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デジタルファッションの最先端をゆくHATRA(ハトラ)の取り組み。ミシンが使えなくてもデザイナーになれる時代が来る?
【ファッションデザインの未来】

『装苑』2022年5月号転載

ファッションデザインの未来

THE FUTURE OF FASHION DESIGN

HATRA 長見佳祐

「デジタルを通した発見から

新たな可能性の拡張」を目指す取り組み

デジタル上で服のパターンとその仕上がりイメージを3D化でき、近年はファッション界だけに限らず注目を浴びている3Dクロスシミュレーション。2017年頃からこの機能を取り入れているHATRA(ハトラ)の長見さんはそれらを使い分けして活用しているのだという。

「ある程度の仕上がりが見えるアイテムは3Dシミュレーションからそのままサンプル制作に入ることもありますが、仮縫いの前にイメージを共有するために使用することもあります。僕にとっては、ソフトウエアも服を作る際のひとつの道具で、デザインによって必要とする割合が大きく変わります。ただ、各制作スタッフとまだ存在しないもののイメージ共有がシームレスに進められる利点はどんな企画にもいえることかもしれませんね」

お話を伺ったのは

HATRA 長見佳祐(Keisuke Nagami )さん

2006年に渡仏。クチュール技術や立体裁断を学び、’10年にハトラを設立。コレクションを発信しながら新しい身体表現の在り方を模索。主な出展に’12年「Future Beauty -日本ファッションの未来性-」、’17年「JAPANORAMA」、’20年「Making FASHION Sense」などがある。

デザイン作業に3Dを取り入れることは、長見さんにとって、実は実務的に以前までとさほど大きくは変わっていないが、デジタル技術を通した発見などが、これまで見えなかったファッションの面白さにつながっているという。

「ファッションがデータ化できるようになって興味深いことは、様々なジャンルの人が服を作るようになっていること。その広がりは、これまでファッションとは無縁だった世界でのつながりができたり、物理的に不可能だったコラボレーションにつながるようなことも出てくると思います。一見、ファッションとは呼べないようなものも含め、広く身体表現にとっては、可能性を拡張できるきっかけになっていくものだと感じています」

デジタルの活用で広がる

表現の幅とクオリティ

2020年には、AIとアルゴリズムの活用で新しいパターンメイキングを提案する「シンフラックス」とのコラボレーションでAIによるデザイン柄をアイテムに起用した。

「2020-’21年秋冬は『鳥』というテーマでした。そこにリンクさせ、この取り組みでは『架空の鳥』をコンセプトにネット上の膨大な鳥の画像をAIに学習させて、この世に存在しない鳥像を描き出しました。商品は4種類だけのリリースでしたが、手法次第では理屈上は数万枚分の柄を描き出せる構造になっています」

↑↓2021年春夏。シンフラックスとコラボした架空の鳥モチーフのニット。柄に合わせた色の糸を選ぶのではなく、6原色の糸で柄や配色が構成されている。

泡の表面を鮮やかなプリント柄にしたアイテム。この色の再現もシミュレーション機能を活用。「また、透明なものの柄を作りたいと思い、CGソフト上でガラスの光をシミュレーションし、柄に起こしています。プリントや柄のシミュレーション操作は比較的容易で、誰でも3Dの利点を実感することができます」

泡の表面のマーブリングをマクロ撮影し、その模様をデジタルで再現。色のグラデーションや発色のよさが際立っているダブルジャカードのワンピース¥53,900 ハトラ

ガラスに反応するプリズムや乱反射をソフト内でシミュレーションして、透明感のある柄に落とし込んだ。作務衣風のコート¥49,500

3Dクロスシミュレーション

における効果と活用

クロスシミュレーションの場合、基本的には左右の2画面で構成され、左はアパレル関係者なら見慣れている2Dの型紙(CAD)、右はその仕上がりをシミュレーションした3D画面(写真上)。CADのパターンなどを変更すれば、その内容に沿ってシミュレーション画像も変化してくる。素材の質感なども細かく設定できるようになっており、仕上がりの軽さや人物の動きによって生じる服の揺れなどもリアルに表現させることが可能だ。

「そして、最終的に2次元の型紙としてマスターデータが残せるところもほかの3Dツールと比べて特徴的なところだと思いますね。画面上の型紙の触り方を知っている、もしくは既に服作りをしているパタンナーやデザイナーであれば、既存の技術を応用していきながら使うことができるので、トワルに対するセカンドオピニオンとして活用できると思います。当然、試作などで生地を無駄にしてしまうことも減り、そのリソースを想像力に変えることができます」

ウエアのモデリングを務めた

イメージビジュアル

「人物写真のように見慣れたビジュアルをCGで制作すると、何かしらの違和感に出くわすことがあります。それは単なるシミュレーションエラーではなくて、私たちが当たり前だと思っている世界の見方のほころびなんですよね。画面上で虚構を作っているようでいて、それは自分自身の内面を見つめ直すことにつながります。そういう発見が実際の服作りに反映されてデザインに幅ができる。ハトラの将来はその連続でありたいです」

【ファッションデザインの未来】

森永邦彦さんが手がけるANREALAGE

の取り組みはこちら

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