吉澤嘉代子が、EP『若草』を11月15日にリリースする。これは“青春”をテーマにした二部作の第一弾で、第二弾となるEP『六花』は2024年春にリリース予定だ。
2014年にメジャーデビューして以来、歌詞を含めた才能が評価されてきた吉澤。特に最近は、吉岡里帆が主演した映画『アイスクリームフィーバー』(2023年7月公開)の主題歌「氷菓子」を担当したり、ますます注目度が高まっている。そんな今、吉澤が『若草』に込めた想いとは。一曲一曲、ていねいに話を訊いた。
Interview & text: Miho Takahashi
――まず“青春”をテーマにしたEPを二部作でリリースしようと思われた理由から伺いたいのですが、いかがでしょうか。
青春の光と影というように分けた作品にしようと思って。今回の『若草』は光や煌めき、来年リリースする『六花』は影……切なかったり、儚いものを描きたいと。
――吉澤さんにとって青春とは、いつか描きたかった魅力的なテーマなのでしょうか。
青春というはっきりとしたキーワードがあったかどうかは定かではないんですけど。これまでずっと、内省的なテーマというか、自分と対峙するようなアルバムが多かったので。前回の『赤星青星』(2021年3月リリース)からは、対人関係を描いていきたいと思って。前回で、ひとり増えてふたりになったので、今回はさらに輪を広げて、仲間とか友情とかを描きたいと思ったときに、青春がテーマになるかなあと。
――吉澤さんは、曲が生まれてくるままにパッケージしていくというよりは、作品ごとにコンセプトを決めるタイプのスタイルなんでしょうか。
そうですね。いつも、人生の中で大切な、普遍的なテーマは作品に落とし込んでいきたいと思っていて。次はこんなの作ろう、次の次はこんなの作ろうっていうのは、いつも頭の中にあります。
――では、そんな中で今回のテーマとなった青春とは、吉澤さんにとってどんなイメージ、またはどんなものだったんでしょうか。
今作に「青春なんて」っていう曲があるんですけど、それが私の中でひとつの答えになっていると思っていて。渦中にいるときにはわからないけれど、通り過ぎたときに気付くものが青春なのかなと思っていて。たとえば高校生の頃とか、今思うとバンドとか組んでいてすごく青春だったんですけど、“青春”っていう言葉自体もピンとこなかったですし、なんならちょっと苦手な言葉だったんですよね。でも、大人になればなるほど、青春っていうものにすごく素直になれるというか。なんかこう、懐かしく思えたりとか、美しいものとして捉えることができるというか。今回の制作でも、それは感じたんですけど。「セブンティーン」っていう曲は、17歳の頃に書いたんですけど、当時はすごく、世間とは? 大人とは?というように、ちょっと尖った気持ちがあって作ったんですけど。リリースするにあたって修正するときに、どうしても、キラキラしたフィルターをかけて曲を書き直そうとしてしまう自分がいて。それは、私が大人になったからなんだなって思ったりしました。
――もしかしたら、通り過ぎたからこそ書けるテーマなのかもしれないですね。
そうかもしれないですね。
――あと、アー写がプリクラじゃないですか。これも、青春を表現するうえでは必要だったんでしょうか。
そうですね。「ギャルになりたい」っていう曲に《プリクラ》っていう歌詞も入っているんですけど。自分の世代も子どもの頃はプリクラ撮ったな、とか。あと、プリクラを交換する文化があって。だけど、自分の持っているプリクラが少なすぎて、幼なじみにもらったプリクラを「(写っているのは)自分だ」って言い張って渡したりとか(笑)。それで、プリクラだと印象が違うんだね、って言われて(笑)。
――なんて告白(笑)。たしかに、友達が多い子はたくさんプリクラを撮っていたり、持っていたりしましたよね。
バロメーターになっていましたよね。戦闘アイテムみたいな。なので、苦い思い出でもある(笑)。
――でも、そこで「自分だ」って言い張って見栄を張るとか、プリクラが少ないから友達が少ないんだって落ち込んだりとか、それそのものが青春な気もします。大人になったら吹っ切れて、私のプリクラは少ないんだ、みたいな自虐的なことも言えちゃうじゃないですか。
そのときは絶対に言えなかったんですよねえ……。
「氷菓子」
冷たくて熱い、甘くて苦い。
恋する私たちはいつも矛盾している。
届かなくても、叶わなくても、
ひかりを編み続けていたい。
――ここからは一曲ずつ詳しく伺っていきたいと思います。1曲目の「氷菓子」には、《霜焼け》という表現が出てきますけど、吉澤さんの歌詞の臨場感を象徴していると思っていて。なぜ、この描写を持ってきたんでしょうか。
アイスがテーマの映画(『アイスクリームフィーバー』)に主題歌を書き下ろすというところから、「氷菓子」というタイトルにしました。冷たさと、その冷たさから生まれる熱さの、ひとつの例が霜焼けだと思って。その相反する部分が、「氷菓子」にぴったりだと思って。
――この感覚を表現するには、どんな言葉があるだろう?って、自分の経験を思い返していくプロセスも、歌詞を書く上ではあるんでしょうか。
思い返せる経験はすべて思い返すんですけど、小説や映画で観聴きしたものを必死でかき集めて曲にしている感じですね。霜焼けって、すごく切実な感じがするというか。切羽詰まっているというか、余裕がないというか。それが、「氷菓子」の中にある激しい片思いの感情と相性がいいと思ったんですけど。自分は霜焼けを体験したことはなくって。
――想像力で、こんなに臨場感がある歌詞を書けるんですね。
想像だけで食べてきました。
――映画のタイアップも楽しめましたか?
