Akari Takaishi × Yuuka Eda
special talking
~ドラマ『墜落JKと廃人教師 Lesson2』のこと~
枝優花監督が大きな愛と熱い情熱を持って手掛けたドラマ『墜落JKと廃人教師 Lesson2』。放送が始まるまでの今が一番緊張しているという枝優花さんとヒロインを演じた髙石あかりさんのスペシャルトークです。あらためて作品製作時を振り返りながら、今だから伝えられること、二人だから話せること監督とヒロインの胸の内をここにお届けします。
photographs: Norifumi Fukuda (B.P.B.)
扇言の“ローからの鋭さ”のバランスが自分の課題でした——髙石あかり
―――放送を目前にした心境を教えて下さい。
髙石あかりさん(以下、髙石) 昨年の『墜落JKと廃人教師』(Lesson1)の撮影時から、続編ができたらいいなというのは、スタッフさんも我々もずっと思っていたので、年末に、続編ができる!と聞いて、信じられないほどうれしかったです。何よりも応援してくださっていた方たちや、続編を望んでくださっていた方たちに、早く言いたかったです。枝監督が撮ってくださったLesson2の1話と2話を、先日見させて頂いたのですが、こりゃすごい!と(笑)。本当に最高でした!
枝監督が前にSNSで「ビジュだけは約束させてください!」っておっしゃっていて、どんな感じになってるんだろうって思ったんですけど、キャラクター全員が良すぎて。監督という立場の方々には、それぞれの良さがあると思うのですが、枝監督は心の内側を、役の気持ちを汲み取ってくださる監督なんです。それが映し出されていて、私自身からも橋本さんからも、画面から感じる何かがありました。前回の墜落ともまた違うものが見えてくると思います。
枝優花さん(以下、枝) 昨年末に今作のお話をいただいて、ちょっとギリギリのタイミングだったので急いでDVDを取り寄せてLesson1の全話を見返し、原作もすべて読んだうえで、よし!と思いながらも、“2”をやることに怖さがありました。“1”のファンもいらっしゃいますし、こういう言い方が正しいのか分かりませんが、“1”をどう超えたらいいのかなと。私の中で、どんなラブストーリーにおいてもですが、シーズン1で二人の気持ちが通じてゴールを迎えると、その続編や特別版はファンサービス的なものになったり、“1”で完結してもよかったんじゃないかと感じてしまうことがあって。でも、やるからにはそうなったらまずい。もう怖すぎて、プロデューサーさんに、「続編をやるということは、人気だったからっていうだけじゃ許されない。だからこそ、Lesson2で、私に何を求めてるのかを教えてほしい。私に戦えるだけの武器をください」って伝えたんです。その返事で届いたのが、とんでもなく長文のLINEで。それを見たら、彼女と橋本さんと髙石さんがどんな思いで“1”をやって来たのかが分かったので、分かりました。やります!って(笑)。
今日の撮影でもずっとそばにいましたけど、プロデューサーさんはもう本当に髙石あかりと橋本涼のことが大好きなんです。私に求めるのは一つ、この2人をとにかく美しく撮ってほしいとオーダーされたので、まずは照明部や撮影部と集まって“1”の全話を良い所も悪い所も事細かに検証して、Lesson2でできることを細かく一つ一つ探して行った感じです。
髙石 そんな風に見てくださったんですね。めちゃくちゃ嬉しいです。
枝 シルエットや動き方、表情も。二人をものすごく観察しました(笑)。
髙石 全然気づかなかったです(笑)。
枝 お二人とははじめましてで。髙石さんの作品はよく拝見していたんですけど、作品ごとに、顔の雰囲気が変わる方だなという印象がありました。それに、まだ二人とも色んな変化をしていく年齢ですし、髪型やメイクでもかなり変わっちゃうので、実際に会ってみないと分からないことが多いなと思ったので、早くお二人に会いたかったですね。一番かっこよく、美しく撮れるのはどこかっていうのを探りたくて。
髙石 会ったら分かるものなのですか?
枝 分かりました。髙石さんは、想像以上に肌が白くてびっくりしました。その分、撮り方でかなり質感が違ってくるってことなんです。それよりも……“1”と比べると、顔がすごく変わったよね!
