2024年9月23日から10月1日まで、9日間の日程で2025年春夏パリ・ファッションウィークが開催され、100以上のブランドが公式スケジュールで新作を発表。今シーズンの必見ブランドをご紹介します!
パリの古城、ヴァンセンヌ城で2025年春夏ウィメンズ・コレクションを発表したロエベ(LOEWE)。ショー会場は巨大な楽譜柄のファサードで覆われ、インビテーションのリングに記された「1846」(ロエベの創業年)と相まって、クラシック音楽のイメージが投影されているのだろうか——と想像が膨らむ。会場内はミニマルなホワイトキューブで、中央にはたった一つ、イギリスの現代美術作家、トレイシー・エミンによるトーテムポールのような鳥の彫刻が配されていた。今季、ロエベが掲げたキーワードは、2025年春夏メンズ・コレクションと同じく「ラディカルな節度」。新たなシルエットの探求に情熱を傾けるクリエイティブ・ディレクターのジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)は、削ぎ落とすことで洋服の本質に迫り、それでも残った要素をツイストさせて、新鮮なシルエットやディテールを生み出した。
ロエベのショー会場に設置された楽譜を描いたファサード。
ショーの前半に登場したのは、印象派の絵画をイメージしたフラワープリントのシルクシフォンのドレス。内側にクリノリンのようなボーンを入れて形作られたこのドレスは、歩くたびにふわふわと躍動し、夢のような表情を見せる。足元は、新作スニーカー「バレエランナー」や、オックスフォードシューズをスタイリングしてモダンに。印象派のイメージは、ニットのミニドレスの色柄にも反映された。
服の本質に迫るジョナサンの仕事は、見慣れた要素を伸長、縮小、またはズラすことでも行われていく。本来、パンツの後ろにあるはずのブランドロゴ入りのパッチは前側にずれ込み、そのことでドレープが生まれる。テーラードジャケットの袖は長く大きく広がるが、極小のスパンコールを全面に配した「フィッシュスキン」ドレスや、マザーオブパールのコートなどは極端なミニ丈となる。2025年春夏メンズで見られた、トゥが長く伸びたオックスフォードシューズも登場した。
服を着脱する途中で時が止まってしまったかのような、裾が跳ね上がったユニークなフォルムのワイヤー入りのアウターと、同じアイディアで作られたコットンのスカートも、メンズコレクションとの関連を思わせるものだ。
フォルムやパターンへの熟考と、高度な職人技の末に生まれたこうしたルックの合間には、唐突に(フレデリック・)ショパンの肖像や(フィンセント・ファン・)ゴッホの「ひまわり」、(エドゥアール・)マネの「笛を吹く少年」などをフェザーTシャツに描いたルックが差し込まれ、コレクション全体にユーモラスな緩急をもたらしていた。ラストルックは、(ヨハン・セバスチャン・)バッハの肖像を、まるでロックスターのようにプリントしたフェザーのロングTシャツ。ショー会場の外壁に描かれていた譜面も、バッハの楽曲だったという。服のシルエットを用いてロエベが奏でた優美なメロディと刺激的なリズムの余韻が、いつまでも心に残っている。
Courtesy of LOEWE
Text : SO-EN