–文化出版局パリ支局より、イベントや展覧会、ショップなど、パリで日々見つけたものを発信。
1976年、パリのアトリエでデザイン画を描くサンローラン。Photo : Guy Marineau © Yves Saint Laurent
20世紀の偉大なデザイナーであるイヴ・サンローランにとって、織物の産地フランス・リヨンの生地はインスピレーションの源でした。パリで開催中の「イヴ・サンローラン、リヨンのオートクチュールの舞台裏」展では、そのクリエイションを支えたリヨンの生地メーカーとのコラボレーションに焦点を当て、オートクチュールの制作過程をわかりやすく解説しています。
もともとはリヨン織物装飾芸術博物館で開催された展覧会ですが、今展では同デザイナーのクチュールメゾンが置かれていたイヴ・サンローラン美術館を会場に、より多くの作品を紹介。デザイン画や生地サンプル、フィッティングの映像やコレクション写真など、貴重な資料に加え、実際に使われていたアトリエを見ることができるのも魅力です。
その真の舞台裏に迫る展覧会を2回に分けてご紹介します。
高級アパルトマンが立ち並ぶマルソー通り5番地にあるイヴ・サンローラン美術館。
最初の展示はイヴ・サンローランが10代後半の頃に作ったペーパードール。雑誌からモデルを切り抜き、自分でドレスやアクセサリーを創作していました。イヴ少年のファッションへの情熱が感じられるコーナーです。
イヴ少年はペーパードールによるショーまで想像してプログラムも作成。写真は1953-1954秋冬コレクションのもの。モデルやヘアメーク、生地メーカーの名前も記載されています。© Fondation Pierre Bergé – Yves Saint Laurent
かつてはこの豪華なサロンで、オートクチュールのショーが行われていました。
リヨンの絹織物の老舗「スファト・エ・コンビエ(Sfate et Combier)」の生地サンプルのアルバム。この展覧会では、サンローランが信頼していたリヨンの7つの企業が紹介されています。
冒頭に掲げられた20歳のサンローランの言葉。「生地を見ているとドレスのアイデアが湧いてきます」。
一着のドレスが作られるまでのプロセスを解説する展示。下の写真はデザイン画と、生地メーカーの名前、用尺、値段などを記した製品管理書。
ドレスは1996年春夏のもので、使われた生地は「ビュコル(Bucol)」のモスリン。 Photos : Guy Marineau © Yves Saint Laurent(左)、Sophie Carre © Yves Saint Laurent。
クレープ、モスリン、タフタ、ベルベットなど、サンローランが好んだ生地がクローズアップされ、それぞれの特徴を説明。写真は「ビュコル」のタフタを使ったクリエイション。
左の写真はピカソの作品からインスパイアされた1979年秋冬のジャケット。道化師がイメージされ、ラメ入りのオットマンが使われています。右は「ビアンキーニ・フェリ(Bianchini-Férier)」のクレープで作られたドレス。クレープはサンローランが初期の頃から使っていた素材で、多くのドレスにその特性を活かしたドレープが施されています。
上の写真は1987年秋冬から2002年春夏までのイブニングドレス。使われているのは目があまり詰まっていないエアリーなシルクモスリンで、サンローランはこれらを「羽のように軽やか」と表現していました。下はこれらのドレスのデザイン画。
(続きは後半で!)
Photographs : 濱 千恵子(Chieko HAMA)
Text : B.P.B. Paris