松坂桃李さんが盟友と絵本を制作!
絵本『まろやかな炎』からひもとく、表現者としての胸の内。

2022.03.11

言葉はある種意味を限定するものだと思いますが、絵は不思議なもので見る人によって姿かたちを変える。

――とても面白いお話です。長田さんが以前「同世代の人たちを強く意識して描いている」というお話をされていて、僕自身も松坂さん・長田さんと同世代なので非常にシンパシーを抱いたのですが、松坂さんご自身は同世代に対する意識はいかがですか?

年が近いというのは、自分と同じ時間を積み重ねてきているということですよね。僕だったら、同じ33年という年月を過ごしてきた違う人が、違うジャンルでこんなにすごいことをやっていたのか!と知ると、嫉妬じゃないけど搔き立てられることが多いです。同世代のスポーツ選手を見ていても、頑張ってやっているな!と奮い立たされますし、「どういう時間の積み重ね方をしたんだろう?」と興味も出てくるんですよね。そうすると、自分にはまだまだ色々な選択肢があるんじゃないかと思えて、勇気づけられます。それが原動力の一つになっているのかもしれないですね。

――ご自身の内的な“波”もそうですが、外的な刺激を受けることでまた火が付くといいますか。

そのうちの一人が、長田真作です。同世代にこんな絵を描ける人がいるんだという尊敬であり、その人自身への好奇心がありますね。

長田さんが『孤狼の血』『孤狼の血 LEVEL2』を鑑賞後、松坂さんに”作品の感想”として送った2枚の大切な絵。

――そういった好奇心は、「他者を演じる」役者道にもリンクしそうですね。

ただ、自分がその人にアンテナが向いたときはガッと行くのですが、そうならないと本当に積極的になれないんです(苦笑)。ムラがある自分が本当に嫌になるというか、満遍なくできればいいのになとは常々感じます。結局、自分との問答なんですよね。自問自答はなかなか尽きません(笑)。

――ただ、それがある種“新鮮さ”に繋がっているのかもしれませんね。同じ仕事を続ければ続けるほど、凝り固まって身動きが取れなくなるところもあると思うんです。ご自身の中で未知の部分があるということは、長く続けていくうえで希望になりうるのかもと感じました。

なるほど、そうかもしれませんね。ありがとうございます。

――最後のご質問となりますが、絵本というメディアについて聞かせてください。絵本というのは非常に息の長いコンテンツで、親世代が読んでいたものが、そのまま子世代に受け継がれたりするものだと思います。松坂さんは「絵本」をどういう存在だと受け止めていますか?

絵本は絵と言葉で構成されていますよね。言葉はある種意味を限定するものだと思いますが、絵は不思議なもので見る人によって姿かたちを変える。答えがあるようでないし、ないようである不思議な魅力を持っていると感じます。そのことを今回、長田真作と一緒に仕事をして改めて認識しました。

今回、僕が『まろやかな炎』を朗読する試みも行いましたが、仮にこの絵本に何も文字が載っていなかったとしても成立すると思うんです。絵にはそれぐらいの力があるし、読み手のその日の気分や1日の過ごし方でも受け取り方が変わったりする。最初に見たときと一週間後に見たとき、ご飯を食べた前後なんかでも変わるでしょうし、その人の心のコンディションで印象が変化するんですよね。

――素晴らしいお話です。説明過多に向かっている時代で、今一度「想像を楽しむ」ことを提案する企画ともいえますね。

デジタル化が進んでいく中で、先ほどお話いただいたように「下の世代に託すことができる」メディアは絵本特有だと僕も思います。僕が幼少期に読んでいた『はらぺこあおむし』はいま読んでも面白いし、読むたびに違う印象を受け取ることができる。噛めば噛むほど味が出るスルメみたいな味わい深さが、絵本にはやっぱりありますよね。

Tori Matsuzaka ● 1988年10月17日生まれ、神奈川県出身。 2009年に特撮ドラマ「侍戦隊シンケンジャー」で俳優デビュー。『僕たちは世界を変えることができない。』(’11年)と 『アントキノイノチ』(’11年)で、第85回キネマ旬報ベスト・テン 新人男優賞、第33回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞し、『孤狼の血』(’18年)で第42回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞、『新聞記者』(’19年)で第43回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。様々なジャンルの話題作に出演。近年の主な出演作は『キセキ ーあの日のソビトー』(’17年)、『不能犯』(’18年)、『娼年』(’18年)、『居眠り磐音』(’19年)、『蜜蜂と遠雷』(’19年)、『あの頃。』(’21年)、『いのちの停車場』(’21年)、『孤狼の血 LEVEL2』(’21年)など。TVドラマの出演作に「あのときキスしておけば」(’21年)、「今ここにある危機とぼくの好感度について」(’21年)など。待機作に、『流浪の月』(5月13日公開)、『耳をすませば』(’22年公開予定)、Netflixシリーズ「離婚しようよ」(’23年配信予定)。


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