10代を演じるのって特別で、20代の1年とはやっぱり違う。
――「美しい彼」に至るまでのお話も、お聞きできればと思います。萩原さんは「小島よしおさんに会いたいから」という理由で、9歳頃に芸能界入り。バラエティをメインに活動しつつ、ドラマ「運命の人」(2012年)で菅田将暉さんの弟役を演じたことが大きな転機になったと伺いました。
それまでは子役が多い現場でしたし、習い事の延長感もあったんですよね。ところが「運命の人」の現場は、お芝居を極めている大人たちが中心で、子役は僕一人。とにかく緊張してしまって。自分自身もわけが分からない状態になったときに、菅田さんに緊張をほぐしてもらって、すごく優しくしていただいたんです。お芝居の面でも引っ張っていただきました。それからは、自分の目で現場をちゃんと見よう、そして、もっと芝居を知りたいしやってみたいと思うようになりました。
――その後、事務所も菅田さんと同じトップコートに移籍。俳優活動も加速していきます。高校生役も数多く演じてこられましたが、『アイネクライネナハトムジーク』(’19年、今泉力哉監督)で「等身大ではない状態で高校生を演じる」経験がまた大きな発見になった、という発言が印象的でした。
今泉力哉監督に「もう少し(演じ方を)若くしてもいいんじゃない?」と言われたとき、すごく衝撃を受けたんです。撮影のつい最近まで高校生で、その時は特別意識することなく高校生役をやっていました。でも、自分でも気づかぬ間に等身大じゃなくなっていたんだなって……。切り替わる瞬間がどこだったのかわからないけど、あの現場で今泉さんに指摘いただいたことが、良いきっかけになりました。
それ以来、制服を着るときには「高校生役でも、何歳なのか」はすごく細かく気にするようになりました。例えば15歳なのか18歳なのかで全く違いますし、すごくデリケートですよね。10代を演じるのって特別で、20代の1年とはやっぱり違う。そのことに『アイネクライネナハトムジーク』で気が付けて良かったです。
「美しい彼」での萩原利久さん。
――その延長線上に、『美しい彼』があるわけですもんね。
本当にそうですよね。今回の話って、平良と清居が高校生で、舞台が学校だからこそ成立すると思うんです。もし大人が平良と同じことをしたらストーカーチックになってしまうけど、高校生だからそのまっすぐさが物語になる。ということは逆に、まず「高校生である」ということを観る方に意識してもらわないといけない。そこで、歩き方やちょっとしたアクションも“高校生らしさ”を入れられるように気を付けました。
――それこそ、劇中で描かれるスクールカースト的要素は、学校特有のものでもありますね。
清居は頂点で、平良は底辺という設定。そこの開きで、クラスの色が変わってくるように感じます。差が狭いほど、みんなこの中に収まらないといけないと思うでしょうし、広がればそのぶん様々な色が生まれてくる。二人の関係性でクラス全体のトーンができていくから、その部分は丁寧に扱わないといけないと思います。