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プルミエール・ヴィジョン・パリ、
2025年春夏のトピックスは!?

2024.02.21

世界最大級のファッション素材の見本市、プルミエール・ヴィジョン・パリ(Première Vision Paris)の2025年春夏シーズンが、2月6日から3日間の日程で開催されました。今シーズンは73か国から、生地、繊維、服飾資材のメーカーなど、約1,200社が出展。来場者は125か国から30,340人と、前回を上回る数を記録しました。

プルミエール・ヴィジョン・パリは、これら企業が製品やサービスを展示し、商談を行うためのイベントですが、新たなビジネスチャンの発見や情報収集の場としても機能しています。とりわけ、ここから発信されるトレンドは、出展メーカーの新製品に反映されるため、業界全体の動向に影響を与えるといわれているのです。そんなパリの素材見本市から今回のトピックスをお届けします。

2025年春夏のメインカラーはミルキーイエロー、テーマは「ミューテーションズ」

まずは、今シーズンの気になるカラートレンドから。メインカラーとして浮上したのは、白みを帯びた輝きのあるミルキーイエローです。コーラル、ターコイズ、イエローのような鮮やかな色もありますが、乳白色のフィルターをかけたソフトな色調が印象的でした。

カラー以外にもそのシーズンのテーマやキーワードが提示されます。今シーズンの大きなテーマとなったのは、変化や突然変異を意味する「ミューテーションズ(Mutations)」です。

注目スポットのトレンドフォーラム。会場内にいくつかあるフォーラムの中には、近未来的なイメージの展示も。

前提にはファッション業界でますます重視される環境への配慮やトレーサビリティの必要性があり、広範囲にわたる長期的な変革を背景に「習慣と創造的・産業的プロセスの見直しが迫られている」と解説。「変容・変身」「再生」「適応」と、幾つかのキーワードを挙げ、「存在意味とクリエイティビティの間のギャップを埋め、デザイナーから顧客まで、環境に連鎖するすべてのものをまとめる新しいアプローチの出現」を示唆しています。

写真上:プルミエール・ヴィジョンが発信するトレンドは世界各国のトレンドリサーチャーが集まり国際会議で決定。その内容に見合ったおすすめ製品のサンプルがフォーラムに陳列される。下左:これまでフォーラムの写真撮影は禁止だったが、今回から可能に。下右:製品サンプルに貼られたステッカーで、素材の特徴が一目でわかる。

よりエコレスポンシブルなファッションを目指して

業界の旗振り役的な存在でもあるプルミエール・ヴィジョン・パリは、エコレスポンシブルなファッションを目指す様々な取り組みを行っています。その一つに、デッドストック素材を販売する企業の導入もあり、今回はシャネルの主導のもと設立された「ラトリエ・デ・マチエール(L’Atelier des Matières)」が新たに参加。

「ラトリエ・デ・マチエール」のブース。未使用素材の販売にとどまらず、テキスタイルや革製品のブランドを対象に、売れ残り品などの再利用に向けてカスタマイズされたソリューションを提供する。

また、エコレスポンシブルの一環として重視されるのは、類い稀なノウハウや伝統的な手仕事。そうした特殊な技術を持ったアトリエや企業を集めたエリア「メゾン・デクセプション(Maison d’ Exceptions)」も見どころの一つです。ここに出展できるのは、主催者が特に厳選した業者で、入場者も制限されています。このスペシャルなエリアに並んだスタンドは20のみ。内5つが日本からの参加でした。

今回、初出展の近江上布(おうみじょうふ)のスタンドより。600年続く手作業の技術を継承した芸術性の高い麻織物がすばらしい。伝統の風合いを最大限に活かしつつ、モダンにアレンジした織物も提案する。

写真上:和紙を織り込むという斬新な工夫を加えた手織りの生地。下:多色の緯絣(かすり)を得意とした「野々捨商店」の型紙捺染。複数の型紙を使い、糸の両面に絣模様を捺染してから生地を織り上げるもので、匠の技を要する。

SHINDOのブースに文化服装学院の学生の作品が展示

プルミエール・ヴィジョン・パリの会場は、インスピレーションを与えてくれる展示にもあふれています。リボンで知られるSHINDOのブースでは、文化服装学院在校生の佐藤麗樹(さとう・れいじゅ)さんの創造性豊かな作品が展示されました。

これは、SHINDOと文化服装学院との共同企画によって実現したもので、昨年11月の文化祭で同社の服飾資材を使用した作品のコンテストが行われ、グランプリを獲得した佐藤さんにはパリでの作品展示という栄誉が与えられました。

SHINDOのブース。1970年創業のSHINDOは服飾副資材を中心とする企画・製造・販売メーカー。バリエーションに富むリボンやテープを取りそろえ、その数は4万点にのぼる。

今回の見本市への参加に際し、佐藤さんは配布用の英文ポートフォリオを持参。
「SHINDOさんの商品をプロモートするためにも、僕の服に興味を持ってくれた人のためにも、何をイメージして何をどうやって使ったのかをきちんと説明しなければと思いました」と佐藤さん。フランスは人生で一度は行ってみたかった国。自分の作った服をきっかけにパリに行くのが目標でした。ずっと届かないだろうと思っていましたが、達成できてうれしいです」

文化服装学院デザイン専攻3年生の佐藤麗樹さんとグランプリ作品。

作品を説明する佐藤さん。「Cell(細胞)」をテーマに、可視化された細胞小器官と脳神経細胞からイメージを広げたという。SHINDOのリボンを裂いて使うといった固定概念を打ち破る創造性が高評価された。

展示を総括したSHINDOヨーロッパの社長、野村拓也氏は「佐藤さんの斬新な作品がSHINDOのブースに華を添えて、アイコン的な存在になりました。お客様にとって、我々の製品の使い方もクリエイトしてもらえるきっかけになればと思います」とコメント。

多彩な色と素材のリボンがずらり。右のパイピングテープは佐藤さんの作品に使われた製品の一部。

プルミエール・ヴィジョンの長期ビジョンは業界の持続的成長。そのためテクノロジーを活用したプログラムをさらに拡大させるなど、革新的な取り組みも行っていて、今回の2月展ではコロナ前の活気が感じられました。未来を見据えた戦略が功を成しているようです。

写真左:テーマ「Mutations」を掲げたポスター。右:イエール国際コンテストのグランプリ受賞作品も展示。

Photographs:濱 千恵子 Chieko Hama
Text:B.P.B. Paris

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