ショーの様子
世界年間売上1位を誇る一大ビューティー企業であるロレアルグループ。その中核を担うヘアブランド L’OREAL PROFESSIONALのサポートを得て、文化服装学院 ファッション高度専門士科による卒業ファッションショーが2月に開催された。
厳しい学内選考を勝ち抜いた13名の学生デザイナーは各自のブランドコンセプトをもとに8体以上のプライベートコレクションを1年間かけて制作。
さらにポートフォリオ撮影及び卒業ファッションショーでは第一線で活躍しているサロンのヘアクリエイターの方々と組み、共に作品を作り上げた。
装苑ONLINEでは13名のブランド紹介とデザイナーのコメントをお届けする。彼らの今後の活躍にも期待したい。
photographs : Josui Yasuda (B.P.B.)
2022年度 ファッション高度専門士科卒業ファッションショー Supported by L’OREAL PROFESSIONNEL
13名の学生デザイナー紹介
関守 和奏×TKS
テーマ:with Ribbon
リボンをテーマにリボンが幸せの象徴とされている世界を展開しました。「リボンがついていればどんな事があっても大丈夫」というお守りのような意味を込めた作品です。全ルックがボリューム感たっぷりなので、制作に時間はかかりましたが可愛いものが作れるなら!と思うと頑張れました。舞台映えし煌びやかに、そして何より可愛くて着てみたくなるような衣装を目指しました。卒業後の目標はアーティストの方のLIVE衣装なども手掛けてみたいです。また20代では沢山仕事を経験し、自分の中に何人もの自分がいるような感覚で生きているので、自分を駆使してさまざまなクリエーションを展開出来るように頑張っていきたいです!そして沢山お世話になった方々に恩返ししたいです。インスタにも作品載せてるので良かったらぜひ覗いてください。
Instagram:@wakyaniiiiiii
担当サロン
TKS:https://tks-beauty.tokyo/ Instagram:@ryuuji_ohnishi
シュ バイギ×ZENKO
テーマ:Light Chaser
今回の制作過程では多くの新しい技術を用いり、3Dモデリングで製作したインフレタブルオブジェクトとプリント、レーザーカット加工したフリムのパズルを組み合わせた服、3Dプリントで作られたPLAの靴を制作しました。ヘアはアバンギャルドかつ反重力的なデザインに。頭から被るタイプの膨らませた衣装を着装した際、ヘアメイクの完成度を保つ為にサロンさんから多くの協力と支援をしていただきました。卒業後はロイヤル・カレッジ・オブ・アートのファッションコースでウィメンズウェアを学びます。 ソフトロボティクス、機能的なパターンメイキング、伝統的なクラフトマンシップを融合し、美的・機能的な衣服をデザインし、人々の暮らしとファッション業界の未来に、もっと可能性を。
Instagram:@s81g_、@byz_studio
担当サロン
ZENKO:https://www.zenko-hair.com/ Instagram:@zenko_official__
河﨑 千佳×CRAFT
テーマ:𝔔
常日頃、感情を抑えてなかなか本当の感情を出せない葛藤とそれに対する自問自答、という意味を込めて今回Qというテーマにしました。ルックごとのテーマに合わせ、Fantom(妄想、幻覚)といった文字や柄が服にプリントされています。音効はヴェルディの歌劇にこだわり、物語と服を掛け合わせたようなもので世界観を表現しました。 照明は下からじわりと当てられる照明をイメージに輝きや影を上手くイメージづけるものにしました。映像は友人に依頼して好きな映画のタルコフスキーのノスタルジアやアランレネの去年マリエンバートでのイメージで制作しました。今後は世界を視野に入れつつ沢山の布地や衣服に触れたいと思っています。趣味でランジェリーを着たり作ったりするのも大好きなのでランジェリーの制作もできたら良いなと思ってます。
担当サロン
CRAFT: https://www.total-beauty-craft.com/ Instagram:@kazu_hagi
窪田 里咲×総美
テーマ:PARADogs
同一性のパラドックスとdogを掛け合わせた「PARADogs」をテーマに制作しました。 流れゆく時間の中で変化を遂げた自分は過去の自分と同じなのだろうか、という考え方を家族との思い出からデザインしました。思い出をタトゥーとして皮膚に刻むイメージで制作した服は全てボールペンとコピックで手書きで模様を書き入れました。ヘアメイクはテーマに合わせてサロン様が理想的に仕上げてくださりとても感動しました。またスーパーロングの三つ編みのつけ毛やウィッグで制作したネックレス、イヤーカフなどをアドバイスを頂きながら自分で制作させて頂きました! 卒業後は着物を主に使用した「切ったり縫ったりしない、着物の新しい着方」を提案したり、要望があればその人にオリジナルで衣装を制作できるスタイリストを目指します。
Instagram:@drawing_risa、@ehe_turn.a_designs
担当サロン
総美:https://www.banet.jp/ Instagram:@decoco.ba
須永 真由×TONI&GUY
テーマ:I’m home.