何もないところから作るよりは、テーマやモチーフがあったほうが、大喜利感覚で楽しむことが増えるとは思いますね。「氷菓子」に関しては、また別の気持ちがあって。ずっとお世話になっているアートディレクターに、どんな気持ちを返せるかなって、手紙みたいな感覚で書いたので。大喜利とは違って、苦しんだところもあったんですけど。
――手紙みたいに書いたからこそ、こんなに切実に伝わってくるんだなって思いました。
ありがとうございます。最初は映画の登場人物に想いを重ねて書きたいと思っていたんですけど、だんだんわからなくなってきて。この曲でいちばん自分が何をしたいかっていうと、監督に喜んでもらうことだなって思って。もう一回、まっさらに気持ちで作り直して、こんなふうな書き方になりました。
「青春なんて」
何にでもドキドキした
あの頃には戻れないけれど、
いつか今日の私たちのことも
キラキラしたフィルターをかけて
思い出すのだろう。
――「青春なんて」は、EPのテーマが青春と決まってから作ったんでしょうか。
そうですね。なので最近書いた曲ですね。
――歌い出しのアナログな音色もたまらないです。
曲を作り始めた高校生の頃は、テープレコーダーで吹き込んで曲を作っていて。そんなことも思い出したりしました。
――まさに青春時代の作り方。
そうですね。
――《青春なんてすり剥いてから気づく/ただ風にさわっただけ》という歌詞がありますよね。これで、つい思い出してしまったのが、先日テレビで作詞家の松本隆さんが吉澤さんの才能を絶賛されていて。松本さんと言えば「風をあつめて」(はっぴいえんど)を筆頭に、“風”を使った表現が印象的ですけど、吉澤さんも松本さんに対するリスペクトがあるのかなあって。それとも、たまたま青春と風が結びついたのか、どうなんでしょう。
意識していなかったんですけど、『若草』も『六花』も、風のモチーフがたくさん入っていて。それは、自分の青春観が影響していると思っていて。あとから、ちょっと心の中が火傷しているって気づく、思い出すとひりつくみたいに、青春って痛みを伴うなって。そこに、吹き抜けた熱い風、その後みたいな感覚があります。
――あとから気づきませんでした? 風と言えば松本さんだって。
あとから思いました。松本さんの風と、自分の使い方が同じかどうかはわからないんですけど、風っていうものに惹かれているんだなあって思って。
――さきほどおっしゃっていた“火傷”って、「氷菓子」でも出てくる言葉ですけど、耳だけではなく、五感に響く表現を目指していらっしゃるんでしょうか。
そうですね。できることなら、感触や温度、匂いとか、五感を刺激するような情景を描きだせたら、すごく素敵だなとは思います。松本さんもそうだなって思っていて。松本さんが好きだから、どこかですり込まれていたものを、さも自分がって思っているのかな?(笑)。
――でも、自然に出てくるんだから、表現が受け継がれているということなんだと思います。
ありがとうございます。
「セブンティーン」
17歳の私が書いた、
大人になった私へのメッセージ。
絶対に戻りたくはないけれど、
どうしたってまばゆい青春。
――「セブンティーン」にも、《風のかたちは季節の中に忘れられる青春》と、風が出てきますよね。
そうですね。
――これは、“吉澤嘉代子とナインティーズ”で演奏されていますが、このバンドありきの楽曲なんですか?
