パリコレで活躍するヘアアーティスト、
ユージン・スレイマンがヘアを手がけた 映画『メドゥーサ デラックス』公開!

トーマス・ハーディマン監督の長編デビュー作『メドゥーサ デラックス』。ヘアコンテスト当日に優勝候補の美容師の変死体が会場で見つかるという、ゴシップミステリーです。本作品のヘアスタイリングを担当するのは、世界のファッションシーンで活躍するヘアアーティストのユージン・スレイマン。映画初参加となったこの作品についてインタビューをしました。

ストーリー
年に一度開催されるヘアコンテスト。美容師たちは、磨き上げてきた実力と知識を発揮し、今年こそ優勝するのだと誰もが固く誓っていた。しかしその直前、スター美容師・モスカが変死を遂げた。頭皮を切り取られた無惨な姿で、遺体となって発見されたのだ。事件現場のコンテスト会場に集まっていたのは、髪を切ることに才能と情熱を傾けてきたライバルの美容師3人と、彼女たちが担当する4人のモデル。一同は警察の捜査が終わるまで会場を出られなくなってしまう。変死事件の衝撃と恐怖、不安とともに、噂と疑念が関係者たちの間にじわじわと広がる。その日、いったい何が起きたのか。なぜモスカは死んだのか、動機がある人物は誰なのか。数々のゴシップによって真の人間関係が暴かれるなか、不気味な警備員・ギャックが会場内をうろつき、謎めいたもう一人の警備員・パトリシオも姿を見せる。そして、思わぬ悲劇がとある人物に襲いかかり……。

ユージン・スレイマン

ユージンさんにはパリコレのバックステージでお見かけしたことがあります。

髪を振り乱して走りまわっていた時ですね!

今回このようなかたちで映画に参加するようになったきっかけは?

僕は30年間ヘアアーティストとしてこの仕事をやってきているんですが、映画は初めてです。今回は監督のトーマス・ハーディマンさんから是非ということでお話をいただいて、このように実現しました。
映画のヘアを担当することは、ずっとやりたいとは思っていたのですが、そのような機会にはなかなか縁がなかったですね。ただ映画の仕事をすると、普段のファッションシューティングの仕事から2,3カ月離れなければならないんです。時間的な制約のことを考えると無理だと思っていたんですが、それが可能となったのはコロナです。皮肉にもコロナ禍で時間があったので出来たのだと思います。

映画のお仕事は、雑誌のファッションシューティングやファッションショーとは違うと思いますが、比較した感想を教えてください。

ファッション撮影は、事前に打ち合わせがあったとしても現場での即時的な判断がとても重要で、自分たちのことに集中してヘアを作り上げることが常なのですが、映画の世界はとてもオーガナイズされています。みんなプロフェッショナルで、それぞれディテールも突き詰めていくし、それがとてもやりやすかった。映画の世界は関わる人数も多く、その分スケジュールもきちんと管理されています。もちろんブレイクもちゃんと取ります。ファッション撮影の時は、ランチなども忘れてしまうことも多々あるので。

映画ではヘアコンテストが舞台になっていますが、コンテストに出るモデルさんのすべてのヘアを担当されたのですか

はい。監督のトーマスとはコラボレーションのようなかたちで進めることになりました。まずヘアスタイルをどう決めて進めていくかということで、通常とは違うやり方をすることがいいのかなと思いました。モデルの個性も大事ですが、それぞれのヘアドレッサーたちのキャラクターを理解して、どういったものを生み出すかということを考えて、チャンネリングしたような形でアプローチしていきました。
その後、参考となる写真や絵を見せるのがいいと思ったのですが、それぞれのヘアスタイルがどういうものかということを実際に示すために、あるヘアスタイルを作って監督に見せ、そこからディスカッションをしてさらに進化させて最終の形にしました。

それぞれのモデルのヘアスタイルに監督からの要望はありましたか

一緒にいる時間が長かったので、その時間の中で監督とは常に話し合いで決めていました。監督からは特にこうしてほしいという要望はなくて、僕がどう思うか、どう作りたいかということに興味を持ってくれました。スタイルの方向性が決まったらあとは集中して作りこんで行く。仕事のやり方としてはとてもコラボレーションということが強く、僕のキャリアの中でいちばんコラボレーションの要素が多かったかな。監督には僕と考えかたが少し似ているところがあって、何か一つやると決めたら短時間でやり遂げるのです。物事に集中することのできる人なので、すべてがとてもスピーディでした。彼には感銘を受けたし、とてもクリエーティブな人だと思っています。

映画でヘアを担当することにおいて、もっとも注意しなければならなかったことは何でしたか?

ヘアを作るということ自体はいつもの仕事と変わらないのですが、ただ映画の中でコンテストとして見せることが大きな違いですね。ヘアを作るにあたっては、あらゆる角度から見た時を想定しないといけませんでした。写真で撮るのは1方向のアングルを想定して作るので。それがいちばん気をつけた部分ですね。

モデルのヘアが燃えて崩れるシーンがかなり衝撃的でしたが、ユージンさんはあのシーンについてどう思いましたか。

自分としては、本当に興味深かったシーンです。炎に包まれていくシーンでは、どうやってキャラクターをサポートしようというところでヘアを作っていたので、かなりCGチームとはコミュニケーションをとっていました。

映画を撮っている最中に想定外のハプニングはありましたか?

映画作りというのは戦略的でオーガナイズされているから、逆に僕が撮影のやり方を理解しなくてはならなかったんです。議論したり、作るプロセスなどは撮影が始まる前にフィックスされていて、それを監督がどう撮るかに集中していました。どのタイミングでいつ準備をして、いつヘアを作らなければならないのか。出来上がるタイミングを逆算して、どう自分が動かなければいけないのかを。映画は大きなチームで仕事をするので、すべてが正確によく練られています。プロフェッショナルなスタッフの中でスムースに進んでいたと思います。

映画の中でユージンさんがいちばん好きなシーンを教えてください。

それはなんといってもヘアが炎に包まれるシーンです!とても大変でしたが、18世紀のモチーフが燃えるという感覚が刺激的でした。
ヘアスプレーは可燃性で、熱にとても弱い。ある意味爆弾のようなものでとても危ないのです。僕はそれを理解しつつ、ちょっとストレンジかもしれないけど映画では楽しんでしまっているところもありましたね。


Eugene Souleiman
ヘアアーティスト。イーストロンドン生まれ。1982年、美術大学を中退し、美容師見習いとして働き、キャリアをスタート。1995年、ジル・サンダーのキャンペーンをきっかけに、キャリアは一気に加速。ハイダー アッカーマン、アン・ドゥムルメステール、カルバン・クライン、ミッソーニ、プラダ、ジル サンダーなど、毎シーズン注目を集めるルックを作り出してきた。レディ・ガガが「アレハンドロ」(2009)のMVで着用しているトリムボブも彼の手によるもの。またカルバン・クライン、バレンシアガ、ジバンシィ、フェンディ、ジル・サンダー、ランバン、エルメス、ヨウジヤマモト、ギャップ、メゾン・マルジェラなどのキャンペーンでコラボレーションしており、ラグジュアリーブランドのファッションショーのヘアも手がける。

『メドゥーサ デラックス』
10/14(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
監督:トーマス・ハーディマン/撮影:ロビー・ライアン/ヘアスタイリング:ユージン・スレイマン
配給・宣伝:セテラ・インターナショナル
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WEB:https://www.cetera.co.jp/medusadeluxe/