I’m home.は〝ただいま〟という意味。お世話になった方々の顔を思い浮かべて、思い出のルーツを巡ります。記憶の中の匂いや音、温度を大切に自分の人生観から作品を制作しました。今までの経験やこれからどういう人でありたいかを考え、制作に取り組みました。素材感にとにかくこだわり、地元の群馬県桐生市の機屋さんに何度も足を運びながら自分で見て触って生地を選びました。一体ごとのコンセプトに合わせてヘアメイクも変えていただきました。ショー冒頭の映像はドライブ中に寝っ転がって見ていた空から発想を得ました。今後は私が居なくなっても時代にものが残る人になりたいと思います。故郷の素敵なものづくりを沢山の人に知ってもらえるよう、伝統的な技術を守っていくような仕事がしたいと思っています。
生地や雑貨を須裁株式会社様よりご提供いただきました。@susai.textileを是非ご覧ください!
担当サロン
TONI&GUY:https://toniguy.co.jp/ Instagram:@toniandguyjp
梅澤 透海羽×ROSSO
テーマ:syber
コンセプトはkawaii syberです。私なりのcyber空間を表すために cyberのcを自分の名前のsumihaからsをとり、 syberにしました。昔からディズニーなどの可愛いものや攻殻機動隊などのサイバー空間の映画、漫画を見て育ちました。私を支えてくれた2次元という媒体を私の集大成である今回のコレクションでコンセプトにすることは必然だったと思います。全体的にカワイイを中心に服やヘアメイクを制作しました。 音効と照明に関しては、カワイイよりも、サイバー空間を表したくてそれらの中間になるように目指しました。卒業後はCGやイラストなどのアートを極めたいと思います。1番の目標は2次元と3次元の境を曖昧にしていくことなので、デジタル分野をもっと勉強したいです。
Instagram:@sumi_haat
担当サロン
ROSSO:http://rosso-salon.jp/ Instagram:@rosso.the.salon
平賀 舞×BEPARADE
テーマ:ADMIRE
誰からも憧れられるかっこいい女性像をコンセプトに自分と同じ感性や、考えを持つ人に向けたショーを制作しました。派手めなリアルクローズを意識し、ふとした時に鏡に映った自分を見てテンションが上がるような細部にこだわりのある衣装作りをしました。 音効などのエフェクト関係は、音に合わせた照明や、衣装を見なくてもカッコ良さがわかるものにしました。卒業後は自分の一番好きな素材であるデニムの会社に勤め、そこでビジネスを学んだ後、独立し今回のコレクションと同じコンセプトようなブランドを作りたいと思っています。今後就職しても着たい服は全部自分で作っていこうと思っているので、興味を持っていただけたら嬉しいです。
担当サロン
BEPARADE:https://www.beparade.com/ Instagram:@recruit_beparade
ワイヤブットリーナッチャワー×Violet
テーマ:For Me DIVA.-Jupiterから舞い降りた歌姫-
自分を人生の主役と捉え、光り輝くをテーマとしてこの1年間制作に取り組みました。私の好きな世界観を変えずにより細かいところにも凝るように装飾やテキスタイルにもこだわりました。 大体のルックには、オリジナルプリントを施し装飾もデザインに合うようなものを選別しました。 またヘアメイクも、divaらしく強く、そしてどこか艶のあるメイクにしたかったので、サロンさんと入念に打ち合わせを行いました。 ヘアも、メイクとルックに合わせたアレンジに素敵に仕上げていただき、イメージ以上の出来映えに感動したのを鮮明に今でも覚えています。卒業後は、生産管理職に就き、将来自分のブランドを持つ為にも日々の努力は学生の頃と変わらず、持ち続け叶えたいです。何かを始めるきっかけは、実行する事が大事だとこの一年改めて思いました。
担当サロン
Violet:https://violet.tokyo/ Instagram:@violet.daiki
松永香梨×ルミナ
テーマ:Dramatic Heroines:
