ODAKHA(オダカ)
一本の糸が織りなす
美しく無限に広がるニットの世界。
そこには、布帛の表現とは違う
変幻自在な可能性が存在する。
〈東京発のブランドストーリー Vol.6〉

2025.02.04

亡霊のように宙に浮かんだ立体作品。あるインスタレーションで衝撃を受けたこの作品との出会いが今シーズンのコレクションのスタートになった。色褪せて朽ちた布の重なり、これをニットで作ったら?糸の素材や光の取り込み方で、美しさや軽やかさを伴ったさまざまなアイテムが完成した。

一昨年の年末に草月会館でやっていたスターリング・ルビーというアメリカ人の現代アーティストの展覧会があって、それが発想の起点になっています。「SPECTERS TOKYO」をテーマにしたインスタレーションなんですが、亡霊が六体ぐらい宙に浮かんでいるようなおどろおどろしさを感じるもので、かなり圧倒されました。朽ちた布を重ねて陰影を出したようなものや、それが染なのか劣化したのかわかりませんが、そこには亡霊感があって。久々に没入できたインスタレーションでした。実はそれは日本の怪談話からインスピレーションを受けて作ったらしく、よく見るとレースを使っていたりところどころ可愛いモチーフが入っていたりして。こういうものをニットで表現したいというところからスタートしました。

今回ホールガーメントという縫い目がない3Dニットを透明のフィラメント糸を使って作ったアイテムがあります。立体的なニットをぼわっとした膨らみでさらにボリュームを出したいと思って。スターリング・ルビーの展覧会にちなんでスペクターズドレスと名付けました。まず初めに大きなパフスリーブの透明なドレスを作って、ここからどのようにレイヤーをすると面白い陰影が表現できるかと。ハンドニットとホールガーメントと、そこにブランドオリジナルのレースのように編んでいくクレイジーニットを全部合わせてフュージョンさせたようなものです。

すべてのニットテクニックを合わせたものを作りたいと思っていて、なかなか実現できなかったので、今シーズン挑戦出来て嬉しかったです。怪談に出てくる雪女のイメージを現代の雪女にアレンジしてみました。少しグランジ風も取り入れています。

イラストレーターのmaya(maya Shibasaki)さんに花の絵を描きおろしていただきました。この本は、小泉八雲さんが1903年にアメリカで出版した復刻版で、表紙は当時と同じ図柄なんです。表紙に描かれた花はオモダカという草花らしくて、それをmayaさんに描いていただきました。それをちょっと砂糖菓子のような透けるハイゲージのニットにプリントしています。それがシュガーニットです。

普段から気になっているものを、記憶として頭の中に並べています。点と点で離れているものをある時期がきたら並べて繋いていく感じですね。コレクションの制作段階では、繋がっているのがあまりわかってない時もあるんですが、コレクションが出来上がってくると自分のやりたかったことが明確になってきます。

私はどちらかというとテクスチャーがとても気になるタイプで、それでニットにはまったという経緯があります。今回もそうなんですけど、いちばん最初はやっぱり、こういう重ねとかテクスチャーが素敵だなとか綺麗だなというところから入っているので、インスピレーション源とかで悩むことはないですね。今回の雪女から雪、砂糖という流れのように。雪の表面のざらっとした感じが砂糖っぽいなって自分の中で繋がっています。

文化女子大学を卒業して、BFGU(文化ファッション大学院大学)に入ったのですが、BFGUでニットCADという自分でデザインをCADで組んで編地を作る授業があって、そこでいろいろ実験をしていくうちにニットの魅力にはまりました。卒業後は「イッセイ ミヤケ」でニットのアシスタントデザイナーを経験し、その後ニットを一から作る工程を全部学ぶために、ニットの会社に入り自らニットの工場に出向いて、いろいろ教えていただきながら仕事をするという日々でした。

いちばん最初に面白いと思ったのは、ニットって柔らかいイメージだったんですが、糸やゲージ、編み方を変えていくと、張りや硬さのあるものも作ることができてしまうというところが魅力的でした。

自分でハンドニットでも試すときもあるし、あとはニッターさんに相談することもあります。どんなリクエストを出しても、今一緒にやってくださっている方はできないとは言わないので、本当にありがたいですね。いつもなんでも挑戦してくださる。出来上がったものが、イメージと違うものになったりもしますが、そこに新たな発見があったりします。

「マラミュート」で海外で展示会をしたときに、バイヤーさんからとてもいい評価をいただいたんですが、“マラミュートって犬種名よね?”って言われて。日本ではあんまり言われたことがなかったんですけど、せっかくMADE IN JAPANで打ち出しているのにこのブランド名はどうなのかな?って。海外に出るきっかけを掴んだのだから、日本発信のニットの強みをしっかり伝えていきたいということと、ブランド名をきちんと掲げて体現できるようなものにしていきたいと思って変えました。

あれから2年、皆さんに認知していただけるか当初は不安だったんですが、お取り組みいただいている方々からも影響はないとおっしゃってくださっているのでほっとしました。

「オダカ」になってからはまだなので、機会やタイミングが合えば前向きに検討したいと考えています。それこそきちんとテクスチャーがちゃんとわかるような距離感でランウェイができたらいいですね。

「オダカ」は“強さと柔らかさを合わせ持つ女性のためのデイリーウェア”がコンセプトなんです。そして毎シーズンその時のテンションで具体的な人物をイメージします。今回はロックアーティストのキム・ゴードンです。

美術館巡りをしたいですね。空間に身を置いていろんなことを感じ取ることが好きなので。旅行とかもそうだと思うんですが、いつもいる場所じゃないところに行ってゆっくり流れる時間を楽しみたいです。ずっと思っているんですがクロアチアには行ってみたいですね。アドリア海に面したドゥブロブニクの街とか。

お世話になっているニッターさんと、アイディアを共有しながら見たことのない魅力的なニットを作っていきたいというのと、“「オダカ」といえば日本のニット”と認識されるようなブランドなりたいですね。

学生の時は考えていなかったことなんですが、今文化の学生時代の友達と仕事をしているんです。いろんな場面で出会った人たちと長く一緒に仕事することがあるので、人との関係は大切にしてほしいです。私の場合、今の関係性はこの先もずっと続いていくと思います。人との繋がりってとても楽しいですよ。

photographs: Josui Yasuda(B.P.B.)


Odaka Mari
1987年埼玉県出身。2009年文化女子大学(現 文化学園大学)卒業、2011年文化ファッション大学院大学卒業。ニットデザイナーとして経験を積んだ後、2014年秋冬より自身のブランド「malamute」をスタート。国内の職人と生み出す精緻なニット表現が特徴。2021年東京ファッションアワード受賞。2023年秋冬よりブランド名を「ODAKHA」に変更。
WEB:https://odakha.jp/

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