映画『パリ13区』より
映画というメディアそのものが「出会い」というものを表現することに長けたものであるけれど、特にフランスのジャック・オディアール監督は、「逢着」を描く達人だと毎回、唸らされてしまう。
逢着とは出あうこと。出くわすこと。行きあたること。偶然に導かれての出会いであるけれど、瞬く間に相手を求め、そして決定的にすれ違う。最新作『パリ13区』(2022年4月22日公開)は、中心に中華街を擁し、アジア系の移民が多く住んでいる13区を舞台に、台湾系フランス人のエミリー(ルーシー・チャン)と、エミリーの部屋へのルームシェアに申し込んできたアフリカ系フランス人の高校教師カミーユ(マキタ・サンバ)、そして法律を学ぶためソルボンヌ大学に復学したノラ(ノエミ・メルラン)の邂逅を描いたもの。3人はそれぞれ、求めている人生のビジョンにまだ手が届かずにいて、中途半端な状況で日々揺らいでいる。
2022年4月30日で70歳となるオディアール監督は、本作の脚本で『燃ゆる女の肖像』(’20年)で一躍世界のトップ監督となったセリーヌ・シアマと、初の長編映画『アヴァ』(‘17年)でカンヌ国際映画祭カメラ・ドールを含む4部門にノミネートされた若手の監督・脚本家であるレア・ミシウスと組んで、3人による共同作業によって脚本を手掛けた。高層ビルが立ち並ぶ再開発エリアをモノクロームの色調で染め、心の隙間を埋めるように身体を重ねる3人の姿を優しく見つめる。自分が最も欲しかった存在に気づくまでの道のりをどう描いたのか、オディアール監督に聞いた。
interview & text : Yuka Kimbara
『パリ13区』
カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『ディーパンの闘い』をはじめ、数々の名作を世に送り出してきたフランスのジャック・オディアール。『燃ゆる女の肖像』の大ヒットを受け、世界のトップ監督となったセリーヌ・シアマと、若手の注目監督、脚本家であるレア・ミシウスと共同で脚本を手がけ、モノクロの映像美で“新しいパリ”の物語を描き出した。舞台となる13区は、高層住宅が連なる再開発地区。中華街を擁し、台湾系、ベトナム系のアジア系移民も多く暮らす、雑多なルーツが交じり合う新しいパリを象徴するエリア。2021年のカンヌ国際映画祭で絶賛、セザール賞では5部門にノミネートされた。
ジャック・オディアール監督・共同脚本、ルーシー・チャン、マキタ・サンバ、ノエミ・メルランほか出演。4月22日(金)より、東京の「新宿ピカデリー」ほかにて全国公開予定。ロングライド配給。©PAGE 114 – France 2 Cinéma
ジャック・オディアール監督
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