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【もっと知りたい!フランスの田舎のミュージアム ⑦】
ドーバー海峡を渡ったレース / カレ編

フランスの地方には、意外と知られていないステキなミュージアムがいっぱい。その土地に根づいた伝統工芸、アート、モードの魅力を発見してみて。

19世紀初頭、イギリスで生まれた革新的なレースの織り機は、職人たちの手によって解体され、密かに海を越えました。辿り着いた先は、フランス北部の港町カレ。ここで受け継がれた技術は、やがて世界のモードを支えるリバーレースとして花開いていきます。

今回、ご紹介するのはカレにある「レースとモードの都市(Cité de la dentelle et de la mode)」。最高級レースとして知られるリバーレースを中心に、様々なレースの製造技術、産業の歴史、ファッションへの応用など、多角的にレースの魅力を伝える博物館です。

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リバーレースの誕生秘話    

レースとは無縁だったカレに大きな転機が訪れたのは1816年。ドーバー海峡を越え、イギリスから3人の技術者がチュール(六角形ネット)の製造機を持ってやってきたのです。産業革命が始まっていたイギリスでは、職を失うことを恐れた手工業の労働者たちが反乱を起こし、機械を破壊するというラッダイト運動が激化していました。

国に多くの富をもたらす技術の輸出は固く禁じられていましたが、彼らは解体した機械を小さな船に乗せ、逃れるように一番近いカレにたどりついたのです。それから、この地域には瞬く間に多くのチュール工房ができました。さらに1830年代には、薄く質のよいチュールの製造機「リバー」に、リヨンで発明されたジャカード織機のパンチカードを応用し、さまざまな模様の入ったレースが作られるようになります。そのレースはリバーレースと呼ばれ、カレの一大産業になるのでした。

皇妃ウージェニーとともに広まったレースの流行

リバーレースの製造者が、最初に目指したのは手作りレースにより近づけることでした。今でこそリバーレースは最高級品とされていますが、初めは大衆向けとして扱われていたのです。ナポレオン3世の時代になると、ブルジョアも庶民も流行を追い、ファッションはめまぐるしく変化していました。

故マリー・アントワネット王妃の賛美者で、当時のファッションリーダーだったウージェニー皇妃は、王妃が身につけていたアランソンやアルジャンタンレースをはやらせ、彼女が着用したクリノリンはすぐに女性たちの間に広まっていきます。大きく膨らんだスカートのドレスには、ゆったりとしたレースのショールや幅の広いレース飾りが必要でした。こうして、大量に安価で作れる機械レースが手作りレースに取って代わるようになったのです。

急速な技術の発達により、驚くほど精緻な模様を生み出せるようになった機械レースは、数々の博覧会でも成功を収めます。特に、種類が豊富で、極細の糸による複雑な模様の表現を可能にしたリバーレースは、著名メゾンのオートクチュールやランジェリーに使われるようになっていきました。

フランスから世界へ、人々を魅了し続ける至高のレース

現在、世界のリバーレース機の9割がフランスのカレとコドリーにあり、ここで作られるレース「Dentelle de Calais(カレのレース)」の約8割が海外へ輸出されています。1910年にカレに2708台あったリバーレース機は250台ほどに減ってしまったそうですが、今でも100年以上前の古い機械が使われ、熟練工によってレースが作られているのです。同時に、ストレッチやマイクロファイバーのレース、エコロジーを考えた植物繊維のレースなど、時代のニーズに合わせた製品の生産も、カレにおけるレース産業の発展に寄与してきました。

こうして、19世紀に開花し、モードと共に歩んできたリバーレースは、時代を経ても変わらぬ美しさで、世界中の人々を魅了し続けているのです。

Cité de la dentelle et de la mode
135, quai du Commerce
62100 CALAIS
公式サイト

Photographs:Chieko Hama
Text:B.P.B. Paris

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