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「舞妓さんちのまかないさん」
衣装デザイナー伊藤佐智子さんに聞く
キャラクターと衣装

2023.01.26

着物の準備だけで300着以上!
そして着物だけではないこだわりの装飾品

――舞妓さん・芸妓さんの着物に関してはおおよそどれくらいの点数を用意されたのでしょうか

エキストラの方たちまで含めたら300枚を越えるくらいありましたが、メインキャストだとお稽古着なども含めて170〜180枚というところですね。中には反物から制作している着物も20着くらいあります。実際の使用がその数なので、準備はその2〜3倍の中から絞っていきました。中でも、百はな(すみれの舞妓としての名前)のデビューは、舞妓にとって特別な時にしか着ない黒紋付の正装の着物なので、黒地ならではの凛々しさの中に松竹梅の柄を華やかに施したデザインのものにこだわりました。すみれ以外においても、それぞれのキャラクターイメージから発展させて色柄を決めています。橋本愛さんの演じた百子は、芸妓なので、舞妓よりはもっとシックなものが多く、彼女のクールな女性像に合わせた深みのある柄が多いんです。また、歴女である舞妓仲間の菊乃は少しアンティーク調のデザインだったりします。

――着物の柄選びや着付けに関してなどで意識されたところなどありましたか

過去にも舞妓をテーマにした作品に携わったことがありましたので、色々勉強したことがあるんですが、ドラマの世界とはいえ、祇園の舞妓さんのある程度のセオリーは守って進めていきました。祇園の世界というのは、非日常的なひと時を演出する空間なので、一般の方の着物の選び方と違って視覚的に華やかさやはんなりした美しさを映し出せるように意識しています。あと、舞妓の帯留めというのは頂いた宝石で自分だけのものを作ることが多いんです。作中に登場する着物なんかは実際に置屋さんでお借りできるものもあったのですが、帯留めはないことがほとんどです。昔は御贔屓からいただいたり、大切な方から受け継いだりしたものと言われています。それは彼女たちにとって、宝物のように大切にしている装飾品なので、帯留めはそれぞれデザインを変えて制作しました。一見、かんざしや髪飾りより目立たないものではありますが、ある意味、着物より中心にあるものかもしれないと感じています。

――伊藤さんから見て、キヨとすみれはどのような女の子に映りましたか

同じ田舎で育った2人の幼馴染だけど、真面目で清楚、京舞でその才能を発揮して逸材と言われるようになるすみれと、舞や華道のお稽古は不器用なのに、まかないを作る料理の腕の良さと人に対する思いやりが深いキヨ。その2人の凸凹感のある間柄がすごく魅力的に感じました。それぞれのストーリーのなかでその2人の異なる人間味に惹かれていきますね。人間って誰しもがキヨのような部分を持っていて、自分探しや向き不向きなどに悩みながら生きているということを感じさせられます。

――今回、是枝さんを筆頭に様々な著名なクリエイターが携わった作品となりましたが、実際の出来上がりを観た感想などうかがえますか

はんなりとした京都独特の世界に流れる色彩と人間関係。そんなゆったりとした時間の中で繰り広げられる人間模様と日本の心をやさしく紡いでいくところが、近頃のスピード感のある映像と一線を画していると思います。そんな時間の流れに身を任せながら観ていただきたいと思っています。

伊藤佐智子
映画、演劇、広告などを中心に一枚の布からはじまる様々表現を構築し、提案。衣裳デザインはもとより、商品開発から空間デザインに至るまで、ジャンルを越えたコンセプチュアルワークを手掛けている。主な作品では、舞台『人形の家』(デヴィット・ルボー演出)、『ベッジ・パードン』(三谷幸喜演出)、映画『白痴』『式日』『オペレッタ狸御殿』『春の雪』『空気人形』『指輪をはめたい』ほか多数。 また、東京2020パラリンピック 開会式では衣装ディレクターも務めている。

「舞妓さんちのまかないさん」
祇園の舞妓さんになることを夢見て、親友のすみれと共に故郷の青森を離れ、京都にやってきたキヨ。舞妓さんたちが共同生活する屋形に住み込み、鼓や舞などの稽古に励んでいたキヨだが、舞妓には向いていないと言われ落ち込み青森に帰ることを考える彼女がひょんなことからみんなに作った親子丼が評判になり、キヨは毎日のご飯を用意する「まかないさん」として屋形で働くことに。京舞の才能を発揮して、由緒ある祇園の花街で名を馳せる舞妓さんのすみれとまかないさんのキヨの美味しく、美しい日々を描いた物語。

総合演出:是枝裕和、企画:川村元気、監督:是枝裕和、津野愛、奥山大史、佐藤快磨
出演:森七菜、出口夏希、蒔田彩珠、松坂慶子/橋本愛、松岡茉優、井浦新、常盤貴子
Netflixにて独占配信中。

©小山愛子・小学館/ STORY inc.

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