【2026-’27秋冬パリコレ総括 ①】静かな変化が進むパリ

2026-’27秋冬パリ・ファッションウィークの全体像とは?今シーズンに表れた変化と空気感を見ていく。

変化の兆しと揺らぐ環境

2026-’27年秋冬のパリ・ファッションウィークが、3月2日から9日間の日程で開催された。公式カレンダーでは、ショーとプレゼンテーションを合わせて98の枠が設けられたが、先シーズンの111から大きく減少している。

今シーズンは、常連だったジャンバティスタ ヴァリがクチュールウィークに続き直前でショーをキャンセル。理由は事業見直しとされるが、市場の減速を受け、同様の判断に至ったブランドも少なくないと考えられる。

ミラノからバトンを受け取ったパリのファッションウィークでは、中東情勢を背景に一部の航空便が欠航。初日には、在フランス日本大使館からデモへの注意喚起が出されるなど、国際情勢の不安定さが意識されるタイミングでもあった。

実用と表現のバランス

発表されたコレクションはどこか抑制的なムードを帯び、内面に意識が向けられたものが目立つ。とはいえ、創造性や感情が失われているわけではない。衣服本来の役割である実用と表現の絶妙なバランスを保ちながら、誇張や遊びを取り入れ、それぞれのステイトメントを他の要素と調和させているのだ。

業界を賑わせたデザイナー交代の動きはひと段落し、新章を迎えたシャネル、ディオール、ロエベ、バレンシアガは2シーズン目へ。それぞれがメゾンのDNAを進化させた初回のディレクションを継続しつつ、さらに先を目指す姿勢を見せている。

一方で、アライアはピーター・ミュリエが手がける最後のコレクションを発表し、バルマンは新クリエイティブディレクターのアントナン・トロンによる初ショーを披露するなど、節目を迎えたブランドもあった。

定着と発展の2シーズン目

シャネルのマチュー・ブレイジーは、ガブリエル・シャネルとの「対話」を引き続きテーマに据えた。ファッションを毛虫と蝶に例えたガブリエルの言葉を手がかりに、実用と幻想という相反する要素を共存させている。アイコニックなスーツを多様な素材で仕立て、加えて極端なドロップウエストを打ち出すなど、シルエットの刷新にも踏み込んだ。

ジョナサン・アンダーソンによるディオールは、チュイルリー公園でコレクションを披露。メゾンを象徴する「バー」ジャケットや「ジュノン」ドレスを再解釈したルックが並び、コンパクトなペプラムジャケットからドラマティックにラッフルが広がるなど、実験的なプロポーションが新鮮だった。クリスチャン・ディオールが愛した庭園の要素を多彩に取り入れたコレクションでもある。

ジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスが率いるロエベは、“遊びの精神”がキーワードに。主な着想源は、現代アーティストのコジマ・フォン・ボニンによるユニークかつアイロニカルなぬいぐるみ作品である。先シーズンに続き、アートとスポーツのコードを掛け合わせ、さらにパワーアップしたクリエイションは、独自のクラフツマンシップを盛り込みつつ、素材とボリュームの斬新さが際立っていた。

ピエールパオロ・ピッチョーリによるバレンシアガのテーマは「clair-obscur(明暗法)」。ショーでは、アメリカのドラマ『ユーフォリア』のクリエイター、サム・レヴィンソンがインスタレーション映像を手がけ、人間が持つ脆さと強さ、葛藤と喜びなどが表現された。同時に、クリストバル・バレンシアガの彫刻的なシルエットを再構築し、光と影のコントラストを浮かび上がらせている。

自然と向き合うクリエイション

また、今シーズンを通して強く印象に残ったのは、自然とのつながりだった。デジタル化が進む現代において、この流れは不思議なことではない。

ルイ・ヴィトンは「スーパーネイチャー」をテーマに、新しい時代のフォークロアを提案。ショーでは未来的なネオ・ランドスケープが構想され、牧歌的なムードをまといながら、ダイナミックなフォルムが強烈な存在感を放っていた。

エルメスは黄昏から夜へと移ろう感覚を衣服に投影。山道のように曲がりくねったランウェイのまわりには草が生い茂り、土の香りが会場に満ちていた。

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