022の授賞式にて。今年は女優のケイト・ブランシェット(右から2番目)とスキーの金メダリストでモデルのアイリーン・グー(右端)がプレゼンターとして登場。
若手ファッションデザイナーの育成・支援を目的としたコンペティション「LVMHプライズ(LVMH Prize for Young Fashion Designers)」の本年度の受賞者が決定しました。
授賞式の様子。
グランプリに輝いたのは「S.S. デイリー(S.S. DALEY)」のデザイナー、スティーヴン・ストーキー・デイリー(Steven Stokey Daley)。
イギリスのリバプール出身、労働者階級の家庭で育った25歳の彼は、2年前にブランドを設立。エリート主義の上流社会とのギャップからアイデアを発展させ、トラディショナルなものに誇張したシルエットやロマンティックなマテリアルを掛け合わせるなど、“英国の遺産”の古い考えを覆す服作りを目指しています。祖母が使っていたティータオルやヴィンテージのテーブルクロスをアップサイクルしたパッチワークシャツなど、クラフトワークをふんだんに取り入れた作風が印象的。
優勝賞金は30万ユーロ(約4,180万円)。このほか、LVMHグループのエキスパートによる1年間のメンターシップが提供されます。スティーブンは、この賞金で生産管理者とeコマースのスタッフを雇いたいそう。
女優のケイト・ブランシェットからトロフィーを授与されたスティーヴンは「オスカーをもらったようだ」とコメントし、会場の笑いを誘った。©️Saskia Lawaks
「S.S. デイリー」のコレクションより。中央はデザイナーのスティーヴン・ストーキー・デイリー。©️Saskia Lawaks
©️Chieko Hama
また、今回はカール・ラガーフェルド賞を二人のデザイナーが獲得。
一人目はカリフォルニアを拠点に活動する31歳のアメリカ人、イーライ・ラッセル・リネッツ(Eli Russell Linnetz)。ブランド「ERL」は、メンズ、ウィメンズ、ジェンダーレスのプレタポルテを中心に、子供服からアクセサリーまで幅広いアイテムを展開。もともと映画の脚本家だった彼は、物語を創作するようにコレクションを構築。自身のホームタウンのヴェニスビーチやサーフィンライフから多くのインスピレーションを得ていて、居心地のよさや幸福感のあるカラフルな服を提案しています。
「ERL」のコレクションより。左はデザイナーのイーライ・ラッセル・リネッツ。©️Saskia Lawaks
二人目の受賞者は「ウィニー ニューヨーク(WINNIE NY)」のイドリス・バロガン(Idris Balogun)。29歳のアメリカ人、ニューヨークのファッション工科大学(FIT)を卒業した彼は、14歳から4年間、ロンドンのサヴィル・ロウでテーラー技術を学び、クリストファー・ベイリー率いるバーバリー、トム フォードなどで経験を積みました。コレクションはクラシックな職人技を使ったモダンなデザインが特徴的で、リサイクル可能な天然繊維やデッドストックの生地を使用。品質の良さ、サステナビリティ、テーラリング、クラフトマンシップがブランドの核となっています。
「ウィニー ニューヨーク」のコレクションより。中央はデザイナーのイドリス・バロガン。©️Saskia Lawaks
二人には、それぞれ賞金15万ユーロ(約2,090万円)と1年間のメンターシップが贈られます。
今回、審査に初参加したケンゾーのアーティスティックディレクターのNIGOは、受賞者発表後のインタビューで「ファイナリストたちはスタイルも方向性も様々でしたが、どのデザイナーもすばらしかった」とコメント。
「かなり経験のある方もいましたが、そうでなくてもすごくいい方がたくさんいました。このプライズに参加したことが彼らの追い風になるといいですね。優勝したスティーヴンは、作っているものの完成度が高くて、今を捉えています。2年でここまでできて、一人でやっているとのことなので、LVMHグループのサポートがあれば、これからもっと可能性が広がると思います」
「このような場にはあまり出ないのですが、自分にとってもいい経験になると思ったのでオファーを受けました」とNIGO。
審査員たち。LVMHグループのベルナール・アルノー会長(2列目中央)とケイト・ブランシェットを囲んで。©Jean-Baptiste Mondino
審査風景。左からジョナサン・アンダーソン、ステラ・マッカートニー、キム・ジョーンズ。©️Saskia Lawaks
会場の様子。
Photographs & Text:B.P.B. Paris
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