曲は17歳のときに書いたんですけど、いつかリリースしたいなと思っていて。今回、青春をテーマにするということで、同世代のミュージシャンを集めて作りたくて、念願が叶ったという。仲のいいハマ・オカモト(B/OKAMOTO’S)くんとか、19歳のときに同じオーディションに応募していたTAIKING(G/Suchmos)くんとか。まだ(デビューして)10年なんですけど、されど10年というか。音楽の仕事を10年間やってきてよかった、再会!みたいな気持ちがあって、一周したような感覚があるよねって話していました。このメンバーでリハも3日間ぐらい入って、本番の録音に臨めたので、すごくバンド感があるというか。自分はソロなので、そういう作り方をしたことがなかったので、すごく新鮮でした。
――いつもおひとりで楽曲を完結させたり、「氷菓子」のように野村陽一郎さんなど編曲の方に入ってもらったり、そういう作り方をされていると思うんですが、今回バンドで作ってみて、どんなところが新鮮でしたか?
もちろん、アレンジャーを立てて作るときも、どう思う?とか聞いていただきながら進んでいくんですけど、今回のナインティーズでは、ずっと一緒に選択しているような感覚というか、バンドってこんな感じなのかな?っていう。バンド体験でしたね。「セブンティーン」に関しては、一発録りというか、同じブースで輪になって、せーので録ったんですけど。そんな自由な録り方は初めてだったので、街スタに入ったような、高校生の頃にトリップしたような、懐かしい気持ちがすごくあって。録り終えた瞬間みんな「やった!」って、感動しちゃったというか。みんなも、泣きそうになっちゃったって。ただただ楽しかったです。
――17歳のときに作っていた青春の種が、今ナインティーズのみなさんで水をあげて花開いたかのような。レコーディングの様子に、現在進行形の青春を感じますね。
そうですね、青春でしたね。味わいました。
――また青春が味わいたい、青春を体現したい、だからバンドでやろうという意図もあったんでしょうか。
そうですね、それもありましたね。青春を体験しながらも音楽に落とし込みたいっていう下心はあったと思います。
――今さらな質問なんですが、バンド名は何故“ナインティーズ”なんですか?
みんな90年代生まれで、ほとんど同い年なんですよ。みんなの共通点ということでナインティーズになりました。
――同世代感って好きだったり、大事にしていたりします?
今回のEPも、次作の『六花』もそうなんですけど、私たちのゆとり世代っていうのは、すごく意識して……意識というか、自分にとって平成が青春でもあるので、ひとつ形に残しておきたいなあというのはありますね。
「ギャルになりたい」
金髪になってもプリクラを撮っても、
ギャルにはなれない人生だった。
永遠の憧れをこの歌で弔おう。
――「ギャルになりたい」という曲もあって。ギャルに憧れがあったのかな、どんなギャル観を持っていらっしゃるのかなって、思いながら聴いていたんですが、いかがでしょうか。
ギャルのイメージも、時代とともに変わってきていると思うんですけど。私、埼玉生まれなんですけど、子どもの頃は、ギャルとヤンキーってイコールだったんですね。なんていうんですかね、ツッパリに憧れているっていうのはありました。まったくそういうタイプの人間じゃないまま今まで来ているので(笑)。ジャスコのフードコートで喋っている、たむろしている少女たちを遠巻きに見て、憧れていました(笑)。
――それは、彼女たちの自由さに憧れていたんでしょうか。
強さに憧れていましたね。たぶん、私がその場でケンカ売っても負けちゃうんだろうな、みたいな(笑)。すごく強く見えて、いいなあって。
――見た目もだけれど、どちらかと言うと精神性みたいなところに対する憧れでしょうか。
ああ、そうですね。跳ねのけられる力がある、みたいなイメージを勝手に抱いていて。自分を通せる強さを感じて、そこに憧れていました。
――吉澤さんのギャル観が反映されているというか、《心はいつでもハイビスカス》とかのギャルワードもふんだんに聴こえてきて。あの時代のギャルのイメージを盛り込みたい、という気持ちもあったんでしょうか。
めちゃめちゃありましたね。なので、検索したり、ギャルの友達に聞いたり。やっぱり、ギャル特有のキーワードってあるので、そういうものを、すごくステレオタイプなイメージですけど、ちりばめたいと思って。ギャルになれたいけど一生なれなかった側から見たギャル像、みたいなものを曲にしました。子どもの頃よりもさらに、大人になって落ち込んだりしたときに、心の中で想像するというか。気にしなくっていいよ、どうにかなるっしょ、みたいに言ってくれるというか、イマジナリーフレンドみたいな。その象徴ですね、この曲は。
――歌っているときは、ギャルの強さがみなぎってくるんじゃないんですか?
