ドラマ「美しい彼」の俳優・萩原利久が明かす、
留まることのない表現の思考回路

2021.11.12

特別意識していることといえば、「キングである清居をどれだけ自分の中で大きな存在として捉えるか」

――BL(ボーイズラブ)というジャンルに関しては、いかがですか? 世代的にも時代的にも一般化しているかなと思いますが。

 男性同士の恋愛は僕の日常の中にもありましたし、素敵なことだと思っています。もちろんまだ法的になど様々なハードルがあるかと思うので、自分自身の思いとしては多様性が進んでいけばいいと感じます。

 芝居での心情としては、人が人を好きになる・愛し合う部分は異性間のラブストーリーと全く変わらないのですが、表現の上では違いもあります。例えば、目線。男子同士だと、身長差があまりないので目線の持っていき方が変わるんですよね。寄り添う動きも、同じくらいの体格の人に寄り添うことになる。そうした中で、どのようにこの作品の持つ繊細さを表現できるかは、現場で色々と試行錯誤しています。

「美しい彼」より

――酒井監督とは今回が3回目のタッグですが、監督の作品について「画がとても綺麗」とおっしゃっていましたね。今作でも映像美を追求されているのだと思いますが、「綺麗な画を撮る」ことに関して、萩原さんのお考えを教えてください。

 何も考えなくていいなら、お芝居をするときに自由に動けるとは思うんです。例えばカメラがなければ自分が向く方向にだって無意識になるし、こうやって今お話ししていれば顔は自然と向き合う形になりますよね。でもそこでカメラが右から撮るよ、となると多少そっちの方向に顔を見せたりする。

――意識が「撮られる」方に向きますよね。

 そうなんです。そういう自然の動きがある中で、「綺麗に撮る」というのは、自然の動きとは異なっていたとしても、画として美しいものにするということ。つまり撮りたい画から逆算して演技をすることになるので、通常のお芝居とはやっぱり意識が変わってきます。酒井監督は、映像美への追求がありつつ、できるだけ演者に無理がないよう「ゴールだけここにしてほしい」というようなオーダーをして進めて下さいます。

――色々なことを考えながら演技をするけど、考えすぎて動いちゃうとその役らしさが消えてしまうから、難しいですね。

 そうですね。なので、絶対にブラさないために、平良の純粋さや、まっすぐでピュアな部分はしっかり芯として持っていようと考えました。そこから逸脱しなければ、ある程度現場に委ねても成り立つというか、平良じゃなくなることはない気がしています。

 そして特別意識していることといえば、「キングである清居をどれだけ自分の中で大きな存在として捉えるか」。その意識をもって、ピュアな高校生と絶対的なキングの物語というシチュエーションに臨んでいます。

――先日、トップコート夏祭りを拝見したのですが……。

 え!観てくださったんですね(笑)。ありがとうございます。

――いえいえ! その中で、萩原さんが先輩と後輩をつなぐ役割を丁寧にこなしているなぁと思いました。今回お話を聞いて、演技自体を俯瞰で見るというか、広い視野を持って動くこととつながってくるようにも感じました。

 自分が場数を踏ませてもらっていくなかで「すごいなぁ」と思う先輩たちは、やっぱり皆さん視野が広い印象がありますね。無我夢中で目の前のことに向かっているほうが、もしかしたら「役を生きている感じ」はあるのかもしれないですが、それは自分の満足に過ぎないのかも、と思うんです。僕自身、こういった考えになってから、より監督を信じることができるようになりました。

 自分ではうまくできたと思ってもOKじゃなかったり、その逆もありますよね。最終的に決めるのは監督で自分ではないからこそ、信じて、委ねる。頭を空っぽにして演技だけに集中するのは憧れのシチュエーションではありますが、やっぱりどこか冷静な自分がいます。

 正直、「平良は純粋な人物です」と言っても、見た人に純粋さを感じてもらうのって難しいと思うんです。だからこそ、そう“見える”ために準備して、動き方を色々変えています。それは、ある種、冷静だからこそできる部分だと思うので、クールさとホットさを両方持てる役者になれたらなと思います。

 そして画面の中には役者しか映っていませんが、その向こうにはカメラマンさんをはじめ、たくさんのスタッフさんがいます。演じている僕ら自身の視界には常にその景色があるので、自分だけで熱くならずに、俯瞰しながら良いものを作りたいという思いになるのかもしれません。

――非常にクレバーなご意見ですね。おっしゃる通り、ゴールは「どう見えるか」ですもんね。

 はい。現場では「こう動いたら、ぶつかっちゃうな」みたいなことだって考えますし、常にぐるぐる考え続けていますね。でも、それが今、ストレスなくできるようになってきているんです!これを突き詰めて、考えなくても本能でできるようなところにまでいければいいな。だからこそ、この作品でも1回1回の撮影を大切にしていきたいと思います。

萩原利久 Riku Hagiwara
1999年生まれ、埼⽟県出身。2008年デビュー。主な出演作にドラマ「3年A組ー今から皆さんは、⼈質ですー」、「⼤江⼾スチームパンク」、「息をひそめて」、舞台『お気に召すまま -As You Like It』、映画『帝⼀の國』、『アイネクライネナハトムジーク』、『⼗⼆⼈の死にたい子どもたち』、『恐怖⼈形』、『花束みたいな恋をした』など多数。2022年公開の『牛首村』への出演も決定している。

萩原さん着用 ジャケット ¥46,200、パンツ ¥30,800 コノロジカ/シャツ ¥26,400 サバイ
(ともにヘムト PR TEL 03-6721-0882)

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