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文化服装学院を卒業し、技術で勝負する
パターンのプロフェッショナルたち
【文化服装学院100周年記念連載vol.7】

2024.01.09

GOLDWIN(ゴールドウイン

1950年、富山県小矢部市に「津澤メリヤス製造所」として創業。登山ソックスが評判を呼び、ʼ52年、一般メリヤスメーカーからスポーツウエア専業メーカーへ。「スポーツを通じて、豊かで健やかな暮らしを実現する」を企業理念に、富山本店は糸や素材の選定から加工、パターン設計、縫製、品質管理、生産管理などを行うマザーファクトリーの役割を担っている。2017年、本店に研究開発施設「ゴールドウイン テック・ラボ」を開設。実践的機能を重視したデザイン性の高いものづくりを行う。

商品研究部  アスレチックチーム リーダー 
小林達郎

人体に沿い、運動にかなう服を形にすることに喜びがある

 文化服装学院の服装科に入学した頃は、服飾を広く学びながら、1年かけて自分のやりたいことを決めようと思っていました。市場調査をもとにデザイン画を描き、パターンを引いて、縫製する。その過程の中で、描いたデザイン画を形にできるパタンナーの仕事に楽しさを見いだしました。当時の服装科の同級生は、ライバルというよりも、ものづくりを共にする仲間という印象。特色も個性も皆それぞれで、楽しんで作る日々の先に、自分の道を見つけようというマインドがあったと思います。文化での学びが役立ったことはたくさんありますが、素材への興味関心が湧いたことが最も大きなことでしょうか。何より、学生時代に物を作り上げる楽しさを実感できたことが今につながっています。

 小林さんのお仕事 

機能を満たし美しさを叶えるダンスキンのアイテム
(右) なめらかさとフィット感を両立したアロンジェ素材のレギンス。筋肉変化量の少ない位置に切り替えを配することでヨガやピラティスのダイナミックな動きに対応する高機能アイテム。プリントレギンス¥14,300 (中) デイリーからワークアウトまで着られるスポーツブラ。新開発のカップが4方向から胸を固定。ブラ¥4,950 (左) 肩や背中部分を大胆にカットし、ボディを美しく際立たせつつ運動を阻害しないミニマルなデザインのレオタード¥14,300 すべてダンスキン(ゴールドウイン カスタマーサービスセンター)

リブランドしたエレッセのリバーシブルTシャツ
両面同時プリントが可能で、環境にも優しいプリント技術“エアーダイ”によるTシャツ。縫製方法は凹凸が生まれないフラットシーマを採用し、脇の切り替えはテニスのスイング動作を解析した独自設計に。
Tシャツ¥11,000 エレッセ(ゴールドウインカスタマーサービスセンター)

 現在は、ダンスキンとエレッセのパターンを担当しています。ゴールドウインでは、必要な時間をかけて品質の高いものを開発し、ノウハウを蓄積しつつも、一度開発したものがどんどん進化していきます。同じシリーズやアイテムでも、素材や目的に応じてパターンが変わっていく。例えばスポーツブラならサポート力の違いで、レギンスなら素材によって、パターンも仕様も異なるのです。ダンスキンのスポーツブラは、胸の形をきれいに見せるカップの仕様と、通常のブラのように細かなサイズに対応していることが特長です。形をきれいに保ったまま着用でき、運動中に着ても、揺れを抑えて快適に過ごせるよう工夫をしました。レギンスのパターンは、素材の伸びやタッチ感、キックバック感の違いによって決まります。アロンジェ素材のレギンス(写真上右)には、文化服装学院の文化・服装形態機能研究所との共同開発で、皮膚伸長を阻害しない切り替え線を施しています。人体の構造や運動に適した着心地のいいものを作ることで、お客さまにこれが欲しかった、と喜んでいただけること──そこに、今の僕の仕事の喜びも詰まっています。

Tatsuro Kobayashi  
大学卒業後、文化服装学院服装科へ入学、服飾専攻科技術専攻卒業。2015年、ゴールドウインに入社。ザ・ノース・フェイスのパタンナーを経て、現在はエレッセ、ダンスキンを担当。

商品研究部 ザ・ノース・フェイス パフォーマンスチーム
吉井小弥太

着る人の役に立つ、目的を持った服を作りたい

 商品研究部の「TNF(ザ・ノース・フェイス)パフォーマンスチーム」で、現在は2024年秋冬の型紙を作っています。ザ・ノース・フェイスには二つのチームがあり、入社すぐの頃は、「ライフスタイルチーム」の配属でした。「ライフスタイル」では、機能的な日常着・街着を作り、「パフォーマンス」では、ランニングや登山、スノースポーツをする時に着る服を作ります。ザ・ノース・フェイスのすべての服の根幹に機能性がありますが、例えば、日常での動きやすさと、アウトドアシーンでの動きやすさは異なりますし、登山なのかスノースポーツなのかによっても必要な機能は変わります。今、僕はスノースポーツの服を担当していますが、スノースポーツならではの機能や着丈、裄丈の設定があり、腕の運動に応じたパターンや、ヘルメットをかぶるためのフードの大きさや形があります。すべてのデザイン、シルエットに意味があるんですよね。そうしたことを常に勉強しながら、新たな発見を得られることが、今の仕事の面白さです。

 吉井さんのお仕事 

ザ・ノース・フェイスのヌプシジャケット、キャンプシエラベスト
吉井さんが初めてパターンを手がけた、ザ・ノース・フェイスの2022年冬の製品。定番のダウンジャケットの“ヌプシ”やダウンパーカの原型といわれる“キャンプシエラ”を、トレンド感を加味して部分的にサイズ感を大きくしたほか、仕様も各所アップデートした。
ジャケット¥38,500、ベスト¥40,700 ザ・ノース・フェイス(ゴールドウイン カスタマーサービスセンター)

 僕は、大学卒業後に文化服装学院に入学しました。ものづくりを学びたくて文化に入ったので、課題も本当に真面目にやっていましたね。周りのモチベーションも高かったと思います。その中で徐々に、人の役に立つ服を作りたい、と考えるようになりました。制服や作業服、スポーツウエアなど、目的がはっきりした機能的な服を作れたら、と。それでゴールドウインの就職試験を受けたんです。ただ、文化では平面作図を中心に教わり、課題制作も平面で行っていましたが、会社は主に立体裁断だったので、初めはギャップに戸惑いました。先輩方に教えていただきながら、製品を作るという実践の中で今も勉強しているような感覚です。

 入社後、富山に来てからは、先輩たちの影響もありサーフィンをするように。近くに海や山がある環境で、以前から興味があったアウトドアもできて、楽しく過ごしています。

Koyata Yoshii  
大学卒業後、文化服装学院服飾研究科へ入学、服飾専攻科技術専攻に進学。卒業後、2020年、ゴールドウインに入社。ザ・ノース・フェイスのパタンナーを務める。

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