Chika Kisada（チカキサダ）感情を揺さぶる魅惑の“赤”が生み出す強いエレガンスRakuten Fashion Week Tokyo 2025 S/S レポート

幾左田千佳さんが手がける「Chika Kisada（チカキサダ）」がRakuten Fashion Week TOKYOで2025年春夏コレクションを発表。
会場は、コンクリート打ちっぱなしの無機質な地下スタジオ「THE FACE DAIKANYAMA」。ほの暗い空間の中、スポットライトに照らされた椅子に女性チェロリストが座って演奏を始めると、ライトが徐々に明るくなり、ゆっくりとした足取りでモデルが登場する。今季、チカキサダは、酔った状態、陶酔、中毒になりつつあるなどの意味を持つ「Intoxication」をテーマに、誘惑の赤をメインカラーとしたコレクションを展開。モデルは真っ赤な口紅をさし、ヘアはあえて無造作に。どこかミステリアスでセンシュアルな雰囲気を纏う。

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ファーストルックにはレース編みのボディスーツとタイツを披露。インナーには、かぎ編みの大ぶりな花モチーフを胸元に施した、高度な編み技術で作られたというタンクトップのボディスーツを合わせてレオタード風に。バレリーナのバックグラウンドを着想源とするブランドらしい一着だ。

前シーズンも登場したコルセットは、古着をリメイクすることで制作。USEDのパジャマやレザージャケットを解体し、コルセットとして再構築したのち、さらに上からチュールで覆って仕上げている。人が服を愛用していた時間に美しさを感じるというデザイナーの思いから、使用感を残したままに、今季はセミオーダーにて販売も予定している。

ブランドが得意とするテーラードも見逃せない。肩から胸元までを大胆にカットし、ラぺル部分にかぎ編みのニットをドッキングしたジャケットには、クールさとセンシュアルな色香の両方が漂う。他にも、後ろ身頃のホックでウエストラインを絞ることができるピンクのレザージャケット、テーラードとチュールドレスをミックスしたようなアシンメトリーなデザインのロングベストなどが見られた。

今季のキーカラーとなった赤はシューズにも。チュールを巻きつけたサボサンダルは随所に登場し、ラメ加工のきらめきも相まってコレクションにアクセントを加えていた。赤のほか、ブラック、ブラウン&グレーの3色で展開する。
また、コレクションのムードに変化を与えたポリエステル地のジャケットとパンツのセットアップも赤色で披露。スポーツウェアを彷彿とさせるこのジャケットは上品な花の織柄のテキスタイルで、さらに同柄のショートパンツはコルセット風のデザインになっており、ブランドらしいエレガンスをみごと日常使いに昇華した。

チカキサダの代名詞であるチュールは、ドレスやシャツ、パンツ、ウエストバッグなど多様なアイテムとして展開。ラストには真っ赤なチュールがふんわり広がり、フロントのスリットからは赤いサテンパンツがのぞく、力強いドレスルックを披露。ブランドが表現し続けてきたバレエダンスのエレガンスにパンクの要素を融合したコレクションは、鮮烈な赤色のマジックも大きな効果を発揮して見る者を陶酔させた。

“Intoxication”
辺りに漂っている赤くて強い香り
赤い閃光
くっきりと赤く塗られた唇
わたしの意識は浮遊する
どこにもない物語の世界で好きに遊べるから
さまざまな感情は薄い膜となり
衣となって私に絡みつく
わたしの周りにわたしを追いかけるようにわたしにスローモーションでぶつかってくるように
暗闇に浮かぶ月の孤独
暗がりはとても居心地がよい
心のどこかの思いがけない場所をこじあけられたようだ
ー幾左田千佳ー