髙石 よく人からも言われますし、顔が違いすぎないかってコメントもありました。私自身も、“1”の1話を見たらあまりに顔も肌も違っててパニックで(驚)。だだだだ、誰っ?みたいな(苦笑)。
枝 ほんとそう。髪型が少し違うとかはあるけど、そういうことじゃないよね。
髙石 幼かったんでしょうか?1年でよくここまで変わったなって自分でも思います。
枝 メンタル的な変化というか、自分の中で自信がついたりしたんじゃないかな?
髙石 そうですね。今も緊張とかはもちろんするんですけど、何か、ちょっとした気持ちの余裕みたいなのが出てきてるのかなと。どん、と構えるというか、何とかなるって思うだけで、人と話す時の緊張がやわらいで、目を見てお話しできるようにもなりました。そういう意味では、お芝居のうえでも変わってきたのかなと思います。
枝 “1”のときは、二人ともまだ幼くて、チームとしても信頼関係というよりは、手探りな状況下で繋がってるように見えました。そこに入って行く私は新メンバーなので、その中で現場をどういう風に引っ張っていくべきなのか。“2”では、確固たる自信や安心感のもと繋がれたらいいなと思っていたし、自分ではそうしたかった。まあ、スケジュール的にはタイトで現場はてんてこまいでしたし、ほんとに主演の二人におんぶにだっこでしたが、上がりを見ていったときに、どっしりしてきたなと。二人が、それぞれの役のことを一番分かっているというのが見えたので、私も安心して撮れました。
髙石 “1”を見直すほどに、もっとこうしたいとか、もっと扇言に近づけたいっていう欲が出てきましたが、“1”でドラマ版の扇言を好きになってくださった方もいらっしゃるので、その扇言も変えたくないなというのと、もっとこうしたいという思い、その間はどこなんだろうって監督とも相談しながらリハーサルで探りつつやらせてもらったこともあり、“2”の撮影初日の最初のシーンで、「何やってるんですか?」っていう台詞を口にした瞬間、“2”の扇言はこれでいいんだと腑に落ちました。
前回は、すごくかわいい部分と落ちる部分、その振り幅を大袈裟に表現させてもらっていたからこその鋭さが出ていたんですけれど、今回はそもそも扇言ってローだよなって所に立ち戻って、“ローからの鋭さ”が自分の課題でしたが、枝監督と一緒に乗り越えられたと思います。
枝 チャーミングさとローと鋭さのバランスが扇言の魅力でもあるし、そのぶん難しさでもありました。“1”は、もう少し死の匂いが強かったんですけれど、“1”の終わりでは手を組めてるからそこへの恐怖は落ちている。それなら、“2”では「出会えてよかったと心から思える存在だとお互いが思うこと」をやりましょう!とプロデューサーと話していたんです。表情とかもちょっとは柔らかくなっててもいいんじゃないかって。ただ、そのバランスやギャグ感は編集で詰めましたが、一回繋いでもらったのを一つ一つ検証して、台詞を言う直前の表情とかも、細かく割っています。
髙石 割ってくださるから、焦って言葉を出さなくていいという安心感はありました。「一つ一つに“間”があっても平気だから」って枝監督に言われた時にすごくほっとした気持ちがありました。
枝 そのために割っているような所もありますね。役者が編集の繋ぎや尺を気にして、その“間”を詰めようとした時に、何かしら不都合が生まれるじゃないですか。それなら割って切るから、役者自身の“間”で、好きにやっていただいたほうがいい。でも、それを伝えたら橋本さんは、逆にこっちのことを考えて、調整の鬼になったんだけど(笑)。彼は、求められることに100%答えようとしてしまうし、できる人だから。でもここでは、自分の“間”と気持ちが1番大事なんだというような話をしましたね。髙石さんはそこの飛び方は自然にできるし、また違う特性があります。全然違う二人に対して、それぞれを演出をするのは楽しかったです。
髙石 そうだったんですね。橋本さんがすごいって思ったのが、先生があるシーンで一人になった瞬間、ふっと伏せた一瞬の目の動き。今までに見たことがなったような表情で。何度も撮り直していたシーンだったんですけど、その時に、枝監督はこれが撮りたかったんだなって思ったんです。
