Desigual(デシグアル)とのコラボレーションを発表した
ヘド・メイナーにインタビュー。
服作りの根底にあるのは、着る人たちを守りたいという優しさ。

2023.12.05

2023年11月、バルセロナ発の「Desigual(デシグアル)」とコラボレーションコレクションを発表したヘド・メイナーが来日。ジェンダーレスな視点から考案された12点のアイテムは、2枚のシャツが裾で一つに繋がったシャツ、ビッグボリュームを優しい素材感のデニムで完成させたジャケットなど、一点一点に込められた大胆なアイディアが上質なエレガンスへと仕立てられています。「装苑ONLINE」では、デシグアルストア銀座 中央通り店を訪れたヘドにインタビュー。穏やかな語り口から明らかになったのは、コラボレーションへの深い思いと、服作りに対する真摯な姿勢です。

photographs : Norifumi Fukuda (B.P.B.) / interview & text : Shigeaki Arai

Hed Mayner
イスラエル出身のヘド・メイナーが手がける、メンズウエアを中心としたブランド「Hed Mayner」。伝統的な宗教衣装やミリタリーから着想を得た独自のスタイルが、ブランドを象徴するボリュームのあるシルエットデザインに落とし込まれ、日本国内でも多くの支持を集めている。2018年春夏シーズンからパリ・メンズ・ファッションウィークにてコレクションを発表。2019年にLVMHのカール・ラガーフェルド賞を受賞。

サイズや性差にとらわれず、
着る人のアイデンティティを自由にする

――Desigualには「no es lo mismo(同じではない)」というブランドのモットーがあります。メイナーさんから見たDesigualの他にはない個性とはなんでしょうか? 

ヘド・メイナー:「同じものはない」ということがDesigualのモットーでもありますが、それはHed Maynerというメゾンにとっても、すごく大事なことです。やはり違うアイデンティティを持った人に見ていただきたいし、同じものを作らないようにする、常に新しいものを作ろうとするモットーは、私自身のブランドでも同じです。

――コラボレーションでは、二つのブランドの異なる世界観を融合する面白さや大変さがあると思いますが、Desgualとのコラボレーションで最も印象に残ったことを教えてください。

ヘド・メイナー:コラボレーションで常に気をつけていることは、双方のブランドの架け橋になることです。今回のDesigualとHed Maynerのコラボレーションでは、プロダクトをパターン的な意味でフラットに作りました。コレクションの中にパンツがあると思いますが、前後に同じポケットを付けて、フロントとバックの境界をなくしたり、ワンサイズで作ったことが特に面白い工程だったと感じています。

その体験は、インダストリアルの工程をコラボレーションの製作過程に用いるアイディアをもたらました。今回のコラボレーションで特に気を配ったのは、アイディアを実践するために製作方法をより簡素化した点です。また、大切にしたのは製作工程の簡素化とともに、商品を純粋にすることでした。その最たる例が、先ほど話した多くのプロダクトをワンサイズで作ったところです。サイズや性差にとらわれず、着る人のアイデンティティを自由にするという部分は、同時に、洋服の制作過程で最も感情が出た側面だったと考えています。

――コラボレーションの各アイテムには、名前が付けられています。THE EXTRA-BOLD OVERALL KIMONOというアイテムは、着物や道着のエッセンスが、オーバーオールとして形になっていて新鮮でした。メイナーさんは、日本の伝統的な服には以前から注目されていたのでしょうか?また、そのリサーチの過程なども教えていただけたらと思います。

ヘド・メイナー:このKIMONOは日本の文化からの出自ではあるんですけれども、着物そのものだけがインスピレーションになっているわけではありません。こうしたあわせや構造の服というのは、別のカルチャー圏にもあり、もっとジェネラルなものと捉えています。THE EXTRA-BOLD OVERALL KIMONOには、金具などにミリタリーウェアの機能性の要素も取り込んでいます。日本の着物文化のみに着目するというよりも、すべてのいろんな文化がある中で共感できる要素を取り込んでいます。

日本の文化は好きですし、リスペクトしていますが、Desigualとのコラボレーションはもっとグローバルな視点で人々にリーチしたいという思いでした。今回のコラボレーションに限らず、すべてのリサーチの過程で、一つのカルチャーにフォーカスせず、様々なカルチャーの中から共感した要素に注目しています。

NEXT:コラボレーションアイテムのインスピレーション源は?

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