
LVMHプライズ創設者でクリスチャン ディオール クチュール会長兼CEOのデルフィーヌ・アルノー(中列中央)と、セミファイナリストたち。© Courtesy of LVMH Prize
パリ・ファッションウィークの期間中に、LVMHプライズ(LVMH Prize for Young Fashion Designers)のセミファイナリストを集めたショールームが開かれました。
13回目を迎えた今回は2,400以上の応募の中から、日本のシンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)とシュタイン(SSSTEIN)を含む20ブランドがセミファイナリストに選出。会場となった老舗百貨店サマリテーヌに、個性に富んだコレクションが一堂に会しました。

セミファイナリストのショールーム。ここには審査員をはじめ、メディア関係者やファッション界のエキスパートが来場。国内外から召集されたデザイナーたちとのインタビューセッションが行われた。
若手ファッションデザイナーを支援するLVMHプライズが対象とするのは、18歳から40歳までの世界中のファッションデザイナー。セミファイナリストに選ばれること自体、狭き門なのです。
シンヤコヅカのデザイナー小塚信哉さんは、これまで何度も応募してきたと言います。
「今回が最後のチャンスでした。通過の連絡を受けた時は、びっくりしましたね。光栄なことですが、手段と目的が逆にならないようにしなければ、と思っています。“プライズを取るためのものづくり”じゃなくて、“ものづくりを補助してもらうためのプライズ”ということは、ずっと心に留めています。そこだけは間違えないようにしたいです」

大阪出身の小塚信哉は、2013年にセントラル・セント・マーチンズのメンズウェア学科を卒業し、’15年に自身の名を冠したブランドを立ち上げた。昨年1月にはピッティ・イマージネ・ウオモに参加し、欧州では初となるランウェイショーを披露。国際的な評価を高めている。

シンヤコヅカのスタンドより。コレクションは、自作のテキストをもとにイラストを描き、それをデザインに落とし込んでいくという、独自のプロセスで作られている。

2026-’27年秋冬シーズンは、道に落ちていた片方だけの手袋からイマジネーションを広げ、ただの無機質な手袋が、誰かの帰る場所になるという、温かなストーリーが展開された。
もう一人の日本人、シュタインの浅川喜一朗さんは、去年に続き2回目の挑戦でした。
「本当に嬉しかった、というのが一番の気持ちです。せっかくこのような機会をいただけたので、丁寧にきちんと自分が作っているものを発表していきたい、という思いです。次の段階に行けたらやっぱりいいですよね。また新しい方々に見ていただけることになりますから」

独学でデザインを学んだ浅川喜一朗は、2016年に国内外のブランドと古着を扱うセレクトショップ「キャロル(carol)」を開店。ヴィンテージの服を解体し再構築する経験の中で、自ら作り共有する喜びを見出し、同年よりシュタインを始動。今年1月、パリ・ファッションウィークに公式参加する。

シュタインのスタンドより。ミニマルで飽きのこないデザインが特徴のワードローブは、徹底してこだわった上質な素材とディテールが魅力。

2026-’27年秋冬シーズンは、ささやかな幸福感やどこか懐かしい感覚が投影された。縮絨と起毛をかけたフランネルは柔らかな手触りで、光沢のあるカシミアのような質感になっている。
ファイナリスト8ブランドの発表は、まもなくです。
【気になるセミファイナリストたち】
デヴァリ(THEVXLLEY)/ Daniel del Valle Fernandez


スペイン生まれ、ロンドンを拠点に活動するダニエル・デル・ヴァイエ・フェルナンデスは、彫刻、パフォーマンス、モードなど、様々な表現形態を横断するアーティスト。作品には自身の経験が色濃く反映され、個人の関心や執着などが込められている。植物モチーフが豊富で、セラミックのビュスチエなど、意外性のある素材を使った創作を見せている。
ジュリ ケーゲル(JULIE KEGELS)/ Julie Kegels


ベルギー出身のジュリ・ケーゲルは、アントワープ王立芸術アカデミーを卒業後、2024年にブランドをスタート。着る人の個性を引き出す日々のワードローブを提案し、女性は一日の中で複数のアイデンティティを持ちうるという考えのもと、フェミニンかつユニークなアイデアが光るコレクションを打ち出している。
ペトラ フォーゲストロム(PETRA FAGERSTRÖM)/ Petra Fagerström


スウェーデン人デザイナーのペトラ・フォーゲストロムは、パーソンズ・パリを経て、2025年にセントラル・セント・マーチンズを卒業。’23年のイエール国際フェスティバルで2冠に輝いた実績も。見る角度で表情を変えるレンチキュラー・プリーツが持ち味。ロンドン・ファッションウィークでも次世代デザイナーとして注目される。
アクトN°1(ACT N°1)/ Luca Lin


中国にルーツを持つイタリア人のルカ・リンは、モデリストの経験を持つデザイナー。2016年に自身のブランドを立ち上げ、ミラノ・ファッションウィークに公式参加する。着想源は、多文化的な背景と幼少期の記憶。創作の中心には、フォルム、構造、パターンメイキングの探求があり、クラシックな服を実験的なカッティングによって現代的なスタイルへと昇華している。
Photographs : Chieko Hama
Text:B.P.B. Paris