ヒロインたちは未来を真っ直ぐ見据え夢見ることを諦めない__学校生活4年間で学んだ装飾技法と新たに挑戦した装飾技法(刺繍、ビーズ刺繍、クロスステッチ、かぎ針編み、かご編み ect.)を11体全てに取り入れ、ボタニカル柄のオリジナルテキスタイルも1つ当たり最短で6時間、最長2週間以上かけて制作しました。3年生までは衣装会社への就職活動に使うポートフォリオに入れるための作品作りをしてきましたがこのコレクションでは自分の世界観を全開に、やりたいことをやりたいだけやろうと決めたので大変でしたが楽しく1年間制作を行うことができました。卒業後は衣装会社に就職するのですが、衣装デザイナーとしてまずは自分がデザインした衣装をアイドルに着てもらうことが目標です。
Instagram:@maison_de_poire
担当サロン
ルミナ:http://www.love-lumina.jp/ Instagram:@kentertehe
パクスラ×JEAN CLAUDE BIGUINE
テーマ:Poetic Space
「空間の詩学」という本では人はみんな内面の空間を持っており、その空間はその人の家を通して覗くことが出来ると語っています。今回のコレクションではこの考え方からインスピレーションをもらい、私の中にある夢と想像、記憶の塊であるその「空間」を服として表現しました。全体的には「シンプルさ」を元に制作しました。シンプルでありながらつまらない物にはしたくなかったので、そこのバランスを取るのが難しかったです。卒業後は服だけではなく、色々なものを提案できる自分のブランドを作りたいです。4年生はソアロンコンテストでトリプル受賞と、学院長賞、デザイン賞など色んなところで良い結果を得る事ができて、やりがいのある一年でした。これからは単純な自己表現を超え、人々が欲しがるものを作れるデザイナーになりたいです。
担当サロン
JEAN CLAUDE BIGUINE:http://www.biguine.co.jp/all.html Instagram:@biguine_omotesando
安藤 有沙×mille
テーマ:LIMBO ~中間の場所~
旅行することが大好きな私は様々な場所に出掛け、新しい考え方や大切なものが増えました。デザインを通してその大切な記憶を解釈し、卒業ショーという大きな舞台で表現したいと思いました。人や物、概念的なものをモチーフに1体づつテーマを決めてデザインし、ビーズ刺繍やオリジナルテキスタイルで細部のデザインまでこだわりました。映像にはサンドピクチャーを逆再生にし、空間の時間の流れを表現したり、風景の動画を重ねて様々な人の意識につながるように制作しました。ヘアメイクにはこの不思議な場所にいる人の印としてストーンやラインを入れ、複雑な編み込みで人ではないものとして表現しました。卒業後は国内外問わず、様々な人に懐かしさと新しさを感じさせるような、その人の記憶に触れられるデザインをしていきたいと思います。
Instagram:@_maria_ellie
担当サロン
mille:https://www.1001mille.com/ Instagram:@mille_hair
大川 遥菜×ASCH
テーマ:NEMO
ジュール・ヴェルヌの小説に感化され制作しました。 このコレクションでは、ヴェルヌの小説を愛する冒険家を主人公とし、オリジナルのストーリーを考えました。冒険家が旅をする中で見た情景や記録を服へと表現しています。このコレクションは非日常的なコンセプトだったため、オリジナルのテキスタイルを制作したり、イメージに合う生地選びにこだわりました。 また、ヘアメイクもそれぞれのルックに合うものを考え、提案させていただきました。高校生の時に高度専門士科の卒業制作ショーを見に行った以来、私もショーをやりたいと思っていたので今回ショーを出来ることになり非常に嬉しかったです。卒業後は衣装関係のお仕事に就かせていただくので、私の組んだスタイリングや制作した衣装で着てくれる方に喜んでいただけることを目標にしています。
担当サロン
ASCH:https://www.asch.jp/index.html Instagram:@asch_kawarasaki
ソン ヘヒョン×グレース
テーマ:青春時代 (Luceo Non Uro)
世界中の独裁政権に抑圧される人々の声を聞かせるようなコレクションを制作しました。言葉を使わずにコレクションのストーリーを伝えなければならなかったので、主に人間の五感に焦点を当てました。このコレクションは、私自身だけでなく、世界中の何百万人もの人々のトラウマについて話しているため、できるだけ敬意を持って自分の考えを表現することに大きなプレッシャーを感じましたがメイクや映像などギリギリまで試行錯誤をして完成できました。学校生活では初めて経験することも多く自分のスキルが足りないのではないかと心配していましたが先生方のご指導のおかげで苦手なことに挑戦する勇気を持てるようになりました。卒業後は人々が恐れることなく安全に自分の意見を言える世界を作りたいです。
