6月7日に開催されたLVMHプライズの授賞式にて。トロフィーを手にした桑田悟史さん(39歳)と、プレゼンテーターの女優ガル・ガドットさん、シンガーのリウ・ユーシンさん。
若手ファッションデザイナーの育成・支援を目的としたコンペティション「LVMHプライズ(LVMH Prize for Young Fashion Designers)」の本年度の受賞者が決定。日本人デザイナーの桑田悟史(くわた・さとし)さんがグランプリを受賞しました。
パリの「フォンダシオン ルイ・ヴィトン」で開催された授賞式の様子。
ミラノを拠点に活動する桑田さんは、2020年にブランド「セッチュウ(SETCHU)」を設立。昨年はイタリアのコンペティション「WHO IS ON NEXT ?」でも最優秀賞を獲得し、注目を浴びていました。
ブランド名は和洋折衷からネーミング。和と洋を掛け合わせたデザインが特徴で、手仕事の継承、優れた機能性、上質な素材を軸に、長く着ることができるタイムレスな服を提案しています。
優勝賞金は40万ユーロ(約6,000万円)。このほか、LVMHのチームによる1年間のメンターシップが提供され、生産と流通、イメージとコミュニケーション、マーケティング、知的財産についてなど、あらゆる分野の専門家よりサポートを受けることになります。
「SETCHU」のコレクションより。
受賞後、桑田さんは「この結果を、まったく想像していなかった」とコメント。
「まわりは才能ある人たちばかりで、僕はタイムレスをモットーにやってきたので、デザインは少しおとなし目です。アドバンテージがあるとすれば、他の候補者たちより経験があったことでしょうか。本当にラッキーだったと思います」
四国地方で製作された「SETCHU」の下駄。
「メンターシップでは、和洋折衷というコンセプトをどうしたらもっとわかりやすく、ブランドイメージとして伝えられるのかなど、ビジネス面はもちろんですがクリエイティブ面のアドバイスもいただければと思います。LVMHは世界的な企業で、ここまで作り上げてきた実績を持っています。ファッションはチームワークが大切だと思うので、そうゆう意味でも勉強させていただきたいです」
手前は同プライズを主催するLVMH執行委員会のデルフィーヌ・アルノーさん。後列には、審査員を務めたアーティスティックディレクターらが並ぶ。
「賞金で、まずは工場への支払いをしたいです。あとは、オンラインのチームの構築とスニーカーなどの新しい製品の展開を考えているので、その資金にも当てたいですね。まだまだ贅沢はできません。これから、もっと、がんばっていきたいので」
「母がずっと応援してくれていたので、今日、やっと恩返しができたかなって思います」と桑田さん。
また、カール・ラガーフェルド賞は「ベッター(BETTTER)」のジュリー・ペリパス(Julie Pelipas)さんと「マグリアーノ(MAGLIANO)」のルカ・マグリアーノ(Luca Magliano)さんが獲得。それぞれに20万ユーロの授与と1年間のメンターシップが約束されました。
「MAGLIANO」(写真左)と「BETTTER」のコレクションより。
左はジュリー・ペリパスさん(38歳)。ウクライナ出身の彼女は『ヴォーグ・ウクライナ』の元ファッション・ディレクター。2019年にアップサイクル・ブランド「BETTTER」を立ち上げ、デッドストックの製品を再利用した服などを生産している。右はルカ・マグリアーノさん(36歳)。イタリア・ボローニャを拠点に活動し、2017年に「MAGLIANO」を設立。メンズウェアのベーシックにユニークな捻りを加えたデザインを得意とする。現在、レディース・ラインを構想中とのこと。
Photographs & Text:B.P.B. Paris
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