そうですね、ノリノリでレコーディングしました(笑)。
――曲調も、「セブンティーン」とは一転してエレクトロ感があって、ギャルらしくなっていますよね。
そうですね。アコースティックなパラパラソングを作りたいっていうのが念頭にあって。ライブでもパラパラを踊ろうかなって。
――(笑)。さっきバンドのよさを伺いましたけど、一曲ごとのふり幅を考えると、ソロだからこそバラエティーに富んだ作品になっている気がしますね。
そうなんですよね。バンドっていいなって思うんですけど。ライブでも、チューニングしているときに、誰かがしゃべってくれたりとか(笑)。楽屋でワイワイできたりとか。でも、自分が表現したい音楽って様々で。どういうジャンルをやりたいっていうよりは、そのときの物語を、主人公をどう切り取れるかっていうところなので、毎回サウンドを変えたいし。そう考えると、バンドはできないなって思います。
「夢はアパート」
老後は友達と同じアパートで暮らせたら、
そんなことを夢みて生きている。
我らナインティーズでよりよい未来をつくりたい。
――次の「夢はアパート」もナインティーズとやっていらっしゃいますけど。
そうですね。これは老後に、友達と同じアパートを借りて、違う部屋で暮らせたら楽しそうだよね、っていうところから作ったんですけど。すごく大切な音楽仲間と作りたいと思って。ほんとはみんなでコーラスも入れていたんですけど、男声コーラスがガッて出て、女ひとり男4人みたいな、奇妙な老後が浮かぶ感じになっちゃって(笑)。ごめん、カットしますっていう。
――(笑)。最初におっしゃっていましたけど、今回の作品は仲間を描きたいっていう。「夢はアパート」は、まさに仲間との理想的な関係性ですよね。とは言え《老後》というワードには驚きました(笑)。
そうですね(笑)。青春の作品で老後を歌うっていう(笑)。
――そこ、不思議なポイントなんですが、何かいきさつがあったんでしょうか。
うーん、これは実話というか。大学のときの同級生が、将来みんなで暮らしたい、みたいなことを言いはじめて。そのときは、へえーって思っていたんですけど、今になって、そんなふうに……大学のときの友達だけじゃなく、仲良しさんとみんなで、スープの冷めない距離で暮らせたら、それって最高な老後だなって。大学を卒業するときにできた曲なんですけど、今の気持ちにもぴったりだと思ったので録りました。
「抱きしめたいの」
自分はまだ愛せなくても許せなくても。
ひとりぼっちのお守りに。
――そして、最後には《鏡に映った 誰でもない私を 今日はまだ 心から/愛せなくても 許せなくても 私がいちばん 抱きしめたいの》というメッセージが響く「抱きしめたいの」が入っていて。どんな想いが込められているんでしょうか。
久しぶりに、自分のために曲を書こうって思って書いた曲です。自分が本当にしたいことって、自分を許すことだなって思ったんですけど、なかなかそれって難しいっていうか、すぐにできることではないと思っていて。それでも抱きしめたいと思っているんだよっていう、自分へのメッセージといいますか。私のことも助けてくれる曲ですね。
――自分のために曲を書こうとは、あまり思わないんですか?
そうですね。いつも主人公がいて物語を作るやり方が楽しくもありますし、やりたいことでもあるので。自分の身を削って作るのは、すごく……疲れますよね。作風としても好みではなかったんですけど。だから、生涯何曲かの中の、この1曲っていう感じです。
――自分を愛せないし、許せない感覚って、青春時代に抱えがちなもので、だからこそ今作に似合うと思うんですが。吉澤さんは、愛せないし許せないけど抱きしめるっていう感覚を、現在進行形でも持っていらっしゃいますか?