担当サロン
グレース:http://www.salon-de-beaute-grace.com/ Instagram:@grace__ryokuen
日本ロレアル株式会社
プロフェッショナル プロダクツ事業本部ブランドエクスペリエンスマネージャ
千葉龍太郎さんコメント
コロナ禍が長く続き、ヘアショーやファッションショーを経験したことがない学生や美容師が多かったのですが、今回はリアルに撮影や制作、ショーの開催ができたのでとてもよかったと思います。昨年と比較してメイクはパールやスパンコール、ラインストーンなどを顔周りに使用するなど、アート系のリクエストが多かった印象です。衣装もシンプルではなくデコラティブなものが多く、制作プロセスでヘアメイクと衣装のバランスを美容師と上手く取ることで、完成できたと思います。ヘアでは、近年メタバースや3Dが身近になり、現実のヘアスタイルでも頭の形を自由自在に変える素材として髪を捉えるようになってきている印象を受けました。今までは髪の毛を巻いたり揺れ動くヘアになりますが、今回はそのようなヘアスタイルは少なく、造形としての見え方がポイントでした。ショーでは作品撮りとは違い後ろ姿も前の姿も360度楽しめたと思います。学生の皆さんの衣装があってのこの発想に至ったため、普段のサロンワークにはない刺激を美容師にもいただき、良い経験になりました。
L’OREAL PROFESSIONAL
WEB:https://www.loreal-professionnel.jp/top.html
Instagram:@lorealpro_education_japan
学生代表 パクスラさんコメント
このファッション高度専門士科× L’OREAL PROFESSIONALの企画で、13名の学生が選ばれてからチームとしてそれぞれの色を出しながら作り上げてきました。1つのテーマに対して8体作り続けるということを今まで経験したことがなかったので、4年生の1年間では気持ちを変えずにやり続けることが大変でしたが、本番のショーまで不安もありながら楽しめました。また、プロのサロンさんにサポートをいただき、13ブランドの特徴とサロンごとのスタイルを上手くいかし、とても完成度の高い単純に”服”ではなく”ファッション”としてのルックを完成させることができました。
また、チームで活動していくにあたり1人では抱えきれないことを”人に頼る”ということも先生方に教えていただきました。このショーでは学生生活4年間で学んできたことが繋がり、実現することができました。多くの皆さんにサポートいただき、とても感謝しています。卒業後もこの経験を活かし、それぞれの夢のために頑張ります。
文化服装学院 ファッション高度専門士科
4年間で、クリエーション・生産関連・ファッションビジネスについて幅広い知識と技術を習得。卒業時には大学卒業と同等の高度専門士の称号が与えられます。卒業生の多くはファッション界のスペシャリストとして高い評価を得ています。
WEB:https://www.bunka-fc.ac.jp/course/fashionkoukasenmon-katei/fashion-koudosenmonshi-ka/
Instagram:@bunka_kosen_official
L’OREAL PROFESSIONNEL 卒業ファッションショーバックステージサポート企画
「Future Talent Support PROJECT」とは
世界年間売上1位を誇る一大ビューティー企業であるロレアルグループ。その中核を担うヘアブランド「ロレアル プロフェッショナル」では若きクリエイターの育成を目的として、イギリスのセントラル・セント・マーチンズなど有名ファッションスクールの卒業ファッションショーや若手デザイナーのコレクションのhair&make-up Creationバックステージをサポートしている。日本では例年、スクール支援部門において文化服装学院が選出され、ファッション高度専門士科の卒業ファッションショーが支援の対象となっている。