枝 役者って、自分の素や心や弱さを見せられることがすごく魅力になるんですよね。私は、二人の信頼関係のバランスも結構好きで。個人としてではなく、役者としての信頼関係がすごくプロフェッショナルで、すごくいいなって思っていました。踏み込み過ぎてもいないし、何かその絶妙な線引きをお互い意識してやってる感じとか、すごく信頼できるんです。
髙石 意識して調整してる部分もありますが、性格的にお互いのことを気にしてないところもあります。お芝居に集中しているからこそ、頼れるっていう信頼感は前回から変わらずに感じていました。カメラが回っていないところでも、人間と人間ではなく、役のままで居られるような場づくりというか気遣いがお互いにあったんだと思います。
苦労を苦労と思わずにみんながやる。そういうチームができたから、Lesson2が走り抜けられました。——枝優花
―――Lesson2で新たに起こった変化のようなものがあれば教えてください。
髙石 私自身は、心にちょっと余裕が生まれたことが大きかったかなと思います。前回の放送から、視聴者の方々や、ファンの方たちからいただいた言葉のお陰です。
枝 さっき話していたように、人は自信を持った時や、相手を信用できると顔が変わってくんです。自分としては、それをどこで獲得するかが勝負なんです。この人にならこの顔見せても大丈夫って思ってもらえるのか。初めてご一緒するスタッフもいますし、簡単に完璧なチームになれるわけではないんですけど、みんないい人たちで、撮影の後とかに御飯を食べに行ったりとかしたら、その日の現場の話をずっとして、明日からこの作戦で行こうとか。役者を支えるための連携プレーも練ったりして(笑)。それをいかに役者にバレずにできるのか、更に気を遣わせずにやれるのかとか。そういうことをずっと考えてる、本当にいいチーム。
現場以外の仕上げチームもいかによいものにできるのかをやっていて、例えば、髙石さんはすでにすごくかわいいけど、凄く肌が白いから、このシーンは少し赤味を足してもっとかわいくしようとか、細やかに一つ一つやってくださってるんです。すごく細かいことだから、めちゃくちゃ大変だけど、楽しい作業でもあるんですよね。役者さんに魔法をかけて行くような。苦労を苦労と思わずにみんながやる。そういうチームができたから、“2”が走り抜けられました。そういう思いでやりましたけど、そう思わせてくれる人たちがいたから。初めてお二人にお会いした時に、すごく単純に、この二人のためにやろう!って私は腹がくくれたんです。作品ごとに色んな現場があるけれど、何かが残る現場ってあると思うんです。いつか二人がもしもつらい局面に立つようなことがあったら、この作品の現場を思い出して、あの人たちがいるならまた頑張ろうと思えたり、人を信じてもいいと思ってもらえたらいいなと思いながらつくりました。
髙石 泣きそうなんで、やめてもらってもいいですか(涙)。もう胸いっぱいです。Lesson2の撮影中にひしひしと、チーム全員が一つのいいものを作ろうとする、それが作品への愛と言うか、人への愛と言うか、そういうものは感じて。だからこそ、この墜廃という作品が大好きなんです。それは、たぶん見てくださる方たちにも感じていただけると思います。今日こうして枝監督とお話するなかで、貴重な話をお聞きすることもできて、あらためてこの作品に出会えて良かったと強く思います。
枝 原作が素晴らしいですよね。ギャグが面白いからとか、キュンキュンがかわいいから人気なのではなくて。死にたかった時間がある、自分の人生を終えたくなるほどつらい経験がある人とない人とは全然違うと私は思っていて、人間にとってすごく大切なことだと思うんです。それでももう一度生きたいと思わせてくれるような人に出会えるってすごいことでもあります。そういう重苦しいことを、軽やかに表現してるっていうのがとても好きなんです。寄りで見たら悲劇だけど、引きで見たら喜劇で体現してくれていたら、何か救ってくれるものになるし、エンターテイメントとして一つ先に進めるというか。重過ぎるのも好きじゃないし、軽過ぎるのも勿体ないけど、丁度いい塩梅でできたかなと思っています。
―――今日は扇言ではなく、髙石あかりさんを枝さんに撮って頂きました。
