『1997 ファッション・ビッグバン』展より。
パリ市立モード美術館「パレ・ガリエラ」で1997年にスポットを当てたユニークな展覧会『1997 ファッション・ビッグバン(1997 Fashion Big Bang)』を開催中。
1997年といえば、衰退していたオートクチュール界が活気を取り戻した年。21世紀の幕開けを目前に、ファッション界全体でも重要な転換期であったことが展覧会を通じて語られています。
この年の1月、フランスの歴史あるメゾン「クリスチャン・ディオール」は、アーティスティックディレクターにイギリス人デザイナーのジョン・ガリアーノを起用し、オートクチュールコレクションを発表。同じく「ジバンシィ」もイギリス人のアレキサンダー・マックイーンによる初のオートクチュールを披露し、大きな注目を集めました。ジャンポール・ゴルチエやティエリー・ミュグレーといった’80年代のスターデザイナーが、オートクチュールに参入したのもこの時。『ヴォーグ・パリ』誌は、このシーズンを「ビッグバン」と言い表したそうです。
ガリアーノによる「クリスチャン・ディオール」1997年春夏オートクチュールコレクション。創立50周年を記念した回でもあり、ショーには50点の作品を纏った50人のモデルが登場した。
写真上:マックイーンによる「ジバンシィ」1997年春夏オートクチュールコレクション。前任者は「クリスチャン・ディオール」に移籍したガリアーノだった。下:続いて発表された「ジバンシィ」’97-’98年秋冬オートクチュールコレクション。
創立20周年を迎えたジャンポール・ゴルチエ初のクチュールコレクション(1997年春夏)。
オートクチュール・ウィークに招待メンバーとして初参加したティエリー・ミュグレー。昆虫をテーマにフューチャリスティックなコレクション(1997年春夏)が展開された。
プレタポルテ’97年春夏では「メゾン マルタン マルジェラ」の『ストックマン(Stockman)』、「ヨウジヤマモト」の『オマージュ(Hommages)』など、数々の衝撃的なコレクションが登場。「コム デ ギャルソン」の変形した身体を表現した『ボディ・ミーツ・ドレス、ドレス・ミーツ・ボディ(Body Meets Dress, Dress Meets Body)』は、モダンバレエの巨匠振付師マース・カニングハムの創作意欲をも掻き立てました。
’97年春夏コレクションより。「メゾン マルタン マルジェラ」の『ストックマン』(左)と「ヨウジヤマモト」の『オマージュ』。
マース・カニングハムは「コム デ ギャルソン」の『ボディ・ミーツ・ドレス、ドレス・ミーツ・ボディ』にインスパイアされた作品を’97年に初演。写真は、その舞台のためにデザイナーの川久保玲が手がけた衣装。
また、’97年は名門メゾンに若いアーティスティックディレクターが相次ぎ就任。「ルイ・ヴィトン」にマーク・ジェイコブス、「バレンシアガ」にニコラ・ジェスキエール、「エルメス」にマルタン・マルジェラ、「クロエ」にステラ・マッカートニーと、話題に事欠かない年となりました。
「ルイ・ヴィトン」はジェイコブスを起用し、’98-’99 年秋冬よりプレタポルテ界に進出。
写真左:アルベール・エルバスによる「ギ・ラロッシュ」’97-’98 年秋冬コレクション(左)と「マルティーヌ シットボン」’97-’98 年秋冬コレクション『ツリー』。右:「ラフ シモンズ」’98 年春夏コレクション『ブラック・パームス』。
「ジェレミー スコット」’98 年春夏コレクション。
さらには、時代の寵児となったセレクトショップ「コレット」がオープンした年であり、デザイナーのジャンニ・ヴェルサーチ、ファッションリーダーであったダイアナ妃の悲劇的な死も忘れることはできません。
今展では、50点以上のシルエットと共に、ビデオや未公開資料も紹介。四半世紀前の激動の年、ファッション界の明確なターニングポイントであったことが強く感じられる展覧会です。
●『1997 Fashion Big Bang』展
パリ市立モード美術館「Palais Galliera」
10 avenue Pierre 1er de Serbie, 75116 Paris
2023年7月16日まで。
10時〜18時(木曜は21時まで)
月曜休館
入館料一般:15ユーロ
Photographs:Chieko Hama
Text:B.P.B. Paris