「ファッションは嘘でいい」
2年半ぶりのパリで見せた三原康裕の素顔

2022.07.05

ファッションは嘘でいいんだって言いたかった

今回発表した2023年春夏コレクションのタイトルは「SUPERFICIAL YOU…(表層的なあなた)」。デザイナーが得意とするレイヤードとドッキングの手法をもとに、デニムやミリタリーのワークウェアにひねりを加えたシルエットが豊富だ。エイジング加工やダメージ加工、ヴィンテージのディテールを施したものもあり、古着の転写プリントや二重袖の服など、トロンプルイユで遊んだユニークなデザインが際立つ。

出番を待つモデルたち。

「トロンプルイユのテクニックをたくさん使っていますが、実はいろいろな文脈をストーリーにしています。トロンプルイユはもともと中世のヨーロッパで使われていた手法で、教会の天井に空を描いたり、窓がない壁に田園を描いたりすることで閉塞感をなくしていたんですよね。今の時代、あまりにも閉塞的だから、そのまま暗い文脈で伝えるんじゃなくて、僕はファッションは嘘でいいんだって言いたかった。嘘でもなんでもいいから、人を楽しませることがファッションのよさだと思っています。真実を伝えるためのファッションだったとしたら、それほど辛いものはないから」

ショー本番の舞台裏。モデルの着替えを手伝うスタッフたち。

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スタイリングの最終チェックをする三原さん。

「第二次世界大戦の時にフェラガモは物資がないから革が使えず、ナイロンでサンダルを作ってすごく画期的だったんですよね。クリエイティビティっていうのはそういうもので、本物でなくてもいいんだと思う。だから今回のショーではみんなに楽しんで欲しかった。ファッションってやっぱりエネルギッシュなものだし、そこにはパッションもある。失いたくないものなんですよ、ずっと」

フィナーレ!

シャボン玉がランウェーに舞い、風船を手にしたモデルたちが登場した幸福感あふれるフィナーレ。会場を後にした観客たちの表情は、デザイナーのメッセージが届いたことを裏づけていた。

ショー後、ファンからサインをねだられた三原さん。モデルたちにも大人気。

ショー後、ジャーナリストたちのインタビューを終え、ホッと一息をついた三原さん。

コレクション映像とルック画像はこちらから。

Photographs:濱 千恵子 Chieko Hama
Text:水戸真理子 Mariko Mito(B.P.B. Paris)

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