日本で生まれ育ったクルド人のサーリャ(嵐 莉菜)を中心に、日本の難民問題をベースにした映画『マイスモールランド』。クルド人としてのアイデンティティに悩んでいた彼女が、初めて生い立ちを話せた聡太(奥平大兼)との時間が唯一の光のように感じる本作は、社会問題の現状を丁寧に描き、私たちに新たな視点を届けてくれる。今回は出演したふたりに映画のこと、そして、大好きなファッションの話も伺った。
photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.) / styling:Rina Uchida (Lina Arashi), Shogo Ito (Daiken Okudaira) / hair & make up : Kanako (Lina Arashi) , Akihito Hayami (CHUUNi Inc., Daiken Okudaira)/ interview & text : Yoko Hasada
『マイスモールランド』
クルド人の家族とともに生まれた地を離れ、幼い頃から埼玉で育った17歳のサーリャ。すこし前までは同世代の日本人と変わらない、ごく普通の高校生活を送っていた。しかし在留資格を失った今、バイトすることも、進学することも、埼玉を越え、東京にいる友人に会うことさえできない。彼女が日本に居たいと望むことは“罪”なのだろうか―?監督を務めた川和田恵真監督が、埼玉に住むクルド人の方々へ2年近く取材し製作された。本作が劇場長編デビュー作となる。
ある日突然、自分とサーリャが一致して。自分でも「役に入り込んでいるな」ってわかるくらい、自然に涙が出ました ──嵐 莉菜
──ファッションアディクトなおふたり。今日の衣装のポイントは?
嵐:レースの水色と緑色のリボンの組み合わせが、とっても可愛いと思って決めました。フェミニンな雰囲気なのに、スカートにスリットが入っていて大人っぽいし、スタイルがよく見えるのもお気に入りです。
奥平:僕は、生意気にも全身マルジェラです。意図したわけではなくて、偶然ですが。いつも、たくさん用意いただいた衣装の中から、自分で直感的に好きなものを選びます。最近、シャネルのこれまでのコレクションが収録されている分厚い本を読み込んでいたので、それっぽいものに手が伸びました。
──おふたりが制服姿で、河川敷で並んで座っていた映画のシーンとはまるで違っていて……あの場面は、クルド人のサーリャが自身の生い立ちなど不安を初めて人に吐露する印象的なシーンでした。嵐さんは、ご自身も五ヵ国のマルチルーツを持ち、サーリャが感じる疎外感や孤独に気持ちを重ねて演じられていたと、映画から感じました。
嵐:ありがとうございます。現場に入ったばかりの頃はサーリャの不安や境遇をまだ十分に理解できていませんでした。撮影を進めていく中で監督と何度も話して、サーリャのイメージを作っていきました。そんな中、ある日突然、自分とサーリャが一致して。自分でも「役に入り込んでいるな」ってわかるくらい、自然に涙が出ましたし、台本もスラスラ頭に入ってきました。
奥平:近くで見ていても、その憑依している感じはわかりました。
嵐:入り込めるようになったのは、たぶん聡太とのシーンが始まってからなんです。サーリャにとって聡太は“居場所”なので、感情が自然と表情に出る。彼女が考えていることや不安に思っていることに、聡太を通じて向き合えたんだと思います。
映画『マイスモールランド』より
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