うん、そうですね。まだまだ自分を抱きしめることは難しいですね。でも、想い続けています。
――でも、その気持ちをひとつ楽曲に昇華することで……聴いている私たちも救われるんですけど、ご自身としても救われるところがあるんじゃないんでしょうか。
うん、そうですね。そんなふうにひとつずつ曲にして、そのときの自分が報われることで、溜め込んでいるものを昇華できるというか。自分の面倒くさい性格とかも、曲になるならよかったなって思えるので、そこで、自分でバランスをとっているような感覚はあります。
――この曲は、ギターの音色も素敵ですね。
君島大空さんが、私のギターを弾いて録ってくれたんです。せーので一緒に録って。もともと、ずっとライブで歌い続けていた曲だったので、ライブで発表している形が、お客さんにとってもスタンダードだなって思って、ライブで歌っているように録音しました。
――君島さんが、ご自身のギターではなく、吉澤さんのギターを弾いたのは、なんでだったんでしょうね。
たしか、君島さんもギターを持ってきてくれて、録音して聴き比べたりしたんですけど、自分の大事なギターを弾いてくれたので、私としてはうれしいというか。
――吉澤さんがご自身のために作った曲で、吉澤さんの大事なギターが鳴っているわけで、その相性のよさもある気がします。
君島さんは、いつも寄り添ってくれるというか、曲にとって、曲を書いた人にとって、いちばんいい方法を探してくださる方なので。すごく安心して任せられます。
――君島さんもナインティーズのみなさんもそうですけど、吉澤さんはソロだけど、素晴らしい仲間がいらっしゃいますね。
本当にありがたいです。ひとりじゃなんにもできないので。
――今回の『若草』が光で、次回の『六花』が影ということは、結構ダークな作風になっているんでしょうか。
そうなりますよね(笑)。でも、すごい暗いわけではないんですよね。しっとりした感じです。
――楽しみにしています。ところで、光を表現した作品を『若草』と名付けたのは、どうしてなんでしょうか。
タイトル、最後まで悩んで。決めた後にまた変えて『若草』になったんですけど。いちばんは、“若草”っていう言葉自体に、娘っていう意味があるっていう。『若草物語』とかありますけど、若草自体に“うら若き娘”という意味があって。ジャケットには、高校生たちの足元が写っているんですけど。そういう、フレッシュなイメージで名付けました。
――若草にそんな意味があったなんて、知りませんでした。調べたんですか?
もう、いっぱい。シソーラスにずっとお世話になっていますね(笑)。
――若草って、今の時代にあまり使われない言葉じゃないですか。今の令和の子たちには新鮮だと思うし、日本語の深みを教えてくれる吉澤さんらしいタイトルだと思いました。
ありがとうございます。
――来年1月からは『Live house tour“若草”』も開催されますね。
はい。久しぶりの全国ツアーで。『若草』が元気いっぱいなイメージだったので、ライブハウスで全国を回りたいと思って。ナインティーズのメンバーや、同世代のミュージシャンでまわれたら楽しいかなって思って、いろいろと準備しています。
――ライブハウスだし、オーディエンスも青春を満喫できそうですよね。
私も青春を追体験したいなって。楽しみにしています。
吉澤嘉代子
1990年6月4日生まれ、埼玉県川口鋳物工場街出身。2014年メジャーデビュー。2017年にバカリズム作ドラマ「架空OL日記」の主題歌「月曜日戦争」を書き下ろす。2ndシングル「残ってる」がロングヒット。2020年11月25日にビクターエンターテインメントよりシングル「サービスエリア」をリリース。2021年1月20日にテレビ東京ほかドラマParavi「おじさまと猫」オープニングテーマ「刺繍」を配信リリースし、3月17日に5th アルバム『赤星青星』をリリース。同年6月20日には日比谷野外音楽堂での単独公演を開催。9月29日に初のライヴブルーレイ「吉澤嘉代子の日比谷野外音楽堂」をリリース。2023 年7月12日に映画「アイスクリームフィーバー」主題歌として書き下ろしたニューシングル「氷菓子」をリリース。11月15日には「青春」をテーマにした二部作の第一弾EP『若草』をリリース。2024年春には第二弾となるEP『六花』のリリースも決定している。
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吉澤嘉代子
『若草』ビクターエンターテインメント
¥2,750通常盤(CD)
派手でポップなプリクラのアー写と、昭和以前の文学が匂う『若草』というタイトル。一見アンバランスながら、どちらも見事に、青春のノスタルジックにしてフレッシュなイメージが表現されている。収録されている楽曲にも振れ幅があり、特にアナログなバンド感がある「セブンティーン」から、ノイジーなイントロを挟んで、(吉澤いわく)“アコースティックなパラパラ”の「ギャルになりたい」の飛距離には驚かされるが、“青春”という軸と、それに伴う臨場感と文学性のある歌詞が、すべてを支えている。最後は、君島大空の美しいギターと、お守りのような歌詞の「抱きしめたいの」が、青春の痛みを癒してくれるはずだ。
「氷菓子」Music Video
「青春なんて」Music Video