髙石 ドラマのポスター撮影の時も思ったんですけど、カメラを向けられると全部見透かされてるって感じがするんです。見透かされてたらちょっと怖いなみたいなのもあるんですけど、それも枝監督は笑って愛してくれるかもって思っちゃうんです。人柄でもあり、それがたぶん信頼っていうことなんですかね。普段、写真撮影の時って、カメラマンさんのリズムがあってタイミングが分かるんですけど、枝監督ってリズムがなくて、ちょっとした瞬間にパシャってくるから、やめてーって!(笑)。だから枝監督の前では取り繕えないし、その取り繕えない姿を撮ってほしいとも思っているんです。それが今日の写真にも、ドラマの映像にも映ってると思います。私の知らない無意識の部分とか、何かそういうところが写真や映像になってるってすごく素敵じゃないですか。
枝 髙石さんと同じくらいの年齢の俳優さんたちと色んな作品をやってきたけど、その中でもずば抜けてトップで肝が座ってる人だなと思っていて、肝が座ってるんだけど、何か不思議なバランスでちょっとポンコツというか。
髙石 うんうん……、ええええええええっ!思わずうなずいちゃったんですけど、これは聞き逃せない!(笑)
枝 誉め言葉です!(笑) 自分を捨てていけるすごい力と潔さがある、それなのに少し抜けててチャーミングという意味です。潔くて強い人だなと思ってたのに、ちゃんと柔らかさまで持ってる。だから、髙石あかりという人が、これだけ求められてるんだなって編集作業をしながら考えてたんだけど、久しぶりにお会いしたら、現場では見えない顔が見られました。
髙石 えーーーー!(照)
枝 このチャーミングな魅力が、これからどうなってくのかすごく楽しみだなって今日、撮りながら思ってました。墜廃では出せなかった表情とかがやっぱりあるじゃない。自分はやっぱり自分にしか撮れない顔を取りたいからリズムも作らないんだと思いますよ。信頼関係を結べば、その顔を見せてくれるかなみたいな。なので今度は、また違う髙石を撮りたいな(笑)。
髙石 ぜひ!よろしくお願いします!
髙石あかり
Akari Takaishi●2002年生まれ、宮崎県出身。’19年4月より俳優として本格的な活動開始。’21年に映画『ベイビーわるきゅーれ』で初主演。「わたしの幸せな結婚」「セフレの品格 決意」など数々の作品に出演し活躍。2023年11月に第15回TAMA映画賞の最優秀新進女優賞を受賞。待機作に、映画『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』(’24年8月9日公開予定)、映画『きみの色』(’24年8月30日公開予定)、映画『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』(’24年秋公開予定)、ドラマ『ベイビーわるきゅーれ』(テレビ東京’24年秋に放映予定)がある。
公式サイト https://avex-management.jp/artists/actor/AKARI
X @takaishi_akari
Instagram @a_akari1219
枝優花
Yuuka Eda●1994年生まれ、群馬県出身。2017年に初長編作品『少女邂逅』を監督。主演に穂志もえかとモトーラ世理奈を迎えMOOSICLAB2017では観客賞を受賞。劇場公開し、高い評価を得る。香港国際映画祭、上海国際映画祭正式招待、バルセロナアジア映画祭にて最優秀監督賞を受賞。2019年に日本映画批評家大賞の新人監督賞を受賞。また写真家として、様々なアーティスト写真や広告を担当している。『装苑』にて、コラム連載「主人公になれないわたしたちへ」執筆中。
X @edmm32
Instagram @edmm32
©sora・白泉社「墜落JKと廃人教師」製作委員会・MBS
ドラマ『墜落JKと廃人教師 Lesson2』
2017年7月に『花とゆめ』(白泉社)でスタートした漫画家・soraの人気連載を原作にした実写作で、橋本涼が主演、髙石あかりがヒロインを務める。屋上で自殺しようとしていた女子高生・扇言(髙石あかり)が、物理教師の灰葉仁(橋本涼)に邪魔されてしまう。屋上での出会いから1年。惹かれ合うも決して一線を越えない二人。「Lesson2」は2023年4月に放送されたドラマの続編で、灰仁だけが知る二人の原点が明かされていく。
2024年6月18日(火)スタート
MBS 毎週火曜 24:59〜
TBS 毎週火曜 25:28~
公式サイト:https://www.mbs.jp/tsuirakujk2/
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